お客様が「迷わない」「選んでくれる」住宅営業活動のポイント

お客様が建築計画を延期、もしくは中止をしてしまう理由の中で『資金不足』は営業が解決できませんが、『土地を決めきれない』、『業者を選べない』、『住まいづくりに疲れてしまった』という原因は住宅営業のしかた次第で解決できます。
お客様が『土地を決めきれない』、『業者を選べない』、『住まいづくりに疲れてしまった』という根本の原因は、お客様が判断するために必要な条件が分からないことです。
お客様に決断できる判断基準を提供できていないということです。

今回はお客様が迷わず決断できる住宅営業活動のポイントについて解説していきます。

お客様が決めきれない原因

土地選びは通勤、通学の条件や予算だけでは決められません。
土地にどれだけ予算を使ってよいかわからないまま通勤時間や学区だけで決めてしまうと、残りの予算でお客様の望まれる建物が建てられるのかもわかりません。
土地情報を大量にお渡ししても余計に迷う原因を作ることになります。

住宅の機能と性能で比較しても、住宅性能評価で同等級であればお客様からすると同じに感じますし、仕様も他社がマネできてしまいます。
他社との明確な差がお客様に見えにくくなり、業者選定ができない原因です。
お客様が判断できないままに住まいづくりが中長期化すると、毎週休日や平日の仕事終わりに打ち合わせや訪問に嫌気がさすのは当然です。
お客様が判断するのは、ご自身の新しい住まいで何が手に入り、どのようなメリットをもたらすのかが明確になっていないことにあります。

お客様の判断基準として、新しい住まいでのワクワクするような『楽しい暮らし』が具体的に想像できると、それに必要な土地の条件、住まいの規模が分かり、土地と建物の予算配分もご納得いただけます。
そして、それを提供できる業者を選べますし、ワクワクするような『楽しい暮らし』が現実になっていく住まいづくりのステップは疲れません。
新しい住まいでのワクワクするような『楽しい暮らし』をお客様が具体的に想像でき実現していく住まいづくりのステップが、お客様に住まいづくりを楽しんでいただきスムーズに建築計画を進めていくポイントになります。

お客様がまだ気づいていない『楽しい暮らし』

お客様に「どんな『楽しい暮らし』をしたいですか?」とお聞きして答えられる方はいらっしゃいません。
住まいづくりを楽しんでいただく住宅営業の一つ目のポイントは、お客様ご自身の『楽しい暮らし』に気づいていただくことから始まります。
『暮らし視点』でのモデル住宅、見学会の案内を行います。

暮らし視点での案内

『暮らし視点』での案内はどのように行うのか、建物の性能や仕様を説明しても暮らしは見えません。

暮らし=「場」+「コト」+「登場人物」

例えば、リビングをご案内すると時に、お客様に「ここは10畳のリビングになります。大きなサッシがついていて・・・・」とご案内しても、お客様はご案内した建物の情報しか伝わりません。
そこで、「お客様ならリビングでどんなことをだれと楽しみますか?」とお聞きすると、「家族でゴロゴロして過ごしたい」など、お客様のリビングでの過ごし方をお聞きできます。
さらにゴロゴロの具体的な内容についてお聞きしていくと、ご家族の暮らしが少しづつ見えてきます。

ご主人は『クッションを枕代わりにしながらテレビを見たい。できれば家族の近くがいい』
奥様は『ご主人と一緒にテレビを見ながら平日の出来事をお子様を含めて会話したい』
高校生のお兄ちゃんは『寝転がりながらタブレットでゲームをしたい』
中学生の妹は『お母さんとおしゃべりながらソファの上で寝そべってSNSで友達とやり取りをしていたい』

ということが出てきました。
ご案内した10畳のリビングで、お客様の暮らし方を体感していただくことにより、初めてこんなご自身のやりたかった『楽しい暮らし』に気づいていただくことができ、「広さは10畳で十分」、「床材はゴロゴロしても痛くなかったのでこれにしたい」、「ソファの大きさはもう少し小さくても大丈夫」など、どんなリビングにすれば『楽しい暮らし』が実現できるのか判断基準ができます。

『暮らし視点』での案内がなく、お客様に実現したい『楽しい暮らし』を気づいていただかない限り、「リビングは大きい方がいい」「床材も予算内でいいモノにしたい」ということになってしまいます。
お客様の『楽しい暮らし』を実現できるということが、お客様が迷わず決断できる判断基準になります。

お客様の『楽しい暮らし』を具体化する住宅営業

ご案内する場所ごとに、お客様の『楽しい暮らし』に気づいていただき、必要になる大きさやモノが分かると、ご案内が進むにつれお客様の『楽しい暮らし』を実現するためのお住いのカタチが具体化していきます。
もちろん全てが予算内に納まらないこともありますが、新しいお住いでの『楽しい暮らし』が具体的に見えていると、ご家族で何を楽しみたいのか、絶対に実現したいコトは何か、優先順位も決めていただきやすくなります。

