暮らしフィット設計(プラン変更を大幅に減らす住宅設計)

住宅会社/工務店の設計者に求められている能力とはどういうものなのでしょうか。
建築士の資格を持って実務をこなしていれば建築与条件内で建築基準法に沿った作図は出来て当たり前ですが本来設計者に求められている機能はと考えると案外曖昧な回答になってしまいます。

欧米の建築系の学生への教育の最初(教養課程)は美術系の学生と一緒に教育を受ける場合が多いといいます。
確かにARTとARCHITECTUREは文字面から見ても元々は同じジャンルであったことがうかがえます。
建築の専門教育課程に入る際に「君はアーティストになるのか、デザイナーになるのか」と問われてそれぞれの道に進むようです。
アーティストとは「自己表現者」であり「自分の感性、考えに基づく設計者」、デザイナーは「問題解決者」であり「問題の本質を掴んで正解を出す設計者」だそうです。
この考え方では住宅会社の設計者は明らかに「問題解決者」を選択したということになります。

それでは注文住宅の設計者はどのような「問題の本質を掴んで正解を出す設計者」なのでしょうか。

何に基づいての住宅設計なのか

住宅設計者の業務はCAⅮ入力や、構造計算、確認申請業務など様々ありますがここでは営業設計/基本設計業務、プランナーの業務について考えてみましょう。

「問題の本質を掴んで正解を出す」のが営業設計/基本設計を担当するプランナーの仕事ですからその業務は大きく2つに分かれていることになります。

1.問題の本質を掴む :お客様が実現したい暮らしの情報をインプット
2.正解を出す    :図面としてアウトプット

アウトプットの図面化するということは狭義の意味での設計能力を指します。
最も重要なことはお客様が実現したい暮らしの情報を掴みインプットすることです。

「生活タイムスケジュール表」で、お客様の暮らしを共有化してプラン変更回数を減らす

「プランヒアリング」は「部屋のサイズと位置、他の部屋の関係性」をお客様へヒアリングしていくことですが最も重要なことは「なぜそうしたいのか」という原因系が分からないまま「お客様がこうしたいと仰っているから」という「結果」だけを根拠にする設計はお客様にとって納得の行かないアウトプットとなり何度もプラン変更を繰り返すことになります。

「原因系」とは「お客様がご自身の暮らしに気づかれ、こういう暮らしがしたい」という「お客様が実現したい暮らしのコト」を指します。
お客様とご家族を中心に置いて実現したい暮らしの具体的な内容をお聴きしまますが、その際に家族一人一人の現状の暮らしについて1日24時間を時間単位で平日と休日に分けて整理する「生活タイムスケジュール表」を活用します。
これでどのような暮らしを実現されたいのかがある程度浮かび上がり原因系を掴むことができます。
もちろん「生活タイムスケジュール表」の使い方の研修は必要です。

●住宅設計プランナーに求められる能力

建築与条件内にプランをまとめる能力や外観をバランスよくまとめる能力などの狭義の設計能力が備わっていることはもちろん、それよりも数段重要なプランナーの能力は、お客様の暮らしにフィットした設計が実現できることです。
そのために「生活タイムスケジュール表」を活用して、実現したい暮らしをお客様と共有化する能力はプランナーが身に着けるべき必要不可欠な能力と言えるでしょう。

●訓練で身に着けられる「暮らしフィット設計」能力

お客様の前で話すのが苦手という設計者は多くいらっしゃいます。
暮らしにフィットする設計を行うためのお客様が実現したいことについて聴きだし共有化する設計者のコミュニケーション能力は聴く力と伝える力ですがどちらも「生活タイムスケジュール表」で現状の暮らしを整理し、暮らしの重点ポイントを抽出して画像、イアラスト等のビジュアル情報でお客様と考え方を共有化していくコミュニケーション手法です。

話すことに重きを置かず画像で実現したいコトのイメージ共有化とそのための空間を共有化します。
適切な研修を受講すれば身に着けられます。

〈暮らしフィット設計研修〉
https://www.housing-labo.com/training/training-566.html

●住宅設計と住宅営業の連携

暮らしにフィットした設計を実行するためには設計の暮らし情報の引き出し方だけではなかなか難しいのも事実です。

営業段階でもお客様への暮らし視点の営業が出来ているという共同歩調が取れているとさらに有効になります。
特に「モデル住宅でのお客様ご自身がこのモデル住宅に住むとしてという視点での『体感体験』は必要不可欠です」。

●暮らしの重心の実現

モデル住宅の良かった部位や部分をあれもこれもと図面に盛り込むことを要求されるお客様もいらっしゃいますが、営業と協力して「せっかく新しい住宅を建てるのですからと『これだけはぜひ実現したい暮らし』を共有化する」ことを先ず優先して進めます。
「暮らしの重心の共有化」です。
この暮らしの重心に床面積を重点配分するコンセンサスを得ることが、拡散から収束へ向かわせるきっかっけになります。
プランナーは暮らしの重心主義設計を心がけます。

まとめ

狭義の設計技術という範疇を超えて「お客様の暮らし視点の住いづくりを実現する」という視点のプランナーが求められています。注文住宅の「暮らしフィット設計」はそうしたプランナーのためのお客様の暮らしを共有化して進めるための設計方式です。

住宅設計研修『暮らしフィット設計』」
https://www.housing-labo.com/training-category/pannig_training

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《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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