住宅の価格アップ時代には「気づき共感営業」が強力な武器になる

住宅業界は30年振りの価格アップ時代に突入しました。
「超低金利デフレ時代」が続きましたが、外的要因によって資源/資材のインフレへと急速に転じています。
住宅価格アップ時代に適応させ、住宅事業を発展させる方策がこの春からは必要です。

他方で、この30年間で気づかぬ内に住宅建築をお考えのお客様の暮らしは多様化しています。
その反面、お客様ご自身が実現したい暮らしについて案外気づいておられないまま住まいづくりに入られているという矛盾が生じています。
先ず、お客様ご自身が新しい住まいで暮らしの重心となる「実現したいコト」に気づいていただくこと。
そして住宅営業と「実現したいコト」を共有化して住まいづくりを進めることで、ご満足を得ながら価格アップしても受注することができます。
これを実現するのが「気づき共感営業」手法です。

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表面的な住まいづくり情報はネットでいくらでも入手できる時代

お客様がインスタグラムの画像をお持ちになられて「これ出来ますよね」というように、お客様の住まいづくり時の行動も変化しています。
「お気に入りのインテリア」や「外観デザイン」なども画像でわかりやすく入手出来るため、住宅営業が振り回されていることも多発しています。
このことを考えても、「こういう住まいにしたい」という住まいづくりの情報発信は、住宅供給側からお客様へ移っているということです。
「提案営業」はもはや通用しません。
しかし、お客様からの情報は感覚的に選択された情報や目の前の生活上のお困りごとの解消が主体です。
お客様の新しい住まいでの「実現したいコト」、つまり「心豊かな暮らしの実現」という最も大切な考え方に基づいていない場合がほとんどです。

「どんな暮らしがしたいのか」の質問に答えられるお客様は皆無

お客様にとってこれほど難しい質問はありません。
住宅建築の目的は、家族が幸せに暮らすことです。
しかし、実際には目の前の生活上の問題点が要求として先ず出てきます。
「収納が足りない、部屋数が足りない、動線が悪い等の不平不満」は新しい住宅になるのですから解消されてあたり前です。
この要求への対応だけでは、価格が安い方が良い住宅となってしまいます。


不満の解消だけでは、お客様が数千万円という買い物をする価値はないと思います。
今後、お客様の暮らしが半世紀以上にも亘って続く新しい住まいは、「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」であるべきです。
その入り口は、家族の日常のささやかかもしれない「幸せなシーンがどういうものなのか」ということに、お客様ご自身が気づいていただくところから始まります。
日常過ぎて改めて言われても分からないことかもしれません。
そこを「ご自身がこのモデル住宅に住むとして」という視点で少しでもリアルに新しい住いでの暮らしを疑似体感体験していただき、「ここではこういうコトができたらいいな」「ここは違うな、もっとこうしたらこんなこともできそうだな」という「実現したいコト」に気づいていただくことがポイントです。
「どんな暮らしがしたいのか」を質問するのではなく、「お客様に気づいていただくこと」が気づき共感営業のポイントです。

●住宅のハードの説明は「実現したいコト」が見えた後が効果的

住宅会社/工務店の住宅営業は、自社商品特徴という構造/工法と性能、主な仕様設備の説明をしたがるのが一般的です。
特に初回面談などの営業初期段階で、「是非分かってほしい自社の特長」の構造工法のハード部分を熱心に説明したがります。
本来、構造工法はプロの領域であり黒子の部分です。
お客様が「子供が走り回ってリビングと外のテラスを自由に行き来できるように可能な限り大きな開口にしたい。休日にはテラスでランチがしたい。そんなリビングと外部テラスが一体になるような家にしたい」という「実現したいコト」が分かれば、ワイドスパンが飛ばせて、しかも耐震等級も温熱環境も最高等級を確保できる自社工法の話を詳しく説明します。
この順番なら、お客様は構造工法の話しも良く聴いておきたい状態ですから「伝わります」。
住まいづくりは先ず「モノからコトへ」で実現したいコトをお客様と営業が共有化し、「コトからモノへ」で住宅というモノの内容を決めて行くことで自然な流れで住宅受注へと向かいます。