また、土地が決めきれないお客様も『楽しい暮らし』に必要な建物の大きさや形がわかると、どの程度の予算を土地に掛ければよいのか、どのような形状の土地にすればいいのかが分かります。
土地を決めきれないお客様の判断基準にしていただけます。

お客様が実現したかった新しいお住いでの『楽しい暮らし』に気づいていただき、具体化が進むのはお客様にとってとても楽しいことです。
様々な構造や工法がある中で、お客様ご自身に合った住まいはどうすればいいのか見学に行ったり勉強をすればするほど、メリットやデメリットを知ることになり迷いが生まれます。
仕様も数十万種もある中から何を選べばいいのか、判断基準がなければ選べません。

ご案内時にお客様ご自身の『楽しい暮らし』に気づいていただき、それが具体化できていく案内や訪問はお客様に毎回ワクワクしていただける営業活動です。

まとめ

お客様が迷われるのは、判断基準が明確になっていないからです。
予算や建築条件の中で、構造、工法、仕様、設備を比較して決めるのは建築のプロでも難しいことです。

お客様の新しいお住まいでのワクワクするような『楽しい暮らし』が想像でき、実現するのに必要な土地の条件、それを提供できる業者であれば迷いません。
そして、毎回の訪問や打ち合わせでお客様の『楽しい暮らし』が見え、実現していけば、住まいづくりのステップ自体が楽しくなります。

お客様のワクワクする『楽しい暮らし』をお客様と一緒に発見し気づいていただくご案内で、お客様に迷わず選んでいただく営業活動が実現できます。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
企業サポート事業部
取締役事業部長 松尾励朗

関連記事

【住宅営業のコツ】値引きせずに新築住宅を受注するコツ

お客様から値引きを匂わされたら応じなければならないと思っていませんか。値引きしなくても受注出来る住宅営業のポイントをお伝えします。 「お客様の予算枠に金額を合せないと受注できない」「失注するくらいなら、多少値引きしてでも […]

住宅営業のツボは、お客様の暮らしの関心事を掴むこと

住宅設計者がお客様と面談する際は、常にお客様の暮らしの関心事を掴むように心がけます。住宅設計者がプラン作成に必要な情報を見いだそうとされるのは心情的によくわかりますが、プラン作成の基になる情報はお客様の暮らしに関する情報 […]

住宅設計トレンド フリースペース需要の増加を見逃さない!

コロナウィルス感染拡大の影響で自宅のフリースペース需要が増加しています。 テレワークの場所が必要になったということ以外でも、習い事をオンラインレッスンで受講したり、自宅にいる時間が長くなったことにより運動不足解消のために […]

令和時代 『個の時代のお客様中心』の住宅事業とは

『お客様は神様です』というフレーズは顧客中心にした接客のフレーズとして有名です。このフレーズは1961(昭和36)年に三波春夫さんが“お客様を神様とみる”という心構えであることを舞台の上で話したことが始まりとされています […]

「暮らし視点の住宅営業」は、大きな他社差別化になる!

今後の住宅市場は外形として捉えれば建築適齢期の人口減が進み、一方で空き家率は13.6%もあるという市場です。需要漸減化の「モノ」が余っている市場で「対価」を支払うだけの「魅力ある住宅」をお届けできるのかという課題が、住宅 […]

新着記事

新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-③

今回は、従来のリフォームのような小規模な案件が多い、一般的なリフォーム事業ではなく、新築するのと同等か、それ以上のメリットをお客様に提供する「フルリフォーム事業」成功のポイント③として、フルリフォーム事業の営業について考 […]

新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-②

新築事業の勢いが無くなり減速していく中、これをカバーして余りある事業としての新築同等以上のフルリフォーム事業分野を開発し事業として確立することは、今後の住宅事業戦略で重要です。従来のリフォームのような小規模な案件が多い、 […]

【住宅展示場の来場者数推移から見る集客対策】集客数減少 → 受注棟数減少の解決方法

最新の情報では、2024年7月の総合住宅展示場の来場者数は、前年同月比14.2%の減少、1月~7月までの今期来場者の累計は前年比3.2%減へと推移しています。大手ハウスメーカーの新築受注棟数もで概ね減少しています。集客数 […]

「非住宅木造建築」分野で成功するポイント

木造で住宅建築に取り組んでこられた住宅会社/工務店/建設会社にとって、非住宅木造建築分野は「未開拓分野」でありますが、保有建築技術の応用で自ら積極的に切り拓くことができる分野です。 戸建住宅市場が、人口減少と出生率の低下 […]

新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-①

新築住宅は、人口減少、出生率の低下で、少なくともこの先40年は、確実に需要が減少します。一方で、住宅ストック戸数は増加をし続けており、リフォーム需要は、インフレが継続する昨今の経済環境も含めて成長が期待されています。特に […]

間違いだらけの注文住宅事業

過激な表題ですが、正確に表現すれば、注文住宅を発注する側のお客様が軸を持たずに住宅会社へ注文を出しているため、予算は低めで、要求はランダムかつ過大になりがちです。それに振り回されているのが現実だと思います。 注文住宅は、 […]