お客様と人間関係を作ることが住宅営業の仕事なのか?

注文住宅営業は、まず「お客様との人間関係を作る」ことと昭和時代に先輩からよく言われました。
旧来の注文住宅営業でよく言われた都市伝説のような話です。

注文住宅営業は形のないモノを売るビジネスですから、確かに売り手と買い手の信頼関係も「結果としては重要」な領域だとは思います。
「あなたのおかげで『良い住宅を建てられました』」とお客様に言われることは注文住宅営業マン冥利に尽きますし、お客様との間で強い信頼関係が生まれたという証でもあります。
あくまでもこれは注文住宅営業が成功した「結果の副産物」です。
この「副産物」を真っ先に取り上げて「人間関係作り」を目的にする注文住宅営業は全くのナンセンスです。

お客様は営業マンと仲良くなりたいために展示場や見学会にご来場されたのではなく、良い住宅を建てたいという目的で訪れています。
住宅会社は「出会い系サイト」ではありません。

営業マンの自己紹介シートは必要なのか?

いくつかの住宅会社では営業社員に「自己紹介シート」を作成することを指導し義務化している会社もあります。

「自己紹介シート」はB4サイズやA3サイズで営業マンの出身地、実家でのくらし、生い立ち、小学校から高校までのエピソードやクラブ活動などについても紹介しています。
さらに趣味についても詳しく示し、大学では何を学んでどういう志をもってこの会社に入ったのか、入社後の受注実績はどれくらいでお引き渡しをした「お客様からの感謝の言葉」をもらったことなどが写真付きでレアウトされた「超大型の自己売り込み名刺」です。
名刺からはみ出すほど並外れた大きな文字で自身の名前を表示している政治家や芸能人の名刺ですら足元にも及びません。

「住宅を売らずに人を売る」は、精神論では正解部分もあるのかも知れませんが、ビジネスとして考えれば「商品は住宅」であって「営業マンが商品」ではありません。

お客様は我慢して営業マンの自己紹介に付き合ってくれています。
本音は住まいづくりの参考のために早くこの会社のモデル住宅が見たいのです。

主役はお客様であって営業マンではない

言うまでもなく注文住宅営業の主役はお客様です。
この基本的な考え方で「お客様に強い関心」を持つことが注文住宅営業の基本姿勢です。

天動説と地動説

お客様へのモデル住宅の案内が始まると「しゃべりまくる」機関銃トークの若い営業マンがいます。
また、自社特徴の説明という名の「自慢話」を延々と続けるベテラン営業マンがいます。

特に住宅の構造/工法の話になるとスイッチが入り独演会が長々と続きます。
その後、自分の言いたいことを言い切ったという不思議な満足感が営業マンに漂い、これに付き合ってくださったお客様の「置いてきぼり感」に気づいてもらえずにいる接客風景は、よくあるモデル住宅案内時の景色です。

令和の現在でも住宅会社の営業は自社と自身が住まいづくりの中心であるかのような錯覚を未だにお持ちのようです。
あたかも「16世紀以前の天動説」を信じているようです。

注文住宅の定義を「お客様の暮らしにフィットした住まいづくり」とするなら、お客様を中心にしたモデル住宅のご案内が求められています。
効率的に受注を上げ、お客様に支持され、ご満足していただく注文住宅営業活動は「お客様を中心とした地動説」に頭を切り替えることです。

■お客様への強い関心

注文住宅営業の基本姿勢は「お客様への強い関心」を持つことですが具体的どうすればよいのか。

先ずは「お客様の表情」を常時見続けることが、お客様のお考えや正しい反応をキャッチするための第一歩です。

「お客様はこうおっしゃった」という話を営業会議で営業マンからよく聴くことがあります。
「トリプルサッシの話をしたら『良いね』とおっしゃいましたから」というような場合です。

言葉や文字にしてしまうと「良い」ということだから同意してくれて採用、というようなお客様の意思表示に聞こえますが、実はそうではなかったということは多発しているはずです。
「良い」は「どうでも良い」「良いのは分かるが高そうだね」「お世辞で良いと言っておくか」とか否定的な要素も含まれているはずです。

本音はお客様の表情に出ます。
この表情を読み取るのがコミュニケーションです。

お客様の表情を読み取るなど「若い社員にはそんな芸当はできない」「しかもマスクのこの時代に」という住宅営業リーダーの声が聞こえてきそうです。
新入社員にも22年以上生きてきた人生経験がおありです。
十分に読み取れます。

特に日本人は目元に表情がでますからマスクをしていても大丈夫です。
問題は「お客様を観ていない」ということです。
注文住宅営業の基本は「お客様から常時目を離さない」ということです。

お客様を理解するためのスキル

「お客様から常時目を離さない」ためには、モデル住宅内を案内する際も「バックで歩く」のが原則です。

また、営業マンは自身が話す場合に話の内容に集中してしまう傾向があり、お客様の表情から眼を放しているか、見ていてもお客様の反応を把握しようとする意識が抜けているためにお客様のお考えを掴めていません。
「お客様は何をお感じになられたのだろうか」と常にお客様に集中することです。

特に営業マンから何かの「説明を受けた後の表情に本音」が出ます。
説明することが精いっぱいという状況では説明をし終わった瞬間に頭がOFFになってしまい、肝心のお客様の反応が掴めていません。
こうした状況は自社商品のことなら「何も考えずに説明できる」ようになるまでになっておらず練習不足です。

ほとんどの営業マンは自ら説明した後にお客様からすぐに反応がないと焦って「次の話題」を出したがる傾向があります。

この「間を怖がる傾向」がお客様から「考える時間」「反応のための感じたことを整理する時間」を奪ってしまい、折角のモデル住宅での体感体験が中途半端で効果の薄いものになっています。

「間と言っても殆どは3秒以内」ですが、これを待てないのが営業マンです。
この「間の時間」も、お客様の表情から眼を離さなければ「今は考えておられるな」と読み取れるのですが、営業マンは言いたいことだけを言ったら目を離してしまいますから読み取れていません。

お客様は営業マンからの情報についてはほとんどが初めて見聞きする内容でしょうから理解するための情報処理時間がかかります。

「間を怖がらずにゆったりとお待ちする」ことです。

まとめ

「注文住宅営業」は「お客様が主役」です。
接客中はお客様の表情から眼を離さないということがお客様とのコミュニケーションの第一歩です。

住まいづくりの中心であるお客様とのコミュニケーションは、お客様の「真意」「本音」「感じたこと」を視覚的に表情から読み取って言語で補完するというコミュニケーションがポイントです。
また、お客様とのやり取りにおける時間の隙間という「間」の時間を「待つ」という勇気を持つことができると、お客様への理解が深まります。
お客様がプロとして営業マンを信頼してくださることにも繋がります。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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