居心地の良い自分の空間づくりとは

せっかくの住まいづくりですから各自が居心地の良い住いにしたいものです。
この居心地が良いというものに特に自分の空間となると一般解はあるようでありません。

沖縄の住宅で海に面して開放的に作られた住宅の書斎が「気持ちがいい」という方もいますが「この部屋の潮風でベタベタする感じがどうも」という方もいらっしゃいます。

居心地が良いというのは個人の主観によるところがかなりあるようです。

あなたにとって居心地の良い自分の空間づくりを考えてみましょう。

自分の居場所を自分らしく設える

「ここが自分の居場所」というのは「何処ですか?」は意外と難しい質問でしょ?

「そうなんです」意識しないと住宅内で自分の居場所は「何処なのだろう」ということになってしまいます。

昭和の猛烈ビジネスマンが棲息していた時代は「会社に住んで家に通っている」と豪語する方もいました。
つまりその方にとっての居場所は会社、もっと正確に言うと会社の自分の机と椅子ということになってしまします。
この机と椅子いうのは意外と「居場所のようです」。

小学校に入学すると学習机を買ってもらったピカピカの一年生は嬉しそうです。
適度な自分のテリトリー感と落着き感もあり、さらに様々な仕掛けがあって機能性にも優れています。
「自分の居場所を手に入れた」満足感が生まれるようです。

もう会社に住んだりしない時代ですからご主人が自宅に書斎を求めるのはあながち在宅オンライン勤務のためだけではなく「自分の居場所」を求めているのかもしれません。
こう考えると自分の居場所を先ず決めてその場所の「手の届く範囲を中心に目の届く範囲までを自分好みに設える」ことが居心地の良い自分の空間づくりと考えて良さそうです。

あなたはオープン好みなのかクローズド好みなのか

自分の居場所としてリビングの一角のようなオープンな空間を好まれるのか、プライバシーが確保されるクローズドな空間を好まれるのかどちらでしょうか。

オープン空間に自身の居場所を設ける場合は当然家族のパブリックスペースですからご自身の好みばかりを主張するわけには行きません。
手の届く範囲に限定して「自分好みの居場所」を設置することになります。
そこで行うことも家族の了承範囲内にとどまりますから音が出る機器などはヘッドフォンなどの制約を受ける環境です。

一方で「家族と同じ空間にいる」という「つながり感」を得ることはできます。
同じ空間にいながら別のコトをしている家族の暮らし方が住宅全体のコンセプトなら問題なさそうな考え方です。
家族に対してオープンなコトしかできないという制限も受けます。
また、顔を上げたときに何が目に入ってくるのかというのが「目の届く範囲の設え」としては最大のポイントです。
LDK空間のどの場所に自分の居場所を設定するのかが重要です。

これとは逆にご自身だけのプライベートなクローズドな空間は全て自分の趣向の空間が実現出来ます。

完全クローズドなプライベート空間とセミクローズドな空間

ドアを閉めれば完全クローズドなプライベート空間は自由気ままで好き勝手な設えが可能です。
大音響を発生する場合は防音と遮音、音響効果を考慮する必要はありますがその他は自由に別世界を造ることが可能です。
一方で家族から孤立しやすく疎外感を感じる原因にもなりかねないという問題は内包しています。

それを緩和するのがドア閉めないか、ドア自体を取りつけずに他の空間とつながっているというセミクローズド空間があります。
一般にリビングなどの家族が居る空間に繋がった部屋として設定します。
完全にプライバシーは確保されませんがそれなりに集中もできる空間です。

自分の居場所の何にこだわるのか

空間は床壁天井の6面体でその空間のベーシックなインテリアを構成し、室内ドア、窓などの開口部のサイズとサッシの材質、形状などが大きくインテリアに影響します。
それに照明、カーテン、ブラインドなどの採光と視線の制御部材が加わります。

こうした6面体の空間はそれ自体でインテリアを構成するのか、あるいは持ち込む机、椅子、テーブル、などの家具で主張していくのか好みの空間をまとめる方向性が重要です。

オーケストラのコンダクターのようにご自身の実現したい空間を共有化してくれる設計者やインテリアコーディネーターとよく話し合いたいところです。
手の届く範囲、特にご自身お体が直接触れる部分は大いにこだわってモノを選定してください。

椅子はこだわりのデザインで選びたいものですがどれだけの時間腰掛けるのかや、その時の姿勢などのことも考慮して座り心地の良い椅子を選定しましょう。
椅子の掛け心地は居心地の良い空間を支配します。
もちろん椅子のデザインも重要ですが。

何をする場所にしましょうか

「何にもしない。ボーッとする場所」という曖昧空間から「油絵を本格的にしたい場所まで」用途をはっきりさせて機能がはっきりしている空間に応じて換気や冷暖房設備をどう設定するかもご自身の居心地の良い空間づくりには重要です。

自分の空間づくりの目的を明確にして計画に入りましょう。

住宅全体としての住み心地と居心地の良い自分の空間は異なる場合があります。

油絵の具のにおいが好きな人は家族の中ではあなただけということはよくありますので独立した換気系統が必要になったりします。
消臭材料で壁などを仕上げる必要も出てきます。
個室だからと言っても他の空間に影響を与える要素がある場合は対策を立てた上で家族の了解を得るようにしましょう。

家族は個人の集合体

家族全員が共用するスペースのファミリーアイデンティティ(FID)と各人の居場所とそこを居心地の良い自分の空間にするという個人のパーソナルアイデンティティ(PID)の両立は難しい面もありますが家族として個人として「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」を目指したいものです。

従来はFIDのみで考えてきた住まいづくりですがこれからはFIDとPIDを両立させるような住まいを考える時代です。

まとめ

家族は個人の集合体ですから「居心地の良い自分の空間づくり」は住まいづくりの原点になっても良いと思います。

従来はともするとLDKという家族みんなのパブリックスペースに関心が集中しがちでしたがもっと個人のプライベートスペースを考えて住いづくりをする時代だと思います。

「あなたにとって自分の居場所は何処ですか?そして居心地の良い自分の空間とはどんな空間ですか?」考えてみるきっかけになれば幸いです。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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