「予算」ではなく「Max資金計画」で話を進めることがポイント

従来の住宅営業は、お客様の「予算」という「根拠が曖昧な金額」に縛られてしまっています。

特に価格アップ時代には、住宅営業が自らの首を絞めてしまい、失注パターンに陥ってしまいます。
「気づき共感営業」で実現したいコトに気づき始めたお客様は、ワクワクすると同時に「この予算で実現できるのかな」と不安がよぎります。
そこで、初回面談時の最後の着座で、概算ですが「Max資金計画」を作成して共有化します。
お客様の調達可能な建築資金(土地なし客の場合は土地代金も含めて)の限度額を共有化するようにします。
Max資金計画を作成し、お客様と共有できるということは、「気づき共感営業が成功した証」でもあります。
お客様の「実現したいコト」が何処まで可能なのかをお客様とご一緒に考えて行くことが可能になります。
お客様vs.営業ではなく、住まいづくりのパートナーとして同じ方向を向いてユーザーメリットを最大化するための住まいづくりを進めることができます。
これが価格アップ時代の住宅営業です。

「気づき共感営業」という住宅営業ノウハウの修得は3段階

「気づき共感営業」は、多くの住宅会社/工務店の従来の住宅営業とは大きく異なる住宅営業手法です。
「お客様の暮らしを中心に置いた素直な営業」ですから、「ユーザーメリットを最大化するための投資」をお客様が納得の上行ってくださいます。
価格アップ時代には必要不可欠な営業手法です。
「気づき共感営業」という営業ノウハウの修得は3段階に分かれています。

もちろん最初期の研修段階でも受注効果はありますので、どんどん実戦慣れしながら同時ノウハウ修得のレベルアップを進めていただきます。
修得の段階を進み「体に浸み込む」ことで受注力はさらに高まり定着します。
ノウハウの修得レベルは努力で差が生じす。

1、研修

「頭で理解する(動画などのビジュアル教材で研修)」

2、ロープレ訓練

「頭と体が一致して動く(具体的なお客様事例でモデル住宅にて訓練)」

3、受注検討訓練

「受注ポイントを理解する(営業が対応している実際のお客様案件で受注推進策の訓練)」

の3段階で「気づき共感営業」をノウハウとして身に着けていただきます。

●修得の初期段階でも「他社営業とは大きく差別化」できる

先ず、お客様の反応が変わります。
「自分たちの暮らしを中心に話を聴いてくれた会社はこの会社だけです」
とか、初期段階の研修を受けていただいた、まだ十分に研修が進んでいない段階の「気づき共感営業風味」でも、実戦投入をしていただくと効果がすぐに現れます。
手ごたえを感じていただきながらノウハウ理解を進めて実力を高め定着いただくことができます。

まとめ

価格アップ時代に突入したこの春の需要期からは新たな取り組が必要です。
「気づき共感営業」は、こうした時代に対応する最適な営業手法ですので是非導入されることをお勧めします。
https://www.housing-labo.com/consulting

住宅産業は受注産業ですから、先ずは営業の強化です。
それに伴いお客様の満足度アップと価格アップを納得していただく設計手法として「暮らしフィット設計」「暮らしインタビュー設計」も必要になってきます。
商品力そのものの強化として「商品開発とモデル住宅設計手法」も必要になると思います。
これらの変革を実務で推進する「実務責任者の育成」も重要なポイントです。
コストを抑えるための一層のコストダウン(コストリダンクション)も従来とは次元の異なる発想での推進が必要です。

このようなトータルな住宅コンサルティングも会社ごとの状況に応じて効果的な分野から変革ステップを踏んで取り組まれることを併せてお勧めします。
時代の変化に慌てることなく冷静に、しかも素早くシフトする必要があります。
ご質問等がございましたら何なりとご相談ください。

https://www.housing-labo.com/#top-consulting

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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