住宅建築は「消費」ではなく人生への「投資」

マイホーム建設は人生を通して最大の買い物だということに異論を唱える人は少ないと思います。
確かに高い買い物であることに間違いはないのですがこれは「買い物」なのでしょうか。

住宅を建てるということはこれから先の人生の大半の時間を過ごす器、つまり「人生の器づくり」です。
住まう人にとっての良い人生の器づくりは消費ではなく「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」のための投資です。

坪単価の「高い、安い」は何を根拠に言っているのでしょう

住宅を建てる時には「坪単価」という「新築時の面積当たりの住宅価格」の「高い、安い」の話が良く出てきます。

住宅が同じ工法で同じ材料を使い同じ性能なら安い方が良いに決まっています。

だから坪単価という言葉が多用されるのだと思いますが、住宅会社/工務店が異なれば全く同じ構造、同じ仕様であるはずがなくそこに「こっちの会社の仕様が良い」「あっちの会社の性能が良い」などという話が噴出して混乱し、「まあ結局どれも似たようなものだから」と坪単価が安い会社を選ぶのか3社合い見積もりなら真ん中を何となく選ぶという何を根拠に話しているのか最終的には分からなくなってしまいます。

「新築した時点」が住まいづくりの規準になりがち

「坪単価」は住宅をモノとして見た際の「新築時の面積当たりの単価」です。
住宅性能表示の耐震性や温熱環境性能も新築時が規準です。
新築時のローンなどの資金負担を軽減することだけを考えると坪単価が安い住宅がコストパフォーマンスが良く見えます。

住宅は新築時点で評価するのではなく「住み始めた時点から生涯を終えるまでの期間」で評価するのが正しいと言えます

経年変化への対応で価格は大きく変わる

住宅がモノとして劣化する部分はどこかと考えるなら真っ先に屋根材と外壁材という外装材が挙げられます。

通常のサイディングでもメンテナンスを定期的に行えば長持ちはしますが新築時の坪単価にこのコストは含まれていません。
高温で焼成した屋根材を使えば経年劣化は考えなくても良いくらい高い耐久性が確保できます。
この材料を採用した住宅の坪単価は高くなります。

耐震性能や温熱環境性能も経年劣化する

地震活動期にある日本列島では「数百年に一度という地震が頻発」することも珍しくなくなっています。
1回の地震に対しての強さだけではなく繰り返しの地震への対策を何処までしているのか。
地震ごとに建物の隙間が拡がって気密性の落ち方の差が工法ごとに様々です。

断熱材の特性も冬の断熱には優れていても夏の日射には比較的弱いというモノもあります。

どうも住宅をモノとして捉えての新築時の坪単価での評価は片手落ちのようです。

経年劣化の費用を考えるとどうなるのか

新築後半世紀以上という住い続ける期間を考慮して「坪単価」に対して「年単価」で表現すると経年変化に対応した工夫をした住宅と10年ごとにメンテナンス工事をする住宅で50~70年間という期間で新築時とメンテナンス費用の総工事費を割って年単価を算出してもらってください。
どういう結果が出るか興味深いと思います。

また、超低金利時代の現在は住宅ローンを組むなら減税もあり実質金利ゼロです。
メンテナンスを必要とする家なら建築資材と人件費(施工費)は年を追うごとに価格は上昇し現時点の価格よりかなり高騰するはずです。

坪単価の高い安いという論議も半世紀以上という時間を考慮すると話が変わってきそうです。

住宅という「モノ」を建てて実際に手に入れたのは「暮らし」です

30才で家を建て90才まで過ごすとしたら60年間の暮らしを手に入れたということです。
住宅に採用するモノの優劣だけではなく「最も大切な視点は新しい住いで実現したいコト」です。
60年間の内、約70%の時間を自宅で過ごすということになります。
この時間を如何にご自身とご家族が「心豊かに過ごすことができるようにする」のかが最大ポイントです。

今後益々暮らし方は多様化します。
従来のように「プランは4LDKでどれも同じ」という設計ではご納得ができないはず。
「住宅はモノ」ですが「どのような住宅というモノ」を作るのかという「お客様の暮らしを理解し新しい住いで実現したいコトを共有化」する設計プロセスが最重要です。

「住宅は衣食住のハコ」ではなく「ご自身とご家族の心豊かな暮しを生み出す暮らしの器」です。
良い暮らしを手に入れるのが住まいづくりです。

初期投資を最大限に拡大する方が結局得策

ファイナンシャルプランナーや銀行に相談しご夫婦が最大調達できる資金はいくらなのかをまず把握しましょう。
Max資金計画です。
この資金枠内で実現したい暮らしをどう組み立てるのかを考えましょう。

いきなりプランを作るのではなくご自身の価値観や考え方を整理してどのような暮らしを組み立てるのかという「暮らしインタビュー設計」を受けることが最も適切な考え方だと思います。

まとめ

半世紀以上に及ぶこれから暮らしの器である新しいお住まいを「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まい」とするためには消費ではなく人生への投資と考えて目先の安さや売り言葉に惑わされないことです。

常に住まいづくりの中心に置くのはご自身とご家族の暮らしです。
時間軸の物差しは50~70年というロングスパンです。

「暮らしインタビュー設計」という暮らし視点の設計を実行している住宅会社/工務店を選ぶようにしましょう。
もちろん経年変化も考えた「モノとしてもしっかりした住宅」を提供できることは言うまでもありません。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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