住宅展示場・見学会への「集客数の減少」をお客様の視点から見てみると

「集客が伸びない」「来場者数が減った」という声は、コロナ禍に突入してから多少の波はありますが常態化しています。
特に感染力が強いとされているオミクロン株に置き換わってからは、一段とこの傾向は強まっているようです。
2020年のへこみの反動もあって2021年は受注に関しては多くの会社で好調という、来場者数と受注数の相関関係が崩れてしまったというのも特徴的な現象です。
これらの一見不思議に感じられる状況は、住宅業界側の視点で見た場合の話です。
お客様側から見るとどうなのでしょうか。
「集客数の減少」をお客様側からの視点も含めて多角的に考えてみましょう。

Contents

住まいづくりを思い立った人々の行動様式が変化

総合住宅展示場の来場軒数の変化
総合住宅展示場の来場軒数の変化

総合住宅展示場来場者は場所にもよるでしょうが、従来は1度の来場時に3~4軒(平均3.4軒)程度のモデル住宅を観て回っていましたが、最近では1~2軒(平均1.3軒)程度のモデル住宅しか観ていません。
これは、多くの人との接触を避けて感染リスクを抑えるという行動様式が、住まいづくりの初期の行動にも影響を与えているということです。
ということは、事前に住宅会社をネット検索で絞って、ほぼ狙い撃ちで来場されているということです。

「住宅建築適齢期」は「デジタルネイティブ世代」

1980年以降に生まれた世代を「デジタルネイティブ世代」と言われますから、ちょうど「住宅建築適齢期」の主力世代がこの層に当たります。
この世代の特徴は、「現実の出会いとネットでの出会いを区別しない」、「相手の年齢や所属、肩書にこだわらない」、「情報は無料と考える」、「オリジナルとコピーの区分の消滅」、「インターネットミーム(ネットを介して人から人へ模倣として拡がっていく行動)拡散力(SNSなどへの書き込みで拡散)」などがあげられます。

ネット検索とネットの口コミで候補に挙がった住宅会社/工務店のホームページを見て、「現実の出会いとネットの出会いを区別せずにこの会社がいいかな」として来場されるという思考が行動結果に表れています。

●ベテラン住宅営業の自慢話は通用しない

「相手の年齢や所属、肩書にこだわらない」ので「10年で150棟の受注実績」とか「3年連続受注コンテストゴールド賞受賞」とか、「住宅営業専任部長」とかの肩書を名刺に所狭しと記載している住宅会社を見かけますが、意味をなさず「自身の住まいづくりに役立つ情報を無料で提供してくれる住宅営業は良い住宅営業」となっています。
このことは、ベテランが通用しない現実と「新人だから役に立たないと思い込んでいる会社の固定概念」が破綻してしまっていることを示唆しています。

会社が伝えたいことを伝えるのではなく、目の前の固有名詞のお客様が求めている情報を理解して受容れて、適確に提供できるのかがポイントです。
これらのことは教育で対応できるということを示しています。
新人住宅営業は、経験が不足しているかもしれませんが、お客様も住まいづくりの新人です。

●「自社オリジナル」も通用しない

「情報は無料」で「オリジナルとコピーの区分が消滅」していますから、「自社独自の〇△□工法」や「オリジナルキッチン」とかは、お客様が住宅会社/工務店を選択する理由にはならず、「情報として受け取っている」というのがお客様視点です。
同じようなモノなら安い方を選んだ方が得、というようなネットオークション的な感覚です。

●「口コミ」は「画像コミと動画コミ」へ

「インターネットミーム(ネットを介して人から人へ模倣として拡がっていく行動)拡散力」を利用して自分の気に入った情報を手に入れておられます。
特に、SNSのInstagramの画像や動画は分かりやすくインパクトがありますから、こうした画像や動画を持参されるお客様が当たり前化しています。

従来の住宅の見せ方、集客の仕方、接客応対の仕方を変える

冒頭の話しに戻って考えると、ご来場いただくためには、事前にネット上で選ばれる必要がありますので、ホームページの情報発信を強化します。
耐震性や外皮性能、全館空調などの「モノの説明だけでは情報ではなく」、それらの「モノがもたらすお客様の暮らしの変化やメリットを情報として発信」します。
その際には、必ずビジュアルな画像、動画も使って伝わる情報とすることがポイントです。
モデル住宅を見に来ていただくのも、「家というモノを見てください」というのは、昭和/平成時代の住宅の見せ方です。
令和の時代は、住宅の内容も「○LDKプランにあてはめて、こんな工夫もあるよ、程度の一般解の住宅」では通用しません。

