住宅展示場・見学会への「集客数の減少」をお客様の視点から見てみると
2022/04/02

「集客が伸びない」「来場者数が減った」という声は、コロナ禍に突入してから多少の波はありますが常態化しています。
特に感染力が強いとされているオミクロン株に置き換わってからは、一段とこの傾向は強まっているようです。
2020年のへこみの反動もあって2021年は受注に関しては多くの会社で好調という、来場者数と受注数の相関関係が崩れてしまったというのも特徴的な現象です。
これらの一見不思議に感じられる状況は、住宅業界側の視点で見た場合の話です。
お客様側から見るとどうなのでしょうか。
「集客数の減少」をお客様側からの視点も含めて多角的に考えてみましょう。
Contents
住まいづくりを思い立った人々の行動様式が変化

総合住宅展示場来場者は場所にもよるでしょうが、従来は1度の来場時に3~4軒(平均3.4軒)程度のモデル住宅を観て回っていましたが、最近では1~2軒(平均1.3軒)程度のモデル住宅しか観ていません。
これは、多くの人との接触を避けて感染リスクを抑えるという行動様式が、住まいづくりの初期の行動にも影響を与えているということです。
ということは、事前に住宅会社をネット検索で絞って、ほぼ狙い撃ちで来場されているということです。
「住宅建築適齢期」は「デジタルネイティブ世代」

1980年以降に生まれた世代を「デジタルネイティブ世代」と言われますから、ちょうど「住宅建築適齢期」の主力世代がこの層に当たります。
この世代の特徴は、「現実の出会いとネットでの出会いを区別しない」、「相手の年齢や所属、肩書にこだわらない」、「情報は無料と考える」、「オリジナルとコピーの区分の消滅」、「インターネットミーム(ネットを介して人から人へ模倣として拡がっていく行動)拡散力(SNSなどへの書き込みで拡散)」などがあげられます。
ネット検索とネットの口コミで候補に挙がった住宅会社/工務店のホームページを見て、「現実の出会いとネットの出会いを区別せずにこの会社がいいかな」として来場されるという思考が行動結果に表れています。
●ベテラン住宅営業の自慢話は通用しない

「相手の年齢や所属、肩書にこだわらない」ので「10年で150棟の受注実績」とか「3年連続受注コンテストゴールド賞受賞」とか、「住宅営業専任部長」とかの肩書を名刺に所狭しと記載している住宅会社を見かけますが、意味をなさず「自身の住まいづくりに役立つ情報を無料で提供してくれる住宅営業は良い住宅営業」となっています。
このことは、ベテランが通用しない現実と「新人だから役に立たないと思い込んでいる会社の固定概念」が破綻してしまっていることを示唆しています。
会社が伝えたいことを伝えるのではなく、目の前の固有名詞のお客様が求めている情報を理解して受容れて、適確に提供できるのかがポイントです。
これらのことは教育で対応できるということを示しています。
新人住宅営業は、経験が不足しているかもしれませんが、お客様も住まいづくりの新人です。
●「自社オリジナル」も通用しない

「情報は無料」で「オリジナルとコピーの区分が消滅」していますから、「自社独自の〇△□工法」や「オリジナルキッチン」とかは、お客様が住宅会社/工務店を選択する理由にはならず、「情報として受け取っている」というのがお客様視点です。
同じようなモノなら安い方を選んだ方が得、というようなネットオークション的な感覚です。
●「口コミ」は「画像コミと動画コミ」へ

「インターネットミーム(ネットを介して人から人へ模倣として拡がっていく行動)拡散力」を利用して自分の気に入った情報を手に入れておられます。
特に、SNSのInstagramの画像や動画は分かりやすくインパクトがありますから、こうした画像や動画を持参されるお客様が当たり前化しています。
従来の住宅の見せ方、集客の仕方、接客応対の仕方を変える

冒頭の話しに戻って考えると、ご来場いただくためには、事前にネット上で選ばれる必要がありますので、ホームページの情報発信を強化します。
耐震性や外皮性能、全館空調などの「モノの説明だけでは情報ではなく」、それらの「モノがもたらすお客様の暮らしの変化やメリットを情報として発信」します。
その際には、必ずビジュアルな画像、動画も使って伝わる情報とすることがポイントです。
モデル住宅を見に来ていただくのも、「家というモノを見てください」というのは、昭和/平成時代の住宅の見せ方です。
令和の時代は、住宅の内容も「○LDKプランにあてはめて、こんな工夫もあるよ、程度の一般解の住宅」では通用しません。
「この住宅に住まわれるお客様はこんなコトを実現されたいので、こういうプランになりました」という「一般解から個別解へ」の姿勢が分かるように、ネット上での見せ方も「あなたならどうされたいですか」を触発する情報発信へ切り替えます。
ご来場時の接客対応と併せて、お客様の暮しを中心とした見せ方と情報発信へ切り替えます。
●ネットで絞って見に行った住宅でときめきとワクワクを提供

せっかくわざわざ選んで来たのに、私のことを聴いてくれずに自分のしゃべりたいことばかり話す住宅営業に我慢させられて、住宅は適当に流して見せてもらって、後はお金と土地のことばかり聞かれるという苦痛を受けたと多くのお客様は感じておられます。「どこの会社に行っても同じようなもの」なので、「こんなもんなんだろう」で済まされていますが、本来はお客様が実現したいコトを中心に新しい住いでの「ときめきの暮らしに気づき」、「ワクワクする新しい暮らしへの期待感が高まる」暮らし視点でご案内をすれば確実に受注につながります。
また、この視点の住宅案内の仕方を情報発信に応用すれば、集客数は確実に増加します。
まとめ
お客様の視点で考えれば様々なことが見えてきます。
コロナ禍の行動様式変化やデジタルネイティブ世代が住宅需要の中心世代化している事を市況環境として捉えて対策を講じましょう。
従来の集客手法や接客応対、あるいはモデル住宅の作り方や見せ方も視点を変える必要があります。
お客様の暮らしを中心とした視点の新たな住まいづくり方式へ転換を図りましょう。
《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士