「何」を「どのように」説明したら自社住宅の魅力が伝わるのか

住宅営業にとって、自社の住宅特徴やコンセプトをお客様にお伝えすることは最も重要な営業活動です。
しかし、自社の住宅特徴を一生懸命に説明しても、お客様に響かなかったり、嫌がられてしまうこともあります。
そういったお客様は、自社の対象のお客様ではなかったと諦めてしまう住宅営業の方もいらっしゃいますが、本当にそうでしょうか。

集客数が減っている中では、自社の対象では無いと諦めずに、ご来場いただいた全てのお客様に自社の住宅特徴やコンセプトを正しく伝え、追客が可能なお客様を増やす必要があります。

今回はお客様に受け入れていただきやすい自社特徴、自社コンセプトの伝え方について考えてみます。

お客様が受け入れやすい内容とは

お客様の関心事が自社の住宅特徴や自社コンセプトにマッチしていれば受け入れていただけます。
一方で、お客様の関心が無い事柄について説明をしても、お客様には届きません。

ご来場いただいたということは、何らかの関心を持っていただいたということですが、お客様が自社のホームページや発信している情報を全て読み込んでご来場していただいているわけではありません。
自社商品特徴や自社コンセプトの全てに共感してご来場されるお客様はほとんどいないということです。
そうしたお客様に、自社住宅の特徴や自社コンセプトを延々とお聞かせしても、関心をお持ちでない事柄についてはスルーされるか、嫌がられるのは当然です。

お客様が受け入れやすい情報とは、お客様が関心を持っている内容についてか、お客様にとってメリットがある話についてです。
お客様の関心事は、人によって様々です。
どのお客様にも興味をもって自社商品特徴、自社コンセプトを聞いていただくためには、『お客様のメリット』としてお伝えできるかがキーポイントになります。

自社住宅特徴のユーザーメリットとは

ここでユーザーメリットとは何かについて考えていきましょう。

例えば、自社の標準仕様になっているキッチンについて説明するときに、キッチンカウンターの素材や大きさ、キッチン収納の量や取り出しやすさ、食洗器などキッチンの仕様と便利な使い方について説明すれば、ユーザーメリットが伝わったと思っている住宅営業の方がいらっしゃいます。

上記は、自社が採用している最新のキッチンについての商品紹介をしているのであって、住宅のユーザーメリットをお伝えしているわけではありません。
住宅営業がキッチンについてお伝えするときには、キッチンで料理をする際のユーザーメリットとして、このキッチンでは奥様とご主人様が一緒に作ることを想定したキッチンカウンターの広さにしており、料理をする際の動線も冷蔵庫から食材を取り出してシンクで洗い、カットし、火にかける動作が最小になるよう配置していて、二人で作業していても後ろを通れる広さを確保している、など具体的な暮らしのユーザーメリットをお伝えします。
そして、お客様はどのようにキッチンを使いたいのかをお聞きして、実際に使うことを想定して動いていただくと、お客様にメリットを体感していただけますし、ご案内場所で採用しているキッチンで十分なのか、変えた方がいいのか、新居でのキッチンについて具体的な方針が決まります。

具体的な想定家族とそこでの暮らしを伝える

住宅建築の素人であるお客様に、自社特徴や自社コンセプトをお伝えする際には、先述のキッチンの例でのように、具体的な想定家族とそこでどのように暮らしているのかが見えると、お客様に想像していただきやすくなります。

完成住まいの見学会では、実際にお住いになられるお客様のご家族が、どのように暮らされようとしているのかをお伝えし、自社モデル住宅では想定家族と暮らし方を設定します。

自社住宅特徴/自社住宅コンセプトのユーザーメリット

ユーザーメリットはキッチンの事例で出した設備や仕様だけでなく、構造や工法、プランなど全てに必要です。

例えば、構造や工法についても「『安心安全な住宅』に必要な性能として・・・・」という詳細な説明や住宅性能表示やZEHなどの基準を説明するだけでなく、お客様の暮らしにどのようなメリットをもたらすのかをお伝えすることにより、お客様に何故この構造や工法を採用しているのかを分かりやすくお伝え出来ます。

例えば、耐震性について住宅性能表示では耐震等級では3等級とけれど、同じ3等級の住宅と比べて繰り返しの地震に強くなっている。お客様が30代で家を建てられて一生涯の約60年住まわれると、このエリアでは大地震が一回だけでなく、複数回の大地震と余震に合うことも想定されるので、繰り返しの地震でも耐えられるようにしている。
地震の想定や、積雪など地域ごとに異なる『リアルな性能』についてお伝えするのも大切です。

