新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-②

新築事業の勢いが無くなり減速していく中、これをカバーして余りある事業としての新築同等以上のフルリフォーム事業分野を開発し事業として確立することは、今後の住宅事業戦略で重要です。従来のリフォームのような小規模な案件が多い、一般的なリフォーム事業ではなく、新築するのと同等か、それ以上のメリットをお客様に提供する「フルリフォーム事業」成功のポイントを考えてみましょう。

上記のグラフのように、既存住宅の空き家戸数は、今後さらに増加することが予想されています。新築着工戸数の減少トレンドは、今後40年以上に亘って進行することは確定していますが、一方で、この増加する空き家を活用するフルリフォームビジネスとして、住宅1棟丸ごと「フルリフォーム」する価値がある、腐朽/破損がない住宅は、2043年の予測値として、現在の2.6倍、全空き家戸数の82%、752万戸にまで、増え続けます。
752万戸という数字は、現在の年間持家着工数の約10倍に当たります。
ビジネスチャンスとしては、十分環境が整って来たと言えるでしょう。

フルリフォーム客層の集客策

フルリフォーム客層は、大きく2層に分かれます。若いころに新築した、ご自身の住宅をフルリフォームされる方と、
何らかの事由で中古住宅(両親からの継承、中古住宅購入等)を手に入れた方という2層です。

・CASE-1 ex.35才の時に新築され、65才で定年を迎えた方などのお客様層のフルリフォーム
・CASE-2 ex.20才代前半から40才台までを中心とした、中古住宅入手もしくは入手予定者のお客様層のフルリフォーム

CASE-1 ex.35才の時に新築され、65才で定年を迎えた方などの集客の考え方

この2つの階層の内、まず、CASE-1年配者の住まいづくりに対する、お考えの根底にあるのは「老い先短い」し、何となく「先行き不安」だから、という「人生も最終盤で、ある意味、終った人生」という「老後の暮らしに対する概念」、「漠とした人生後半の暮らし」イメージの固定観に支配されています。この状態のお客様のリフォームは、必要最小限の部分を簡単にリフォームして、暮せればよいという発想ですから、リフォームの範囲は、「より狭く、そして、より安く」がメインテーマです。子世帯が同居する場合などでは、「子世帯のために」と、資金的には、やや前向きになりますが、ご自身のこれからの暮らしについては、底流のお考えは似たようなものです。
基本的に、「後ろ向き」で「節約志向」です。このままでは、フルリフォームには遠く及びません。

前掲のコラム「新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-①」に記した通り、60才以上の方々が様々なスタイルで人生を楽しまれている姿を、画像や動画を活用して「こころ豊かな暮らしの魅える化」することが先ず必須です。「概念的な老後の暮らし」イメージからの切換と、楽しい暮らしへの気づきを与える触発が中心の集客策になります。
また、「人生100年時代」を、現実的な、我がこととして考えていただくには、例えば、65才なら、まだ35年間も人生を楽しむ時間が十分にあることに先ず気づいていただき、この時間を十分に楽しむためにという考え方を持っていただくことです。老化により、若いころに比べて血管がもろくなって、心臓や脳血管に障害が起こらないような、快適温度環境の確保や、多発する地震災害時も、避難所暮らしなどをせずに済む、繰り返す地震にも強い、耐震/制震性能を十分に持たすことで、より長く健康で、長生きして人生を楽しむという視点を持っていただくこともポイントの一つです。
「心身ともに健康で、人生を楽しめる健康寿命」が、「生物としての寿命」よりも、8年間も短いというデータも提示され始めています。心身ともに活動的で前向きな気持ちを生み出すのも、安全安心で快適な住環境です。「老後の暮らしへの投資」が、最も投資効率が高い分野であることに、気づいていただく、触発マーケティングが重要です。
CASE-1のフルリフォーム客層の集客策の考え方では、ここがポイントです。

CASE-2 ex.20才代前半から40才台までを中心とした、中古住宅のフルリフォーム集客の考え方

CASE-2の若いお客様層の場合は、基本的に新築客層と同じです。その客層の中でも、両親もしくは、一世代飛ばして、祖父母から土地建物を継承した場合は、フルリフォームの建築資金的には、有利になりますし、一般的には、土地(街中から遠い)から求める新築の場合と異なり、周辺の生活インフラも成熟しており、より便利なエリアでの暮らしも実現できます。
継承したか、購入した「中古住宅」から見える、旧来の暮らしではなく、「この住宅を利用して、お客様が、実現したい暮らしの魅える化」が重要です。CASE-2のフルリフォーム客層の集客策の考え方は、ここがポイントです。

集客の場としての住宅は必須

従来のリフォーム営業は、「お客様の予算、リフォーム箇所」などの要求に対して対応する(悪く言えば、言いなり営業)のが、基本でした。これを打破して、新築同等以上のフルリフォーム需要をキャッチアップするには、集客策の受け皿として「ご自身が暮らすという視点」で、「こころ豊かな暮らしを触発でき、気づいていただける場」が必須です。

