価格上昇局面での住まいづくりの考え方

昨年秋から外的要因で建築資材の高騰が始まり、この春は第2段階に入ったという状況ですが、この先の見通しはどうなるかということは全くわかりません。

少なくとも現在住まいづくりを検討されている方は、少しぐらい建築時期を先送りしても状況は改善されないどころか、さらに建築資材は高騰すると考えた方が良いでしょう。

そういう意味では建築時期は「今でしょ」ということになります。
とは言ってもこのような住宅価格上昇局面の住まいづくりの考え方を整理してみましょう。

建築資金の考え方

住宅は今後半生記以上に亘って住まい続けることになる「耐久消費財」と位置付けられています。
一面正しくはありますが「お客様ご自身の人生の70%程度の時間を過ごす暮らしの器です」から住宅建築費は「費用」ではなく「心豊かな人生を送るための投資」という種類のお金の使い方です。

一般に子供の教育費、老後の蓄えなど様々な収入の振分けの中で住宅投資をどの程度に設定すればよいのかという悩みが頭をもたげます。

世帯年収の7倍程度(金融機関にもよりますし、様々なお客様の要件による)は借り入れ可能ですから超低金利と減税策を組み合わせて考えれば実質利息ゼロですから目いっぱいの借り入れを考えた方が得策だと言えます。

特に今後の資材高騰が落ち着くことはあっても下がることは考えにくい環境下では思い切った初期投資が得策だと言えます。

「『Max資金計画』で進める住まいづくり」という人生への投資

住宅投資に回す予算は借入限度額(もしくは毎月の返済可能額から見た場合のどちらか低い方の金額)+自己資金+親などからの資金援助の合計が「建築予算(土地購入の場合はこれも含んで)」=「Max資金計画」です。

「建築資金的な限度」というMax資金計画を把握してその予算枠内で住まいのどこに投資するのかと考えることが良い住まいづくりを実現する考え方です。

5000万円が可能な資金計画を4000万円に下げて予算を節約し、プランも圧縮して、いくつかの部屋も諦め、設備機能も下げてその後の50~70年間の暮らしを我慢し続けるよりも、Max資金計画で5000万円を用意することが可能なら「今後の半世紀以上に亘る心豊かな暮らし」へ投資すべきだと思います。

先送り可能な費用もあります

外構については防犯上や施工上、どうしても先行して実施すべきものは予算として見ておきますが、それ以外の植栽や外構は先送り可能です。

ウッドデッキなどもDIYも含めて先送りすりこともできます。
収納についても量的に竣工時に余裕のある場合は一部の棚板などは、あとから設置するなど先送り可能です。
家具カーテンなどの付帯する費用も「どうしても必要なもの」だけに絞ることは可能です。

初期投資しなければ、あとからでは追加対応が難しいものは、主として躯体と仕上げ、建築として組み込む設備機器です。
この部分は初期投資すべきでしょう。

「実現したいコト」に「気づき」暮らしの重心を見いだします

各社のモデル住宅を観て回る際には必ず「自分たちが住むとして」という視点をしっかりと持って見学しましょう。
「住むとして」という視点は出来るだけ具体化して「体感体験」することです。

例えばキッチン。
キッチンの天板の材質や耐熱性、タッチレスの水栓カランなどの機能説明は設備機器のショールームで後日理解することができます。
モデル住宅では、例えばご夫婦お二人で休日はご一緒に料理を楽しみながら作りたいなという獏とした思いがあるとするなら、そのキッチンで実際に「一緒に作りたい具体的な料理」を創る手順に則って二人で出来る限り具体的に調理を行ってみることです。
冷蔵庫から野菜を出してなど可能な限りリアルにやってみましょう。
ご主人はサラダとスープを作って、メイン料理は奥様がというように出来るだけ料理を作る動作をお二人同時に行い、二人が使いやすいのか、さらにはそこでワインを飲みながらなどの楽しむ要素を入れて考えたらもっとこうしたいというように「自身が暮らす視点で心豊かなキッチン」を考えてみることです。

興味関心のある部屋で同じように「自身が暮らす視点」で体感体験をすることによって「ときめきの暮らしに気づく」、「わくわくしている」という体感体験が出来た部分は実現したいところでしょう。
ご夫婦、ご家族の「心豊かな暮らし」を見つけ出してください。

「心豊かな暮らし」を実現するために

営業の「一通りのモデル住宅案内」は一般解として聞いているとどれもこれも良い様に聞こえてきます。

「全部採用したら良い家になりそう」ですが、実はこれが最悪の住まいづくりにつながってしまう落とし穴です。
「一般的に良い」というのと「自分たちにとって良い」は大きく異なります。
「自分たちが暮らすとして具体的に体感体験」してみてご自身で採用の可否を決定してください。

その時に「Max資金計画」という予算枠の中で何を優先すべきか「暮らしの重心」を何にするのかを考え、営業とも相談しながら「自分たちの心豊かな暮らし」を実現しましょう。
あれもこれもは貴重な建築資金の無駄遣いで、建築計画内での実現が難しくなり破綻します。
特に建築資材が高騰している現状では十分に注意しましょう。

「家族全員に関わる心豊かな暮らし」が最優先される場合が多い

リビングから繋がるテラスで休日の昼食を家族でというのは「家族全員に関わる心豊かな暮らし」ですから優先されることが多いのですが、「どうしてもこういう趣味部屋が欲しい」というご主人の一人だけの「こだわり」を一概に軽視するというわけにもいかず、家族内キーマンの発言であるとか様々な要素が絡みますので家族で、特にご夫婦で様々な角度で検討して優先順位を設定してください。

その際に「時間という軸」は重要です。
「子供たちが巣立つまでの時間は貴重」と考えるのか「あと15年のためにここまで投資するのか」というように判断も別れると思いますが時間軸は一つの判断材料です。

まとめ

住宅価格上昇局面での住まいづくりは従来の予算では「ありきたりなハコの住宅を作る」ことになってしまいがちで、自分たちの暮らしに合わず「心豊かな暮らし」から遠くなってしまいます。

先ずMax資金計画を立ててここまで建築資金として投入可能という資金の枠組みを作ります。
とは言ってもあれもこれも採用したいでは直ぐに予算オーバーで「建築計画自体が破綻」してしまいます。

お客様が自ら体感体験して「実現したいコト」を見いだして優先順位をつけて「暮らしの重心」をしっかりと持って、Max資金計画内で組み立てるように営業を巻き込みながら住まいづくりの中味を素早くまとめましょう。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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