他社をけなさず褒める住宅営業がお客様から信頼される
2022/03/04

住宅営業において、時々お客様の前で他社の悪口を平然と言う営業担当者がいます。
時には聞くに堪えない根拠がない誹謗中傷を述べている営業担当者も見かけます。
お客様はその話をどのように聴いておられるのかをお客様の視点で考えてみると、「お客様がネットで調べて気に入ったから見に行ってみた会社」のことを「けなす」発言は「お客様ご自身をけなす」ことだと受け取られても致し方ありません。
競合他社をけなすことは「営業のストレス解消」にはなるかもしれませんが営業的には逆効果です。
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競合他社へのリスペクトは営業の常識

昨年限りでF-1から撤退したホンダが、最終戦で逆転勝ちを収めてF-1ドライバーズワールドチャンピオンシップを獲得しましたが、その最終戦で、1964年のF-1初参戦から2021年までの競合メーカー各社に対して、「ありがとうフェラーリ」「ありがとうロータス」・・・・・最後に「ありがとうトヨタ」と感謝の言葉を東京青山の本社に掲示していました。
強い競合各社がそこにいてくれたから「良い車を創れた」というプロフェッショナルとしての感謝の言葉です。
それに対して「おめでとうホンダ」とトヨタなど多くのメーカーがホンダへエールを送り返していました。
互いにしのぎを削って切磋琢磨しているうちに「相手を認め尊敬する」プロ同士のリスペクトがあったようです。
これに比べて住宅業界では他社のある一面を捉えて攻撃するようなことをしているようでは、その会社と営業は信用される存在になどなり得ません。
競合他社へのリスペクトはプロの住宅営業の常識です。
他社の住宅を理解して研究する

競合他社の住宅商品を理解して研究するのは住宅営業の基本です。
住宅会社によっては他社との比較検討を会社として行っているところもありますが、多くは商品開発部門が用意した資料ですから、「我田引水」「自己満足型」「相手を矮小評価」する傾向が多くの場合で見受けられます。
営業がお客様視点で自ら調べて研究し正しい評価をすることが必要です。
その際に「良い点、長所を探す視点」で研究することが重要です。
自社にはない良い点が浮かび上がってきます。
この長所と競合した際の対応策をどうするのかという視点こそが、お客様に自社住宅商品を選んでいただくポイントを見つけ出すことに繋がります。
●他社の長所を気を入っているお客様への対応
お客様が「競合他社の住宅を気に入っている」という情報を掴むと、急に「競合他社対策」という「お客様への視線を競合他社へ切り替え」てしまう住宅営業担当者が多く、社内の営業会議でも「競合対策」という言葉は出ても「お客様の関心事はそこにあったのか」という「お客様を中心に置く視点」が完全に吹き飛んでしまっています。
「お客様の暮らしを中心に考える」という本来の住宅営業の視点ではなく、「自社を中心に置いて競合他社をたたく」考え方に移行してしまいがちです。
むしろ競合他社を褒めることです。
褒めることでお客様は安心して競合他社のどこが良いのか、気に入ったのかを教えてくださり、具体的にその内容がよくわかります。
原因さえつかめれば対策を打つことは可能です。
●競合はお客様の関心分野を把握する絶好のチャンス
お客様が競合他社のある部分を評価し気に入っているということは、「そこにお客様の関心分野がある」というヒントをお客様が教えてくださっているということです。
具体的にどこが気に入っているのか共感しながら共有化していきます。
他社研究での他社の利点と自社の長所を冷静に勘案して、「こういう組み立ててはどうだろうか」というお客様視点で、お客様のためになる具体策を提示しモデル住宅等で体感体験していただきます。
他社競合をお客様視点で捉えなおすと大きく受注へ前進します。
競合他社を褒めるとお客様は安心していろいろ話をされる

競合他社を褒めるための前提条件は前述の通り、「他社住宅の研究は相手の長所視点」でよく理解していることです。
この視点があれば、余裕をもってお客様へ競合他社を褒めることができます。
それを見ているお客様は「褒めるポイントも私が良いと思った点と一致しているし、よほどこの営業は自社の商品に自信があるのだろう」と住宅営業担当者の話をよく聴いてくださるようになります。
競合他社の長所で、お客様がご自身のお住まいで何を実現したいのかが見えた部分も共有化し、そこを別角度で満足していただく方策を考えることも可能になります。
受注に大きく近づくのが正しい競合対策です。
●「他社をけなさず」「自社商品の自慢話」「営業の自慢話」をしない
「他社をけなさない」のはプロの営業の基本的マナーでもあります。
それと同じレベルで「どうだ、凄いだろう」的な自社の自慢話や「俺はこういうことも知っている」的な営業自身の自慢話は一切ご法度です。
ベテランほど陥りやすい自己陶酔型営業です。
本人の自覚なくこうした「けなし話と自慢話」に陥ってしまうパターンがありますので、周囲の同僚が注意してあげてください。
これも自身を中心に置いて競合他社攻撃という「おーい、お客様は何処に置いてきたの?」という負けパターン営業です。
●完全無欠の住宅商品は存在しない
自社住宅商品についても、研究をすればするほど良い面と問題箇所、不十分箇所が見えてきます。
だからと言って競合他社に負けるというものでもありません。
完全無欠な住宅商品はありません。
自社商品の良い面を活かして「お客様の暮らしを中心に考える」という視点が、相対的に勝って受注できるというのが現実です。
まとめ
競合時に他社を攻撃する意味がまったくないということをご理解いただけたと思います。
まず、競合する他社の長所を理解して受容れ、リスペクトする。
自社についても冷静に長所短所を理解してお客様と向き合うこと。
そうした姿勢を貫き通し継続することでお客様からも競合他社からもリスペクトされる住宅会社、住宅営業になることができます。
《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士