増加傾向の新たな客層に対応する住宅業界の集客手法

住宅業界全体の集客が減少している中、集客手段はチラシやホームページ、SNSの活用、総合住宅展示場への出店、住宅の総合情報サイトへの登録、フランチャイズへの加盟など、以前は一番効果の高いものや自社の特性に合ったものを選んで活用すれば集客ができていましたが、現在は何か一つに取り組んでいても集客数が不足します。

ホームページやSNSでの情報発信などはもちろん、自社が出せる広告宣伝費の中から、効果が期待されるあらゆるものを活用して集客数を確保する必要があります。
従来から活用している集客媒体の主流であったチラシで自社の強みや特徴を打ち出すことが一般的でしたが、各集客媒体の活用方法は研究が進み、Instagramでは映える写真を投稿されるなど、媒体に応じた情報発信で集客をされています。

ただし、増加した集客媒体の活用方法については進化をしていますが、発信する情報は住宅の外観/インテリア/プランについてや現場情報などと以前と変わらない内容になっているのが大多数です。
一部変化したユーザーへの対応には、以前とは違ったアプローチでの情報発信が必要になります。

今回は、変化したユーザーの新たな客層へ対応した情報発信のしかたについて解説をしていきます。

変化したユーザー(客層)の特性

従来のお客様層が全て変わったということではありませんが、これまでに無い価値観のユーザーが現れてきており、しかも、増加傾向にあります。
それは、『良い住宅』が欲しいのではなく、その住宅で自分たちはどんな『楽しい暮らし』ができるのかという価値観を持ったお客様層です。

この客層へのマーケティングで重要なことは、外観/インテリア/プラン/現場の情報は最初に関心を持つ情報ではないということです。
マーケティングで集客という行動に繋げる上で重要なことは、お客様の関心時にマッチしているかどうかです。
良い住宅が欲しいお客様層には外観/インテリア/プラン/現場の情報はマッチしていますが、この住宅で自分たちは『どんな暮らしができるのか』というお客様層とは微妙にずれています。

もちろん、今までのお客様層が無くなったわけではありませんが、集客が減っていく中、取りこぼしたくない現状では、増加傾向にある新たに現れてきた客層へ対応した情報発信も行っていく必要があります。

新たなユーザー(客層)に対応した情報発信

従来の『良い住宅』を求められているお客様に対しては、『安心安全な家』を求められているお客様には構造、工法や保証について、『性能の良い家』を求められているお客様には住宅性能を、『かっこいい家』や『かわいいインテリア』を求められているお客様には映える住宅の写真が有効な情報発信でした。

その住宅で自分たちは『どんな暮らしができるのか』という価値観をお持ちのお客様への情報発信は、『こんな暮らしがしたかった』ということを見せる必要があります。
従来のように、住宅の外観/インテリア/プラン/現場を見せるのではなく、その家で『こんな楽しい暮らし』ができます、という情報発信です。

何をお伝えすると『楽しい暮らし』を見せることができるのかを考える必要があります。

①人物の入った写真

人物を入れ込むことによって、住宅だけでなくそこでの暮らしをイメージしていただくことができます。

②暮らしのシチュエーションを明確にする

右図は、奥様が読書を楽しんでいる暮らしの場面です。
暮らしのシチュエーションを明確にすることで、誰が(誰と)何をしているのかをお伝え出来ます。

③楽しい暮らしのしつらえをする

右図は、ご主人が週末におしゃれな食事を家族に振舞われるのを楽しみにしている写真です。
実際に使う暮らしのシチュエーションに必要なモノたちがあると、実感を持って暮らしの楽しさが伝わります。

『楽しい暮らし』を伝えるためには、誰と誰が何をしようとしているのか、人物とシチュエーションと使う物のしつらえがしっかりできていると実感を持って伝わり、『こんな暮らしをしてみたい』と思われた方の集客に繋がります。

【お客様の実現したい「楽しい暮らし」を軸に受注につなげる住宅営業の記事】

まとめ

集客が減少している中で、ありとあらゆる集客媒体を活用していく必要があり、媒体ごとの活用方法の研究は進んでいます。
その中で、ユーザーにも変化があり、媒体の活用だけでなく変化したユーザーへ訴求していく内容も併せて変化をさせていく必要があります。
従来の良い住宅を求められているお客様には、『安心安全な家』『性能の良い家』『かっこいい家』『かわいいインテリア』という、どんな住宅なのかという情報発信が有効ですが、新たに現れてきた『楽しい暮らし』に関心があるお客様には、『こんな暮らしをしてみたい』と思っていただける情報発信が必要です。

人物の入った写真を使い、暮らしのシチュエーションを明確にし、楽しい暮らしのしつらえをすることにより、『楽しい暮らし』が伝わるようになります。
例えば、ウッドデッキでも、ウッドデッキの写真を使いだけでなく、ウッドデッキにテーブルセットと週末の友人たちとのホームパーティを行っている人物とそこでの食事のシーンが入ると、『こんなホームパーティを友人たちとしてみたい』と思っていただけた方の来場に繋がります。
これまでの『良い住宅』を求められているお客様層だけでなく、新たに増加傾向にある『楽しい暮らし』を求められるお客様にも対応し、新たな客層の取り込みを進めてください。

【楽しい暮らしが伝わるイベント企画】ときめきの暮らしに気づくイベント

楽しい暮らしを求めるお客様に対応する住宅営業「気づき共感営業研修」

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
企業サポート事業部
取締役事業部長 松尾励朗

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