「この住宅に住まわれるお客様はこんなコトを実現されたいので、こういうプランになりました」という「一般解から個別解へ」の姿勢が分かるように、ネット上での見せ方も「あなたならどうされたいですか」を触発する情報発信へ切り替えます。
ご来場時の接客対応と併せて、お客様の暮しを中心とした見せ方と情報発信へ切り替えます。

●ネットで絞って見に行った住宅でときめきとワクワクを提供

せっかくわざわざ選んで来たのに、私のことを聴いてくれずに自分のしゃべりたいことばかり話す住宅営業に我慢させられて、住宅は適当に流して見せてもらって、後はお金と土地のことばかり聞かれるという苦痛を受けたと多くのお客様は感じておられます。「どこの会社に行っても同じようなもの」なので、「こんなもんなんだろう」で済まされていますが、本来はお客様が実現したいコトを中心に新しい住いでの「ときめきの暮らしに気づき」、「ワクワクする新しい暮らしへの期待感が高まる」暮らし視点でご案内をすれば確実に受注につながります。
また、この視点の住宅案内の仕方を情報発信に応用すれば、集客数は確実に増加します。

まとめ

お客様の視点で考えれば様々なことが見えてきます。
コロナ禍の行動様式変化やデジタルネイティブ世代が住宅需要の中心世代化している事を市況環境として捉えて対策を講じましょう。
従来の集客手法や接客応対、あるいはモデル住宅の作り方や見せ方も視点を変える必要があります。

お客様の暮らしを中心とした視点の新たな住まいづくり方式へ転換を図りましょう。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

関連記事

住宅の価格アップ時代には「気づき共感営業」が強力な武器になる

住宅業界は30年振りの価格アップ時代に突入しました。「超低金利デフレ時代」が続きましたが、外的要因によって資源/資材のインフレへと急速に転じています。住宅価格アップ時代に適応させ、住宅事業を発展させる方策がこの春からは必 […]

住宅展示場・見学会への新規来場数減少で重要性を増す週中アポ

新規来場者数が減少しているという事態では、「来場者を全て受注する」というのが営業の基本姿勢です。コンサルティングを実施している何社かのデータを詳しく分析すると、受注した案件のお客様との面談間隔が3.5日のお客様が最も受注 […]

住宅営業は毎週確実に前進が原則

住宅営業と言っても建売分譲住宅営業、建築条件付き売建営業、注文住宅営業に分かれ、さらに価格帯や住宅テイストで市場は分かれ、販売方法や販売期間のベンチマークは異なります。 最新の営業手法でも「目に見える商品を売る建売分譲住 […]

新着記事

【集客のコツ】失敗しない集客のポイントと改善方法

集客は、受注獲得のための重要なテーマのひとつです。数多くの集客方法があり、「効果が上がる集客方法がわからない」「他にもっと効果的な集客方法があるのではないか」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、集客を成功 […]

お金の不安を払拭できるかが住宅営業の分かれ道

建築適齢期である20~40代のお客様は好景気を知らない世代であり、給与所得が物価高に追い付いていないという先行き不安もあり、老後の「お金」に対して堅実傾向があります。20代から「今から備えたい」という意識を持たれている方 […]

【現代人は疲れている!】疲れを解消する「家」は、お客様に響く!

現代人は、仕事、家事、人間関係など、現代社会を反映するような様々な要因で「疲れ」を感じています。今回は、疲労回復のために必要な「家」、リフレッシュして「幸せを感じる家」のあり方について考えてみます。 Contents 現 […]

受注できない時の住宅営業の課題と対応策

受注できないのは、「集客数が少ないから」なのでしょうか。住宅展示場協議会と住宅生産振興財団によると、全国の9月時点での住宅展示場の来場者組数は前年比3.2%減とのことで、多少の増減はあるにせよ、以前のような集客数は見込め […]

展示場・見学会の集客は、「付加価値」を意識する

集客数が減少している状況で受注を獲得するためには、高い興味関心を持っていただいた状態でご来場いただく「集客」が重要です。様々な方法で集客を試みているけれど、なかなか成果が出ない場合、自分よがりな発信になっているかもしれま […]

住宅営業の初回接客品質向上のポイント

住宅展示場や完成住まいの見学会などでの初回接客は、受注成否の80%に影響すると言われるほど重要です。住宅は、高額商品なため購入するかどうかの決定には慎重になるのが当然なうえ、物価上昇率に給与所得の上昇率が追いついていない […]