住宅にかかるお金のお話➀

住宅というのは、ほとんどの方が一生で1回買うか買わないかの1番大きな買い物だと言えるでしょう。
だからこそ、分からないことが分からないくらい何も分からないという方が多いのではないでしょうか。

普段買い慣れている日用品や衣料品はこの品質ならこの金額は妥当だとか高いとか、ある程度の物の価値が分かるけど、2,000万円の住宅が高いのか安いのか妥当なのか、4,000万円の住宅が高いのか安いのか妥当なのか、判断が難しいと思います。

また、金額が大きいだけに、個人の収入の差が大きく影響する商品でもあり、身近な人に相談をしても必ずしも正しい回答でない可能性も高くなります。

それは、商品を購入する際に、人は自然とその商品の価値にたいする金額が妥当なのかどうかを判断しているからです。

簡単な例え話をすると、100回使えるボールペンが100円で、1000回使えるボールペンが500円だった時に、購入する人の使用頻度で、今使ったら必要ないという場合は、100円のボールペンに手を出すでしょう。

しかし、繰り返し使う方にとっては、費用対効果が高いのは500円のボールペンということになります。

住宅は、更に複雑です。

食事、睡眠、入浴、家事、育児に対する価値観、価値観に伴う収納量の違いなどなど、家族にとっての費用対効果が異なる唯一の商品でもあるかもしれません。

今回は、安い高いという基準だけでなく、個人が感じる価値も含めたお金の話をしていきましょう。

得られる価値とそれに伴う金額

住宅は大きく、賃貸と持家に分けられます。
賃貸は、アパートやマンション、戸建住宅に分けられます。
持家は、分譲マンションや戸建住宅に分けられます。
更に、戸建住宅は、中古と新築に分けられます。

それぞれのメリットデメリット、総支払額を考えてみましょう。

賃貸(アパート・マンション・戸建)

まずは、賃貸のメリットとデメリットを考えてみましょう。

■賃貸のメリット
住宅ローンという借金を抱える大きな決断をすることなく、住んでみて気に入らなかったり、生活スタイルの変化で気軽に住む場所を変えることが出来るという手軽さです。

■賃貸のデメリット
不満があっても手を加えることも出来ない上に、いくら家賃を払い続けても自分の物にはならずただただ払い続けて消えていく費用ということです。
また、バイクや釣りなどの趣味がある方、大きなキッチンでお料理を楽しみたい方、子育て世代でお子様を元気に走り回らせたい方など、賃貸では中々叶えることが難しいケースが多いでしょう。

次に実際、家賃を生涯払い続けると総額支出はいくらになるのか計算してみましょう。

《計算条件》
 年齢30歳 ※90歳までの60年間で計算 

➀家賃5万円の場合
 5万円×12ヶ月×60年間=総額3,600万円

②家賃7万円の場合
 7万円×12ヶ月×60年間=総額5,040万円

③家賃10万円の場合
 10万円×12ヶ月×60年間=総額7,200万円

更に賃貸の場合は、入居時の敷金礼金や2年ごとに更新料が発生し、数十万円が上乗せされると思います。

求める暮らしが叶えにくいという不満を抱えながら資産にはならない費用を支払い続けるには、少し大きすぎる支出額ではないでしょうか。

持家(分譲マンション)

次に、持家(分譲マンション)のメリットとデメリットを考えてみましょう。

■持家(分譲マンション)のメリット
マンションは、駅近などの生活利便性の高い場所に存在するケースが多く、通勤や通学がしやすいというメリットがあります。
また、最悪家を手放さないといけなくなった場合でも、マンション自体は劣化し続けるため価値は下がり続けますが場所としての価値は高い可能性がありますので、ある一定の金額で売却することも可能です。
※購入エリアによって異なります。
また、賃貸マンションとは異なり、共有部分以外の室内は手を加える事が可能な為、多少の間取り変更や内装の変更は可能です。

