「暮らし視点の住宅営業」は、大きな他社差別化になる!

今後の住宅市場は外形として捉えれば建築適齢期の人口減が進み、一方で空き家率は13.6%もあるという市場です。
需要漸減化の「モノ」が余っている市場で「対価」を支払うだけの「魅力ある住宅」をお届けできるのかという課題が、住宅産業に突き付けられています。

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モノ充足市場での住まいづくり

モノが不足している市場では、万人受けするモノ(住宅というハコ)を作れば売れる市場です。
かつては、標準世帯という夫婦(専業主婦)と子供二人という世帯を対象にして、4LDKであれば売れました。
今や標準世帯は全世帯の4.6%しかありません。
そういう市場の変化があっても、これに耐震性と断熱機密性能、設備機能が付加されれていればよいという発想から多くの住宅会社は抜け出せていません。

本来モノが充足している市場では、個人のお客様にとって魅力的なモノを作らないと売れない市場です。
個々のご家族に魅力的な住宅づくりを進めることが求められる時代です。

住宅は「暮らしの器」と単純化して考えると、「器に合わせた暮らしをする」時代から「個々のお客様の暮らしを採寸してフィットした器を作る」住まいづくりへの転換期です。

「お客様の暮らしを中心に考える暮らし視点の住いづくり」が求められていますが、極一部の住宅会社を除いて、どの住宅会社も実践できていません。

大きなチャンスがあります。

LDKが誕生して70年

住宅不足時代の苦肉の策として生まれた2DKは「器に合わせた暮らし」です。
そこから発展した4LDK。
悪く言えば、主寝室と子供部屋2つに和室とLDKという発想は、経済的に豊かになった分だけ2DKから4LDKへと部屋数が増えただけで、70年前と何が違うのでしょうか。

誤解を恐れずに言うと「器に合わせた暮らしの延長線上の住まいづくり」です。

●お客様は、ご自身の暮らしが見えていない

お客様の暮らしにフィットした住まいづくりは、言葉として「注文住宅」ということになりますが、「自由設計」「フリープラン」でお客様要求に従って作ることが暮らしに合った住まいづくりなのでしょうか。
極端に言えば、これまでの「注文住宅」は、ただ「営業が言いなりになった」だけ、「この家の設計者は『実はお客様』」になってしまい、これでは「お客様の暮らしを中心に考える」という本来のプロの役割は発揮できていません。

そもそも「お客様はご自身の暮らしが見えていない」のが当たり前です。
「営業に問われたから思いついたことを答えた」程度で、それに基づく住まいづくりは、お客様の暮らしにフィットした住宅づくりではありません。

●住宅営業手法の抜本的な転換が必要

住宅営業が知りたいお客様情報は「ご予算」と「土地の有無」で、あとは住宅営業がハード面の自社特長を一方通行で話しているというのが現状です。
お客様の要求が出たら「何でもできます。自由設計ですから」と問題先送りというのが多くの住宅会社の営業の実態だと思います。

先ず、お客様に「ご自身の暮らしに気づいていただくこと」、そしてその気づかれた暮らしに住宅営業が共感し「それならこうしましょうか」などとご一緒に考えることから始まるのが注文住宅営業の新しいカタチです。

住宅営業が聞きたいことだけを聞いて、あとは言いたいことだけを言う、という「自社を中心とした住宅営業」から、モデル住宅に住むという視点でお客様をご案内する暮らしへの触発営業によって「お客様ご自身が実現したい暮らしに気づく」というお客様を中心に置いて進める住宅営業方式への転換です。

この転換に成功すると、お客様は住宅営業と会社を信頼していだけることになり、結果として非競合の営業展開が可能になります。

●お客様の現状の不満の解決

お客様は現状の暮らしに対しては必ずご不満があります。
収納不足、夏暑く冬寒い、部屋数が足りない等、暮らしの「マイナスの領域」を改善したいという「マイナス要素の解消」の要求に応えるのは、住宅が新しくなるのですから「出来て当たり前」であって、営業活動上の他社へのアドバンテージにはなりません。
この不満の解消だけでは「安い方が良い」と競合他社を呼び込むことにもなってしまいます。

●「これだけは実現したい暮らし」への気づき

「リビングと一体となったウッドデッキで休日に家族とブランチを楽しみたい」と暮らしの「プラス領域」に気づかれたお客様は、これを実現するためのワイド開口、全天候型のウッドデッキとするためのテラス屋根の設置など「プラス領域の暮らしのために多少高くなっても実現したい」と「実現できた魅力ある暮らしへの対価」を理解されており、非価格競争に持ち込むことになります。

まとめ

「お客様の暮らしを中心に考える暮らし視点の住いづくり」への転換には「気づき共感営業」手法という営業のプロセスを明確にした営業セオリーがあります。
この営業セオリーを修得し実戦対応できた住宅会社は、他社とは全く異なる次元で差別化でき、お客様とご一緒に楽しんで住まいづくりを進めることができます。
営業の視点を転換しましょう。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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