変動する住宅業界 暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現が成功のポイント

「注文住宅事業の進化の方向性」と「現状の注文住宅業界の矛盾」について記したいと思います。
先ず、注文住宅事業の本質をお客様の暮らしを中心に考えると、「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」と定義できると思います。
これに対して住宅会社/工務店は、自社の「モノとしての住宅特徴」を訴求し、お客様の要求を基に「目に見えない注文住宅」を「モノとしてカタチにしていくビジネス」です。
一見成り立っているように見えるビジネスモデルに大きな空白が生じています。
「お客様の要求」は「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」という方向性に基づいた要求になっていないという事です。
ここに大きな矛盾を抱えています。

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100年、70年に一度の住宅業界の変革期

自動車業界では内燃機関から電動化へ100年に一度のへ変革期と言われていますが、実は住宅業界も100年前の1922年に初めて上野(東京)で洋風住宅の「平和記念東京博覧会」が開催され、「和の住宅」から「和洋折衷」の現在につながる住宅の暮らし方改革が始まってちょうど100年です。
1950年代初頭に公団が開発した2DKで、現代の4LDKに繋がる住宅プランの原型が完成しました。
高度成長期と相まって、マイホーム時代(4人家族で専業主婦の標準家庭がモデル)の幕開けから70年です。
もはや対象となった標準世帯は全世帯の4.6%しか存在せず少数派です。
「一億総中流」の社会が生み出した○LDKという「基本プラン」に基づく住まいづくりに、違和感を覚えないというのはむしろ異常です。
住宅業界は無意識の内に変革期を迎えています。

「共通解/一般解」から「個別解」へ

1~2人世帯が全世帯の2/3以上を占めています。
結婚しない若者、シングルマザー、85才の母と62才の息子など、その世帯構成者の姿は従来イメージとは異なり多種多様ですが、この最大ボリュームゾーンの需要も戸建住宅業界はその存在すら気づいておらず取り込めていません。

最近は建築資材が高騰して少し様相は変わってきましたが、長期に亘る超低金利、潤沢な資金供給量という背景はベースとしては変わっておらず、地方では「アパートの家賃で家が建つ」とローコスト住宅が席巻しています。
コロナ禍で都市部のマンションから郊外の戸建住宅への流れもあります。
業績はどこも好調というのが基調ですから、現状のビジネスモデルでなにか問題はあるの?となってします。
足元の地面の下で起こっている静かな地殻変動には鈍感で気づけていません。

多様化した世帯構成人員とその暮らし方の多様性を考えると「共通解/一般解である○LDKで暮らせないことはない」が「最適解ではありません」。
徐々に暮らしと住宅の乖離が進みます。
注文住宅がこの暮らしへの最適解を提供できないままでいると、その存在意義を失います。

●「個々のお客様の暮らしを理解する機能が欠落」している注文住宅事業

住宅というモノを販売する体制が現在の住宅会社/工務店です。
従って、住宅営業部門は、住宅というモノの説明、モノの形を図面化する住宅設計部門、設備部材のモノを選ぶIC(インテリアコーディネーター)とで「造るモノを確定」し、工事部門が建築するという体制です。
問題は、お客様が「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」という機軸に沿って要求を出せているかというとそうなっていないというのが最大の課題です。

お客様に暮らしを触発して、お客様の暮らしを理解し、資金計画や敷地などの制約条件内に概ね整理した情報にまとめる機能が欠落しています。

●お客様の暮らしを理解し「モノづくり部門」へとつなぐ新たな機能が必要

社内でそういう体制を作るのか、社外に持つのかは別にして、「多様化した個々のお客様の暮らしを理解して整理する」機能は次世代の注文住宅事業には不可欠な機能です。
この機能を果たせる人材の育成は、「暮らしとその周辺のコト」に関心があり、ある程度の建築知識(二級建築士レベル)があれば、系統だった教育をすれば育成は可能です。

●「モノからコトへ」の取り組みが住宅業界でも必要

100年、70年に一度の住宅業界の変革は、「モノからコトへ」の具体化を実現するということです。
住宅というモノづくりに現体制は集中し、「どんなモノ(住宅)を作るのか」という「お客様の暮らしと価値観を理解する部門」を新たに設置することで具体的な「モノからコトへ」の住宅事業へ進化することができます。
新たな部門の人件費等は「受注棟数アップ」と「旧来のモノづくり部門」でのプラン変更や契約までの時間圧縮という生産性の向上で十二分に吸収することができ、さらに事業を飛躍的に伸ばすことが可能です。

●次世代の注文住宅事業へ

先手必勝です。
次世代の注文住宅事業の具体化に向けて、先行した企業が市場を席巻すると思います。
お客様はご本人の自覚ないままに個性的な暮らし方になっています。
既にリビング不要、キッチン不要というご家族も出現してきています。
体質改革へ急ぎましょう。

まとめ

100年前の「平和記念東京博覧会」の22棟のモデル住宅の多くは「靴のままの生活」を提案しましたが、「お客様には受け入れられず(現在も)」来場者の多くは窓の外からモデル住宅を覗き見るという不思議な光景が見られたそうです。
100年経って我々はいつの間にかお客様の暮らしからズレた住宅を提示しているのではないか。
そういう視点で見ると変革時期は確実に到来していると思います。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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