社内の方との協力

住宅営業担当者ひとりでユーザーメリットを考えていても、自社住宅の特徴や自社住宅コンセプトについて全てを網羅することは大変です。
設計段階での考え方や現場の工夫などをユーザーメリットに置き換えるためには、設計や工事の方々の意見をお聞きする必要も出てきます。
住宅営業が設計や現場での創意工夫をお客様のユーザーメリットに変換するインターフェイスとして機能できると、会社全体の力をお客様にお届けすることができます。

まずは、住宅営業担当自身が考えることが大切ですが、ひとりで抱え込まず、上司に相談して社内の方々にもご協力いただき、自社の良さをお客様にお伝えできるようにしていくことも大切です。

まとめ

自社住宅特徴、自社住宅コンセプトをお客様にお伝えし、自社を選んでいただくことは住宅営業の役割です。
ただし、お客様へ一方的に自社住宅特徴や自社住宅コンセプトを説明しても上手く伝わりません。
お客様にお伝えする際には、自社住宅特徴や自社住宅コンセプトがお客様にとってどのようなメリットがあるのかを明確にする必要があります。
住宅の機能や性能について説明していても、一見するとユーザーメリットを説明していると勘違いしてしまうことがありますが、それは説明しているモノの性能や利便性です。
住宅営業がお伝えするユーザーメリットは、お客様の暮らしについてのメリットです。
お客様の暮らしを豊かにする自社住宅特徴、自社住宅コンセプトについてお伝えできれば、住宅営業の強い武器になります。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
企業サポート事業部
取締役事業部長 松尾励朗

関連記事

お客様への提案営業は時代遅れ 多様化する価値観に対応する住宅営業方法

提案営業と言われて早半世紀が経過しましたが、この間にネットが導入され、SNSが進化するなど、情報発信者が「エンドユーザー」へ移った令和の時代に、「提案営業は逆効果」となってしまいました。「提案営業」は情報化社会では「見方 […]

お客様が「迷わない」「選んでくれる」住宅営業活動のポイント

お客様が建築計画を延期、もしくは中止をしてしまう理由の中で『資金不足』は営業が解決できませんが、『土地を決めきれない』、『業者を選べない』、『住まいづくりに疲れてしまった』という原因は住宅営業のしかた次第で解決できます。 […]

お客様と住宅営業のコミュニケーションの取り方

注文住宅営業において「お客様とのコミュニケーション」は「重要な営業スキル」ですが、現状は「会話」に頼ってしまっており、口から出る音声としての「言葉」への偏重傾向がみられます。住宅営業分野に限って言えば、「営業が伝えたいこ […]

新着記事

【2025/2026年 注文住宅事業の進め方】「暮らし視点」で受注力・商品力・人材力を進化させる

少子化・人口減少・金利上昇・物価上昇と、注文住宅業界を取り巻く経営環境は今、大きな構造変化の渦中にあります。しかし、すべてがマイナスに振れているわけではありません。むしろ多様化・個別化が進み、「自分らしい暮らし」「人生の […]

【住宅展示場の来場者数推移から見る集客対策】集客数減少 → 受注棟数減少の解決方法

近年、住宅業界を取り巻く環境は、お客様のSNS、ネットからの情報収集が一段と進み、いつのまにか、集客数もさることながら、来場段階でのお客様の考え方も大きく変化しています。特に総合住宅展示場の来場者数推移に注目すると、来場 […]

【2025年住宅市場】新しい「中級住宅」の定義と現状認識

かつては、多くの家庭が手の届く価格で、ある程度の性能やデザイン性、暮らしやすさを兼ね備えた「ちょうどいい住宅」として捉えられていた中級住宅ですが、今はその基準が崩れつつあります。 経済状況の変化、ライフスタイルの多様化、 […]

【2025年住宅市場】60歳代に目を向ける注文住宅事業

現在の新築住宅市場において、中心となる顧客層は30〜40歳代のファミリー層です。特に35歳前後の世帯が主なターゲットとなっており、結婚し、子育てを始めるタイミングで住宅を取得するケースが一般的です。しかしながら、日本の人 […]

住宅事業の集客革新!|令和の集客方法を、考え方から新しいアイデア、イベント活用事例まで徹底解説

住宅業界の集客において、従来の手法では限界が見え始めています。多くの住宅会社や工務店が住宅性能や間取りを中心に訴求していますが、お客様にとってはどれも似たように映りがちです。これからの住宅事業での集客では、新しいアイデア […]

【2025年住宅市場】城南地区から横浜/湘南方面エリアで住宅事業成功を掴むには

現代の住宅市場においては、単なる「住むための家」ではなく、「心豊かな暮らし」を実現する住まいが求められています。特に、東京の城南地区(品川区・目黒区・大田区・世田谷区・渋谷区・港区)から横浜/湘南方面にかけてのエリアでは […]