窓は心豊かな暮らしを創るポイント-5

「窓」についての5回目。

住まう人の視点で考えた6つのメリットの順を追って考えて行きます。
これまでの「採光」「通風」「眺望」「拡がり」に続いて今回は「出入り」について考えてみましょう。

窓からの出入りというのは少し違和感のあるように思えますがリビングからテラスへ出るような大きな窓についての話しです。

日本では伝統的に玄関以外の開口部からの出入りが日常の出入り口

ヨーロッパの住宅は組積造という石造りや石を土と混ぜて塗り込んで作るなど閉鎖的な分厚い壁が主体で造られていますのでその一部に最小限の窓を開け、ドアをつけて出入り口としています。
閉鎖的な住宅の作り方です。
高緯度で気候的にも冬が長く、特に冬の日射は太陽高度が低く、さらに曇天の日が多いための寒さを防ぐことが主眼に置かれました。
また大陸国家のため隣国などからの敵の侵攻から身を守るという視点でも壁面積が大きく窓は最小限に抑えられてきました。

これに対して日本の住宅は「夏を旨とすべし」という考えもありジメジメと暑い梅雨時から夏場の暑さ対策が主眼に置かれていましたから建物は壁が中心ではなく柱のほかはすべて開口部と言っても良いくらい開放的に作られてきました。
そのためどこからでも出入り可能で縁側という半屋内空間から障子を開けて出入りするという習慣が島国で治安の良い日本では長く続きました。
玄関は特別な時(冠婚葬祭など)やご来客時に使う出入り口で家人やご近所さんは縁側や勝手口からという生活が普通でした。
どうやらこうした生活習慣が日本人のDNAの中に刷り込まれているかのように「掃出し窓」という大きな窓の設置が現在でも好まれています。

窓の機能としては6つのメリットの「採光」「通風」「眺望」「拡がり」「出入り」「窓辺」のすべてが賄えそうなところもあり今でも人気があります。

「出入り」機能が大きく変化する中での「窓からの出入り」

人とモノの出入り、特に宅配便の普及でモノの出入りが多くなってきたため玄関機能の充実(エントランスクローゼット、シューズクロークやストックルーム)もあり縁側の大型窓からの出入りプランは消滅しました。

また、犯罪件数も増加し「鍵も掛けずに常時開けっ放し」という生活は一部のローカルエリアを除いて消滅してきました。
その結果、窓からの出入りは家人が室内から外へという動きが起点での出入りに限られてプライベートな部屋などからの出入りに限定されるようになってきました。

つまり暮らしをより楽しむため、充実させることを目的とした「人の出入り」です。

室内空間の延長で屋外空間を楽しむために

戸建住宅の魅力は何と言っても自由にできる敷地があるということです。

休日に家族でテラスのテーブルでとるランチは楽しいものです。
こうした屋内と屋外を自由に行き来できる大きな窓は暮らしを豊かにしてくれます。
こうした休日のランチ以外に大きな窓の出入り機能を何に使うのかと考えた場合に大開口部の窓の開閉方式をどのような方式にすればよいのか検討する必要が出てきます。

引き違いの掃出し窓にとらわれない

引き違いの掃出し窓は一般によく使われていますが、窓に期待する出入りという機能を含めて何を優先するのかを考えて開口部のタイプを選択します。
開口部全部を開放するなら、建物の外側か壁の中へ引き込むタイプのサッシ、もしくは折れ戸タイプで完全ではなくても大開口を得られるタイプのサッシを選択します。

これらの大開口で自由に屋内外を行き来可能なサッシは季節の良い時期には気持ちよく開放的な空間を創ることができます。

ただし、このタイプの大型窓はいずれのタイプも気密性がやや劣るため建物の性能を優先する場合はお勧めできません。

全開できなくても室内外を一体化して人はもちろんテーブルなどの大型のものも出し入れできるようにするには固定のFIX窓と片引タイプ(出し入れするモノのサイズに合わせて)のサッシ、人の出入りだけなら固定のFIX窓と扉タイプのサッシの組み合わせなどがおすすめです。

内外部空間の出入りと一体化

内外部空間を一体化して内部から外を眺める場合も外部に出て外の空間を楽しむにしても屋内外の床の高さを出来るだけ揃え、サッシの下端も出来るだけ床の高さと同じにすることによって内外部空間を一体に感じるようにします。
勿論出入りに使う窓も床面からできれば天井までいっぱいに開くようにすると抜け感もよく出入りがしやすくなります。

いずれにしても大開口部を活用して室内外を行き来できる出入り自由な大型窓を採用すると空間活用度は大きく向上します。
ただし、大型の窓(開口部)だけにコストもかかります。
「生涯心豊かに暮らしていただく」ため50~70年という新しい住まいで過ごす長い時間を考慮してどこまで投資するのかという判断をしてください。

大型窓からの出入りは楽しい時間を生み出します

息子と釣りに行った後にテラスで魚を捌いたり、「成果」を思い出して会話をしながらの後片付け、家族一緒にワイワイと行う日曜大工、自転車の手入れなどを家族が過ごすリビングの目の前の空間で行われる場へ自由に出入りもできるとしたらその時間は楽しい時間になると思います。

日本家屋の縁側と前庭で行われていた家族の交流の令和版です。

まとめ

リビング前のサッシの高さも床から天井まで、左右も最大限までの大きな窓は開放的な暮らしを生み出し室内外を自由に行き来できる出入り可能な窓は「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」のため大きなアイテムです。

そのアイテムを使ってどんなコトをするのかをよく考えて投資しましょう。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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