良いキッチンをつくるためのポイント4選

住宅を決める時、かなり重要なウェイトを握っているのがキッチンではないでしょうか。

各メーカーから様々工夫されたお洒落で機能的なキッチンが商品化されています。

最近では、お洒落であることやリビングにいるお子様の様子を見ながら夕食の準備が出来るといった理由から、対面キッチンやアイランドキッチンが人気です。

しかし、デザイン性や機能性だけでなく、ご自身がリアルに料理をするとして、実際に住宅展示場などのキッチンでイメージしながら体感体験することが大切です。

キッチン

元々、台所(キッチン)は料理を作るための労働の場所でした。
今も料理を作るということに変わりはありませんが、「夫婦や友人と楽しく料理を作ったり」、「お子様とスイーツづくりをしたり」と、料理をしながらコミュニケーションを取る場所に変わってきています。
し時間をかけたキッチンの使い方」など、ご自身のキッチンの使い方を見つめ直し、更に今後の家族構成の変化によって生まれる新たなキッチンの使い方を想像しながら、どうすればご自身にフィットしたキッチンになるのか考えてみましょう。

良いキッチンをつくるためのポイント4選

良いキッチンをつくるためには、デザインと機能性の前に、➀調理 ②収納 ③動線 ④コミュニケーションの4つのポイントでご自身にフィットするキッチンを見つけることが大切です。

➀調理

まずご自身の平日よく作る献立や少し時間をかけた休日のメニューなど、具体的な料理名と品数で、実際に料理を作るとして、作業スペースにはどれだけの食材を広げるのか、調理器具(まな板やボール、バット等)はどれほど並べたいのかイメージします。
更に、「平日1人で料理をする時」や「休日複数人で料理する時」、「将来お子様がお手伝いをしてくれるようになった時」や「お孫さんが遊びに来て一緒にお料理を楽しむ時」など、どのようなシチュエーションがあるのかを想定します。
「対面キッチンのように1面に人が立てたら良いのか」、「ペニシュラキッチンのように2面に人が立てたら良いのか」、「アイランドキッチンのように360°人が立てた方が良いのか」など、デザインや機能性ではなく「キッチンでの暮らし」を中心に選択することが大切です。
また、広いキッチンになると大きな冷蔵庫に買い替えたり冷凍庫を買ったりして、休日の時間がある時に作り置きを始めたという方も増えています。そう言った場合にどれほど作業スペースが必要になるのか、将来も見据えて考えましょう。

■対面キッチン

■アイランドキッチン

「主人は手伝ってくれないから私1人が料理しやすかったら良い」とおっしゃられる奥様もよく見受けられますが、実は今の賃貸のキッチンが狭いため、手伝いに行っても邪魔をするだけになってしまうという理由で手伝えなかったが新しく広いキッチンになったら手伝うようになったというご主人様も多くいらっしゃいます。
また、「キッチンでの暮らし」より手元を隠すことを優先して対面キッチンにされる方も多く見受けられますが、誰に見られたくないのか、何が見られたくないのかを考えてみてください。
来客の種類が両親や友人という親しい仲な方の場合、手元を20cm上げたところでキッチンの前に立たれたら全て丸見えになります。
洗い物が溜まっているのが見られたくないという方は、次は食器洗い乾燥機をつける方が多く、シンクに洗い物が溜まる事も無くなります。
固定概念は捨てて、新しいキッチンでどのように料理を楽しむのかを考えましょう。

②収納

収納は、ⅰ.調理器具/調理家電 ⅱ.食器 ⅲ.食材の3種類に分けて考えます。

ⅰ.調理器具/調理家電

「今の賃貸では収納が不足しており買えていないという場合」や「1人暮らしの時に使っていた物をそのまま使っているという場合」、一度生活雑貨屋さんや家電屋さんに行ってどのような調理器具や調理家電をどれだけ買うのか事前に考えるのも良いかもしれません。
家族が増えたり来客が増えると調理器具や調理家電のサイズが大きくなったり量が増える事も考慮しましょう。

ⅱ.食器

現在は夫婦2人という場合でも、将来お子様が産まれたり、更にそのお子様が高校生になったり、両親や友人を招いて食事をすることになったらという目線で、必要な食器の量を想定しましょう。

ⅲ.食材

自宅での食事は、大体大人1人1食500g摂取すると言われています。
4人家族で1週間に1回しか買い物に行かないという家族の場合、500g×(2~3食)×4人×7日=28~42kgの食材が収納出来なければいけません。
更には、お子様のお菓子や災害時の緊急保存食、お米やお水等も考え、冷蔵庫/冷凍庫の他に食品庫(パントリー)がどれほどあれば良いのか考えておきましょう。

③動線

動線は、ⅰ.トライアングル動線(冷蔵庫-シンク-コンロ) ⅱ.配膳動線 の2種類で考えます。

ⅰ. トライアングル動線(冷蔵庫-シンク-コンロ)

冷蔵庫から食材を出して、シンクで洗って、作業スペースで切って、コンロで炒めるという一連の動線がご自身に合っている配置や距離感にすると使いやすくなります。

ⅱ. 配膳動線

キッチンとダイニングの動線計画は、平日1人で料理して配膳するという奥様にとってはキッチンの横にダイニングという並びがスムーズに作業できおすすめです。
しかし、家族に手伝ってもらえる方や配膳はお手伝いする習慣にさせたいという方、おもてなし感を高めたいという方は、キッチンの正面がダイニングという配置が合っているのかもしれません。
ご自身の暮らしに置き換えて考えてみましょう。

④コミュニケーション

最後は、キッチンでのコミュニケーションについてです。
家族は一番身近な存在であるということから、話す内容によっては、いざ面と向かって話すことが気まずく感じてしまうことも、時にはあるかもしれません。そういった際に「ながら話」というのは、少し話しにくいことも話やすくしてくれます。
料理をしながら、お手伝いをしながら、洗い物をしながら、「キッチンとキッチン」や「キッチンとダイニンング」「キッチンとリビング」での会話距離を考えた配置計画にすると、コミュニケーションの取れる住まいとなりますので、是非採用してみてください。

■会話距離(個体距離1.2M以内~社会距離3.6M以内) 

3.6M以内が会話のしやすい距離と言われています。

■会話量(正面、平行、90°)

正面に座った時の会話量を1とすると、平行(横並び)に座った時の会話量は2倍、90°の位置に座った時の会話量は4倍になると言われています。

まとめ

キッチンはたくさんの事を考えないといけませんが、家族の健康を支える食事作りにおいて大切な場所であると同時に、家族のコミュニケーションが行われる家の中でもかなり重要な場所です。
少なくとも、朝と夜料理をする奥様は1年で約730回、60年間で43,800回も過ごすことになります。
1日1時間程度すごす方は43,800時間、料理が好きで1日2時間程度過ごしている方は87,600時間にも及ぶので、4つのポイントに分けて計画する事が大切です。
デザインや機能性だけで判断するのではなく、ご家族の現在と未来の暮らしを可能な限りイメージし、後悔ないキッチン計画を行いましょう。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香

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