窓は心豊かな暮らしを創るポイント-4

「窓」についての4回目。

住まう人の視点で考えた6つのメリットの順を追って考えて行きます。
これまでの「採光」「通風」「眺望」に続いて今回は「拡がり」について考えてみましょう。

住まいづくりでは敷地や資金計画の制約を受けて住宅の床面積を十分に確保できない場合があり狭いというご不満を抱かれるお客様が多いと思います。

住まいづくりでは先ず「絶対的な床面積で広い狭い」と机上で考えるのではなく「広く感じるか、狭く感じるか」という実際の暮らし視点での感覚が重要です。

実際に「コンパクトで機能的、そして拡がり感のある住まい」という住宅が実は暮らしやすく居心地の良い住宅になる場合が多いのです。

「広いか狭いか」から「広く感じるか狭く感じるか」へ

壁面積と窓面積の比率で壁面積が大きすぎると圧迫感が生じ易く狭く感じますが逆に窓(開口部)面積が相対的に大きいと広く感じます。
ただし、窓を大きくとっても目にするのが隣家の壁などでは逆効果で意味がありません。

そこで人間の想像力と推察力を上手く使います。

例えば「橋の一部を切り取った写真や絵画」を見た人は橋全体の姿を自然に想像しており「小さく短い橋」ではなく「大きく長い橋」と脳内で広がり感を組み立てて写真や絵画の「枠の外」の「拡がり」を感じています。

視界を制限して拡がっている場所の一部を見えるように窓を設置すると「拡がり」を感じる空間を生み出すことが可能になります。

地窓は見える範囲に制約があるからこそ拡がり感が伝わる

隣地境界線から外壁までは50cm以上を空けることが法律で定められています。
降雪地域などはもっと大きくスペースを取り、空間を設けることが地域の実情に応じて定められています。

このわずかな隣地境界までの空間を有効に使うと思いもよらない「拡がり」感を生み出すことができます。
床面から数十センチ程度の適切な高さと横に広がった地窓は驚くほどの「拡がり」効果をもたらせてくれます。

見える範囲を制約すると見る人の想像力と推察力で「外の広い空間」として「拡がり」を感じます。「拡がり感創造設計」です。

地窓はプライバシーも確保しながら拡がりを生む

隣家の通常の窓位置から自邸の地窓を見られてもこちらの住宅の床面の一部しか見えないためプライバシーも確保できます。
このように何かと有効な地窓を十分に活用します。
その際に地窓の位置と高さは住居内のどの範囲の床面が見えても支障ないかという視点で検討します。
その上で隣家の窓位置からの隣家の住民の視線の高さで地窓の上端位置を床からどの高さの位置にするのかを検討します。

地窓を「拡がり感」優先に設置するならFIX窓がおすすめ

地窓を設置する場合「拡がり感」の他に「通風」も、と考えて開閉可能なサッシを選択されることがままありますが「拡がり感」はサッシの枠が可能な限り細いタイプで枠の本数が少ないサッシを選ぶとより拡がり感がでますのでFIXタイプをえらぶ方が「拡がり感」の効果が期待できます。

さらに床面に接するサッシの下枠部分は埋め込んで見えるように設置し床からサッシのガラス部分が立ちあがっているように見えるように工夫します。 

「窓」には6つのメリットがありますが複数のメリットを同時にあれもこれもと盛り込もうとすると適材適所のこの場所で必要とする「窓の最も良い機能」を妨げることにもなるので注意しましょう。

「拡がり感を創る窓」の工夫

地窓以外の窓でも様々な工夫で拡がり感を生み出すことは可能です。

南面の大きな窓についてもその窓からの視野全体を見れるようにフルワイドのハイサッシにしてしまうと見たくないもの、外部から見られたくないものまでが丸見えになってしまいます。
そうした部分を視野から外すために視界の上部は軒や庇、水平ブラインド等で、左右方向は建具などで有効な視野領域部分のみを残してあとは視界的に塞ぐなどで対処します。
隠して見えない部分はその窓を見る人の脳に想像させることで視界の中の良い部分を拡張していただくことができます。

また、縦長で幅の狭いスリット窓も視野を制限していますが同じように見えていない部分を想像させる効果も使い方によっては期待できます。

空へつながる窓は拡がり感抜群

断熱位置が通常の天井断熱ではなく屋根断熱の屋根に設置するトップライトからは直接に空という無限の拡がりを得ることができます。

特に北向きの屋根のトップライトは天空光中心のため、まぶしさも抑えられて空へ抜けて行く拡がり感を得ることができます。

また、地窓とは逆の発想でハイサイドライトは設置位置を高く設定しながら窓の下端位置の高さを隣家からの視線を遮る位置に設定します。隣家からはこちらの住宅の天井しか見えないというように。

「拡がり感」を生みだす窓は「コンパクトに広く暮らす住宅を創る」

コンパクトで機能的な住宅は動線も短く家事を合理的にこなせて暮らしやすい家です。
そこへ拡がり感を生み出す窓の工夫で「広く暮らす住宅を創る」ことが出来ます。

窓の工夫の他にも大きな壁や収納扉などに鏡を大きく貼れば空間が2倍に拡張し広さ感を増すことができます。

窓を中心に拡がり感を増す様々な工夫も加味して快適な住空間を創り出しましょう。

まとめ

「窓」が生み出す「拡がり」というメリットは日本の住空間作りにはなくてはならないアイテムです。

「拡がり」感という従来あまり重要視されてこなかった窓の機能ではありますが、現在の住まいづくりでは重要な機能として改めて有効に活用しましょう。

「窓」の拡がり機能を有効に使って床面積の広い狭いではなく広く感じる快適空間を生み出す住まいづくりで「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」を目指しましょう。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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