建築資材高騰下の住まいづくり

昨年夏ごろから建築資材が上がり始めてウッドショックだの原油高だとあれよあれよという間に住宅建築価格が高騰してしまいました。

背景として世界経済がコロナ禍から立ち直り建築資材が世界中の市場で奪い合いになっているということです。
その上ウクライナの問題もあり今後建築資材は上がることはあっても下がることは考えにくい状況です。

住宅建築は家族構成の変化や年齢的な理由もあって「今年は家を建よう」という人生計画と共にありますのでそういう意味でも先延ばしはされない方が良いと思います。

ではどう対処すべきなのか。

昨年秋から計画を始めた新築計画の事例

A様邸はご夫婦共働きでお子様二人の4人家族。

京都市右京区に頑張って140坪の土地を購入されてそこに建築する予定です。

オンラインでの暮らしインタビューを2度ほどさせていただき概ね実現されたい暮らしが共有化で出来てきました。
その間このご夫婦に合ったモデル住宅見へも許可を得て見学させていただき体感体験されたことも踏まえて基本設計の方向性をまとめて行きました。
概ね施工面積で45~47坪くらいの2階建てで進めようということになり「ざっとした過去の経験から見るとおそらく最低でも3500万円、開放感も十分にある上に耐震性も、断熱気密性能も、各種仕上げ部材、設備の仕様も最高グレードにしていくと4500万円くらいはかかくるのではないかという見通し」という私の「助言」は見事に外れてしまいました。

木材価格は1.8倍にとかから始まってあれもこれも高くなり、さらに過剰なまでの高グレード仕様と相まって出てきた業者の見積金額は5950万円(税込)!でのけぞりました。
施工面積は47.8坪ですから坪単価は124.5万円/坪!私の見通しの1.3倍の価格!

さてどうするのか。

30年ぶりのインフレ局面

バブル経済崩壊後デフレに陥って低金利と価格低下という状態が30年間も続いてきた住宅業界にとって久々の値上インフレ局面です。

ほとんどの現役世代の方は初めての経験で戸惑っているというのが現状です。

日本の景気が良くなって資材が上がるなら良いのですが日本の経済状況が良くなる前に海外の先行投資で資材が上がってしまったインフレですから景気が良くなって給与も上がったあとの良いインフレではありません。

さてどうするのか。

資材の購入ルートや施工の合理化

建築資材の価格が高い、安い、の前にそもそも資材が入手できないという状況も発生し始めましたので建築施工を予定している施工店の納材ルートを信頼のおける納材店ルートに変更し、現場での施工を削減する為にこれも以前からお世話になっているパネルメーカーの耐震断熱パネルを採用するなど手だてを講じました。

住宅事業コンサルティングを行っている関係からこういうことが出来ました。

資材供給の心配はなくなりましたがそれでも再見積結果は5550万円(税込)で、まだ目標価格まで約1000万円!のギャップがあります。

さてどうするか。

仕様を落として価格を合わせるのか、合わせられるのか

それじゃと最高ランクの仕様の過剰な部分はそぎ落としにかかりますがそれにはさすがに限度があります。

また、それではA様が望まれていた暮らしが実現できなくなってしまいます。

仕様変更程度では目標のコストダウン金額にとても届かない焼け石に水のような仕様ダウンでは弊害の方が多くお勧めできません。
もちろんぜい肉を落としてダイエットすべきですがやりすぎて健康を害しては元も子もありません。

さてどうするか。

設計コンセプトを変えずにダウンサイジング

A様の実現したいコト、「A様の暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」とは何かをもう一度理解し設計コンセプトをしっかりと再確認します。

その上で「設計コンセプト不変でダウンサイジングに挑戦」が設計者の腕の見せ所です。施工面積47.8坪のプランを39.8坪までダウンサイジングに成功。

A様とこの変更案を検討したところ細かな変更はありましたが当初の主要な要素はほぼ何も諦めることなく実現できました。

83%縮小で5550万円×83%≒4600万円(税込)であと100万円を詰める作業は残りますが概ねストライクゾーンに持ち込めました。

諦めない設計姿勢

「縮小するなら何かを失うのは当たり前」という考えを捨てて「諦めない設計」をする覚悟が必要です。
そういう覚悟を持った設計者に設計を依頼することがこういう「理不尽なインフレ状況」では大切です。
「そんな設計は無理です」と安易に諦める設計者は避けた方が良いでしょう。

また仕様も安易に下げると「住まいづくりは生涯を過ごす場所」ですから後々後悔することになります。

性能仕様と建物耐久性能は落とさない

これから建てる住まいは生涯を過ごす「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まい」です。

半世紀以上の時間軸を考えると耐震、温熱環境、耐久性は落とせません。
仕様も安易に妥協するとみじめさが出てきます。

ダイエットはしても栄養失調にはなりたくありません。

「コンパクトに広く住む」工夫をした家は「居心地が良く暮らしやすい家」

コンパクトにしたからと言って狭いというわけではありません。
視界の抜け感や外部空間の取り込みなどで開放感は十分に手に入れることはできます。

動線は短くなり家事効率は上がります。

コストダウンを目指すだけのダウンサイジングではなくそういう「居心地が良く暮らしやすい家」を同時に目指す設計者と住まいづくりを進める時代だと思います。

まとめ

ここしばらく続きそうな資材高騰ですが上ることはあっても下がる事は考えにくい状況ですから家の建て時は「今でしょ」ということになります。

そうは言っても資金計画にも限度がありますのでその中でどうまとめて行くのかを考えたときに「ダウンサイジングしても設計コンセプトは不変」という決心を持って取り組む「諦めない設計者」との出会いはこの時期の良い住まいづくりを進めるには大切です。

もし近くにそうした設計者が見当たらない場合は当研究所へお問い合わせご相談ください。

また、資材が高くなっただけではなく入手困難にもなってきてもいます。
自動車の半導体不足のようなものです。
車よりはるかに部品点数も多い住宅は納材ルートや躯体パネルなどのしっかりしたルートを持つことも重要です。
これはちょっとプロの世界の話しなのですがそうした住まいづくりの全体を見渡せる力が必要な時代です。

そういう面も含めて当研究所へご相談ください。

info@tebiki-labo.casa

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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