■持家(分譲マンション)のデメリット
多少の間取り変更や内装の変更は可能とは言っても、共有部分は手を加えることは出来ないため、ある程度の規制がかかりますし、賃貸のデメリットでお伝えしたように、バイクや釣りなどの趣味がある方や子育て世代でお子様を元気に走り回らせたい方などは、分譲マンションでも叶えることが難しいケースが多いです。
また、マンションは、住宅ローンや固定資産税とは別に、管理費や修繕積立金などの費用が発生するため、月々約2~3万円は資産にはならない費用を支払い続けるということになります。
次に実際、住宅ローンと管理費/修繕積立金を生涯払い続けると総額支出はいくらになるのか計算してみましょう。

《計算条件》
 年齢30歳 ※35年の住宅ローン。ボーナス払い無し。金利1%で計算。

➀3,000万円のマンションの場合
 約8万5千円×12ヶ月×35年間
 管理費/修繕積立金2.5万円×12ヵ月×60年=1,800万円
 総額4,800万円

②5,000万円のマンションの場合
 約14万円×12ヶ月×35年間
 管理費/修繕積立金2.5万円×12ヵ月×60年=1,800万円
 総額6,800万円

③7,000万円のマンションの場合
 約20万円×12ヶ月×35年間
 管理費/修繕積立金2.5万円×12ヵ月×60年=1,800万円
 総額8,800万円

更に分譲マンションの場合は、戸建住宅同様、不動産取得税や固定資産税などが上乗せされます。
通勤通学の時間を10分短縮するために生活利便性を優先させ分譲マンションを選択し、不満を抱えることにならないのか、家の中での暮らし方を60年間という時間軸を持って判断しましょう。

持家(戸建)

最後に、持家(戸建)のメリットとデメリットを考えてみましょう。

■持家(戸建)のメリット
面積や部屋数、間取りや外構、全てにおいてご自身の好きなようにすることが可能です。

■持家(戸建)のデメリット
生活利便性の高いエリアからは少し外れた郊外での建築となる可能性が高く、通勤通学で電車などを利用する方の場合は、最寄り駅までバスや車を利用し、数十分通勤通学時間が長くなる可能性があります。
また、分譲マンションのように管理費や修繕積立金がかかることはありませんが、修繕するための費用を貯蓄しておくなど全てご自身で管理する必要があります。
全くのメンテフリー住宅というのは、実際あり得ませんので、特に外回り(屋根や外壁など)や住宅設備(お風呂やトイレ、キッチンなど)の修繕費がかかることも理解しておきましょう。

※参考記事「メンテナンスフリー住宅は存在しないってホント?https://housing-labo.casa/category/financing-plan/post-506/

次に実際、住宅ローンを生涯払い続けると総額支出はいくらになるのか計算してみましょう。

《計算条件》
 年齢30歳 ※35年の住宅ローン。ボーナス払い無し。金利1%で計算。

➀3,000万円の戸建の場合(土地費用込み)
 約8万5千円×12ヶ月×35年間=総額3,000万円

②5,000万円の戸建の場合(土地費用込み)
 約14万円×12ヶ月×35年間=総額5,000万円

③7,000万円の戸建の場合(土地費用込み)
 約20万円×12ヶ月×35年間=総額7,000万円

更に戸建の場合は、不動産取得税や固定資産税、将来的に修繕する費用などが上乗せされます。

しかし、住宅というハコにご家族の暮らしを合わせる生活ではなく、ご家族の暮らしに住宅というハコをつくることが出来、60年間という年月を満足して暮らせる時の費用対効果はかなり高いと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。

様々な住宅にかかる費用の情報が飛び交っている現代ですが、何を優先し何に費用をかけるのかはそれぞれが判断する必要があります。

住宅の費用は、単純に目先の金額が安い高いだけで判断することも出来ませんし、その住宅でどのような時間を過ごしたいのかという、それぞれの価値観によって異なります。
ある意味、得られるモノが全く異なりますので、単純に金額で比較出来るようなことでもないとも思います。

総合的な視点をもった選択を行いましょう。

実際ご自身では判断出来兼ねる場合は、是非当研究所にご相談ください。
info@housing-labo.casa

次回は、持家(戸建)の中でも、最近はやっている中古住宅や規格住宅、少し高いイメージのある注文住宅に対するお金の話をしていきたいと思います。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香

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