1 フルリフォームの完成住まいの見学会
2 フルリフォームのモデル住宅

見学会は、原則的にフルリフォームの完成現場が必要ですが、モデル住宅の場合は、新築モデル住宅でも、運用の仕方、やりようによっては、フルリフォーム客の集客の場として、活用可能です。何れにしも、お客様が、ご自身のこれからの暮らしに気づくために、体感体験できる住宅は、集客の場として必要条件です。

年代層別広告媒体の選択

60才以上の年代層は、基本的に、紙媒体の広告を観られています。とは言ってもYoutubeは、TVモニター中心にご覧になられていますし、「増改築」等のキーワード検索も、Googleなどを利用されて検索もされていますので、そうしたネット系の広告も有効です。Meta系のFacebookのご利用も、ある程度されていますが、InstagramやTicTokの活用は、ほとんど進んでいない年代です。動画などで暮らしを触発する場合は、紙媒体にQRコードで動画へ誘導するなどの「ひと手間」かけていただいて、見ていただくことになりますので、視聴率は下がりますが、ある程度の効果は期待できます。

60才未満の年代層には、Google系、Meta系どちらのネット/SNS広告も年令が、下れば下がるほど有効です。利用端末も、PCから、スマホやタブレットが中心になっています。

動画広告の作り方

画像で暮らしが魅える広告も有効ですが、動画の方が、こころ豊かな暮らしの魅力を伝えやすいという面があります。動画の撮影の準備には、先ず、大まかなシーンごとのシナリオを、作成します。出演者は年代層に応じた自社社員の方々や、そのご家族に、モデルになっていただいて、年代層ごとの、暮らしの楽しい場面を、スマホを用いて動画を撮影します。編集には、フリーの編集ソフト、音楽もフリーの音楽素材を活用すれば、簡単に低予算で、十分に質の高い「楽しい暮らしの魅力を伝える広告」を制作できます。広告代理店を経ずに、媒体へ直接広告出稿でき、効果測定に必要なデータも、詳細に入手できますので、自社で広告戦略を組み立てることも可能です。

広告のエリア戦略

完成住まいの現場見学会で、その住宅エリアが、仮に30年前に開発された住宅地であれば、概ね55才~70才位の年齢層が、主体ですからその年代層を想定した、「これからの楽しい暮らしが魅える内容」の広告として、半径1km圏を中心に、戸建住宅へのポスティングを行い集客します。
「マーケットin」の集客量は少ないのですが、「受注に直結する質の高いお客様」を集客できるニュータイプの集客手法です。
フルリフォーム「モデル住宅」での集客は、比較的広域(1~5km圏)での集客は可能ですが、フルリフォーム「完成住まいの見学会」の場合は、徒歩圏内が商圏です。お客様特性が、同年代層で、新築時期が5年程度のバラツキ程度の客層が、まとまって住んでいる住宅地である場合には、「マーケットin」手法で、暮らしを魅せて触発する集客広告は有効です。

まとめ

新築同等か、それ以上の暮らしを実現するフルリフォームは、現役を退かれてからの時間を、一生の中で最も自由で、好きなことができる時期と捉えた視点で、お客様に向き合うことで、お客様のその時点からの生涯の暮らしにとって、最適の住いを創り上げていきます。また、若いお客様には、物価上昇が続く中で、土地価格も上昇し、街中から離れたエリアで、土地を求めて、新築を目指すよりも合理的で、よりこころ豊かな暮らしが実現できることをご理解いただきます。特に若いお客様には、可能な範囲での、外観デザインの創出や、実現したい暮らしに気づいていただきプラン空間をはじめ、インテリアコーディネート、仕様設備部材を選定し、温熱環境/耐震性能などの住宅性能も、最大級引き上げることで得られる暮らしをご理解いただきます。もちろん、収納、動線などの暮らしやすさ、なども、お客様の暮らしを中心に置いて住まいづくりを進めます。

プロがとかく陥りやすい、撤去出来ない柱などの、出来ない理由、制約事由視点というマイナス要因ばかりに目を向けるのではなく、異なるアプローチも含めて、どうすれば、お客様が気づかれた、こころ豊かな暮らしが実現できるのかという、プラス要因で考えることもフルリフォーム事業を成功させるためには必須です。

このように、従来のリフォームとは全く異なる、新築同等かそれ以上の暮らしを実現するフルリフォームを受注するためには、集客段階、営業段階共に「暮らし視点」と「顧客心理」という全く新しい視点に基づく手法を導入する必要があります。

新築事業も手法を進化させれば、その分野での業績を確保することはできますが、今後は、大きく成長させることは難しく、新たな事業分野への進出が必要です。現在、新築事業を進めておられるのであれば、人的資源も充分にあるはずですから、フルリフォーム事業の担当チームを編成し、適切な教育訓練をすれば、大きく成長可能な未開拓分野として、フルリフォーム事業を成功させることができます。是非、ご検討ください。
先ずは、お気軽にご相談ください。

株式会社ハウジングラボ
代表取締役 一級建築士 松尾俊朗

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