お客様への提案営業は時代遅れ 多様化する価値観に対応する住宅営業方法
2022/02/05

提案営業と言われて早半世紀が経過しましたが、この間にネットが導入され、SNSが進化するなど、情報発信者が「エンドユーザー」へ移った令和の時代に、「提案営業は逆効果」となってしまいました。
「提案営業」は情報化社会では「見方を変えると上から目線」と受け取られてしまいます。
「住宅業界は個別のお客様の暮らしを理解するという個への対応が多業界に比べて周回遅れ」のため、「提案営業」等の言葉は未だ死語になっていませんが、もうこの辺で終わりにして新しい方向の営業に踏み出しましょう。
Contents
適切な情報提供

営業はお客様を「提案営業」でリードするのではなく、「お客様に実現したい暮らしに気づいていただくようサポートしコントロールする」ことが求められています。
その上で「適切な情報提供/提示」を行って、「これだけこなれた情報があればお客様ご自身でご判断可能」という状態へ導いて差し上げて、「ご判断されるのはお客様」というスタンスが正しい営業の姿勢です。
価値観の多様化と「素人のお客様」

お客様の価値観は多様化しています。
結婚して子供を持ち育て上げるという人生の定番コースも揺らいでいます。
モデル住宅に新規でご来場される方々の職業も働き方も家族の関係も、まさに多様化しています。
時代が変わっても変わっていない部分もあります。
住まいづくりは初めてという方がほとんどです。
2度目、3度目でもその程度です。
毎日の夕食の買い物とは違って、野菜は鮮度ならこのスーパーで、肉はあっちの駅前のスーパーが良い、などと言うような購買行動を自らコントロールするような情報をお客様は持たれていません。
●「こんな暮らしを実現したいからこういう家が欲しい」というお客様はゼロ

プロの主婦/主夫は野菜と魚が続いたからビタミンB群が不足気味だし、久しぶりにステーキでも買って帰ろうかな、という栄養素のバランスという合理的な考えと食事の好み趣向で適切に判断して、予算内でメリハリのある食材を買われていると思います。
食事に関してのプロは普通に市中にいらっしゃいます。
情報発信はユーザー中心の時代と言っても、住宅に関してお客様は全員がまったくの「素人」です。
住宅の購買頻度が生涯で1回という方が多く、住まいづくりの経験はありません。
情報はあっても、何をどう判断したらよいのか分かっておられる方はいらっしゃらないというのが普通です。
●さりげない「住まいづくりの手引きが必要」

お客様はどこから考えはじめて住いづくりを進めて行けばよいのか、組み立て方や筋道が見えていません。
したがって、モデル住宅を観ても何をどう見てどう反応して良いのかわからないか、ご発言があってもその内容は断片的か、聞かれたから答えたというやり取りに陥りがちです。
「だから提案営業!」という気持ちはわかりますが、ほとんどの日本人が標準家庭を目指していた時代ではないために「禁じ手」です。
先ずはアンケートでご記入いただいたお客様のサーフェース(表面)情報から家庭で過ごす時間、職種(交代勤務等のイレギュラー勤務体系の方など)、将来の家族数などのお客様情報を営業が理解する姿勢が重要です。
お客様を中心とした接客姿勢を貫くことで、お客様が住まいづくりの手引きをこの営業にしてもらおうと思い始める一歩目です。
●住まいづくりの軸

「住まいを楽しみ人生を楽しむ暮らしの実現」という住まいづくりの軸は振らさないに様にして、どういう住まいになったらこのお客様は住まうという日常が楽しい時間なるのだろうか、どうすれば週末のちょっとした時間が人生を豊かにし、楽しむための暮らしになるのだろうか、と先ず住宅営業が「お客様の心豊かな暮らしのために」と本気で考えているのかが重要です。
お客様を中心に置いた住まいづくりの軸が振れないド本気の住宅営業は、お客様の信頼を得て、自分を理解してくれた住宅営業からの暮らし触発にもお客様は良く反応し、こんな暮らしがしたかったのかな、というお客様ご自身の暮らしへの気づきにつながり始めます。
ご自身が新しい住まいで実現したいコトへの気づきという正しい住まいづくりスタートへの手引きです。
●お客様の暮らしを理解し共感する

「提案営業」よりお客様を中心に置いた「お客様の実現したい暮らしをご一緒に気づき共感する営業」です。
「モノからコトへ」で考えれば、お客様が実現されたいコトが共有化されて住宅というモノへ落とし込むことができます。
個への対応が求められる時代です。
気づき共感営業の時代です。
まとめ
住まいづくり情報があふれて、何を取捨選択するのが難しい時代に、住宅会社中心発想の「提案営業」はお客様から見ればその他大勢の情報が増えただけにすぎません。
お客様ご自身がどのような暮らしを実現なさりたいのか、というご本人も気づいていない部分のチャネルを拓くというのが、これからの注文住宅営業です。
プロの注文住宅営業の新しい考え方とスキルをぜひ身に着けてください。
《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士