「何でもできます」「自由設計ですから」では「何も売れない」
2022/09/16

「注文住宅」という言葉は、ある意味で誤解されたまま世に広まっています。お客様は、「自分が思うとおりに家を建てられる」と思われている部分があり、住宅会社・工務店も「自由設計ですから」と、お客様のご要望のままに設計・施工されることも多々あるため、「何でもあり」という認識が根深く存在しています。
Contents
自由設計の本来の意味

注文住宅営業の大きな誤解の一つに「自由設計」「フリープラン」という考え方があります。「自由設計」とは、本来「設計の自由度がある」という意味です。現在多くのお客様や住宅会社・工務店が認識している「自由設計=何でもできます」とはまったく異なる概念です。
アパレル業界の「注文」は明確

アパレル業界では、既製服でも注文服(オーダーメイド)でも、ブランドがはっきりしていることです。ここで言う「ブランド」とは、どのようなデザインスタイルなのか、どのようなライフスタイルなのかなどといったお店が提案するスタイルが明確になっています。
好みの服のデザインや自分に合ったサイズを選び、場合によってはサイズ直しをするのが既製服であり、採寸してその店のデザインラインナップから生地やボタンを選ぶのがオーダーメイドですが、どちらも、そのお店の提案する服のタイプ、つまり、スーツやドレスなど、そのお店が扱う服の範囲内でお客様に服を提供します。スーツ専門のオーダーメイドのお店では、お客様が「ジーンズをオーダーメイドで作りたい」「社交ダンスの衣装をオーダーメイドで作りたい」とおっしゃっても「何でも作ります」と応じずに辞退します。
注文住宅の「自由設計」の現状

例えば、
お客様「広いリビングが欲しい」
住宅営業「リビングとダイニング合わせて10帖にしますか?」
お客様「15帖くらいがいいかな」
住宅営業「わかりました。自由設計ですから15帖にできますよ。15帖にしましょう」
住宅営業「では、キッチンはどれくらいの広さが良いですか?」
お客様「6帖くらいかなぁ・・・?」
住宅営業「では、キッチンは6帖にしましょう」
というように、お客様のご要望のままにプランを決めていく住宅営業が多いのが現状です。「お客様がリビングダイニング15帖、キッチン6帖をご希望だから」という意見もあると思いますが、果たして言われるがままのプランで良いのでしょうか。
注文住宅とは

注文住宅は、「お客様が人生を楽しみ暮らしを楽しむための器」であるべきと考えます。お客様のご要望通りの住宅は、「自分の意見通りの家を建てられた」という住まいづくり段階での満足はあるかもしれませんが、そこで暮らし始めてからという未来の満足度はどうなのでしょうか。
お客様の暮らしにフィットした住まいづくり

例えば、リビングの広さについて、プランヒアリング段階で「10帖、15帖」等の数字でやり取りしてしまうと、その後もその数字という広さが基準になって進んでしまい、「もっと広く」という要望になりがちで、その通りのプランを作り提案しても「住宅面積オーバーのため予算もオーバー」になります。プラン修正後に再提案しても「広さが欲しかったのに小さくなった。予算上仕方ないか・・・」といった残念感が湧き出てきます。このようなマイナス感情を抑えるためにも、3m、4m、5mとそれぞれの距離ごとにご家族で会話をしていただき、表情がよく見えるか、話の内容が聴きとれるかを確認していただき、「このお客様」にとって最適な距離を把握し、ストレスなくコミュニケーションできるリビングダイニングの広さに設定していく、というのが「お客様の暮らしにフィットした住まいづくり」です。
お客様中心の住宅営業がやるべきこと

① お客様の話を聴く
お客様の現在のライフステージや家族構成、ご要望をお聴きしてまとめます。ご要望をお聴きする際には、お客様の思っておられること、言いたいことを徹底的にお聴きします。その後に、お話の想いのポイントやおっしゃったことの要点などを住宅営業が要約して間違いやズレがないことを確認をし共有化します。
② お客様の暮らしにフィットした住まいの情報提供をする
ご主人様のご関心の分野、奥様のご関心の分野と住宅会社としてのおすすめポイントの3点くらいに絞って丹念にご案内します。例えば、「広いリビングダイニング」がご要望のお客様には、お客様の暮らしにフィットさせるために、どこをどのように改良すればよいのかを具体的にメジャーで測りながら暮らしのシーン別に体感体験していただき、「お客様に最適なリビングの広さは○○帖」という「住宅のプロとしての情報提供」をして、「自分を理解してくれた住宅営業」として認識していただけるようご案内します。このようなご案内は、広さを求めて際限なく大きくなる住宅面積をご満足・ご納得を得つつ抑えられる効果もあります。
まとめ
注文住宅は、「お客様が人生を楽しみ暮らしを楽しむための器」であるべきです。お客様のご要望通りのプランの住宅は、そこで暮らし始めてからの満足度につながるとは限りません。住まいづくり段階から新しい住まいでの暮らしの両方でご満足いただくためには、お客様の暮らしにフィットした住まいのための情報提供が欠かせません。ご要望通りにプランを作るのではなく、「住宅のプロとしての情報提供」をすることをお勧めします。
《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
営業企画課長 眞田 智子