新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-①

新築住宅は、人口減少、出生率の低下で、少なくともこの先40年は、確実に需要が減少します。
一方で、住宅ストック戸数は増加をし続けており、リフォーム需要は、インフレが継続する昨今の経済環境も含めて成長が期待されています。特に注目したいのは、フルリフォーム/リノベーションという、新築と変わらない最新レベルの暮らしが手に入る、新築同等以上大型リフォーム市場です。新築に近いフルリフォームは受注したいものですが、リフォーム需要のほとんどは、小規模案件で、従来のやり方では、成功しないこともハッキリしています。そこで、新築同等以上のフルリフォームを成功させるポイントについて考えてみましょう。

フルリフォーム市場のメイン客層をキャッチアップするために

フルリフォームのメイン客層を考えてみましょう。

いくつかのタイプに分かれますが、最も可能性の高い年代層は、30才前後に新築をし、子供も成人、そして自身の現役引退後の暮らしも気になってきた世代です。大きく捉えれば60才台ですが、分かりやすく65才と仮に設定して考えましょう。

この方の住宅は、既に築35年を経過し、傷んでいますから、建替かリフォームかと悩むような世代です。
収入面では、現役から減少はするけれども、多少収入も(もちろん年金収入も)あり、貯蓄もそれなりに、あることはあるが、先のことを考えるとあまり住宅に資金は使いたくないという世代です。この年代のお客様に、直接お話をお聴きすると、「先行き短いし、子供たちも巣立ったから、建替えるにしても小さな2人暮らし用の平屋か、出来れば建替えずに最小限のリフォームで済ませたい」というのが、一般的な反応です。従ってこのまま、お客様のおっしゃる通りに進めると、建替/新築でも「24坪で1000万円程度に納めたい」とか、リフォームの場合は、「500万円以下が希望」ということになってしまうというのが従来のリフォーム対応です。「言いなりに受注」すること、つまり、お客様の「老後という漠とした概念」に従ってのリフォームではなく、フルリフォームを受注するためには、今から先の「新しい暮らし」の「時間の長さ」と「その時間を楽しむための住いづくり」に気づいていただいくことがポイントになります。

【ポイント1】 65才からの生涯時間の多さに気づいていただく

65才の男性の平均余命は、あと約20年、女性は、約24年です。あくまでも平均です。「人生100年時代」と言われる、昨今そう簡単に寿命は尽きそうにない時代に入ってきました。


そうは言っても、65才男性が仮に、平均余命の85才で寿命が尽きたとして、65才からの20年間の自由時間の長さを、生涯総労働時間と比較してみましょう。
新卒22才から65才定年まで働いた総労働時間(通勤時間/休憩時間除く、残業時間含む)は、約102,000時間です。

65才男性が、平均余命の85才まで、20年間の暮らしを楽しめるのですが、その期間の総自由時間(睡眠時間/家事時間等の生きるために必要な時間除く)は、約102,000時間で、「新卒から現役引退までの総労働時間」と「同じ長さの自由時間を持てる」ことになります(14時間/日の自由時間を保有)。

先ず、引退後の自由時間の多さに気づいていただくことが一つ目のポイントです。
決して老い先短くはなく、人生を楽しめる時間を十分にお持ちだということです。

【ポイント2】65才からの楽しい暮らしに気づいていただく

65才の男性の、平均余命までの20年間の自由時間の長さに気づいていただいても、「何をしたらよいか分からない」、どうせ老後だから、「老人会に入る?」「TVの番人になる?」という程度しか思いつかないというのが、一般的な老後の生活イメージで、あまり楽しそうではない暮らしだろうなという、「概念」しか持ち合わせていないのが「普通」の65才です。

そこで、「楽しい暮らし」、「ワクワクする暮らし」に気づいていただく必要がありますが、「何がしたいですか」など「質問」しても、引退後の楽しい日常生活など想像したことすらない人にとっては、答えることはできませんから「愚問」です。むしろ、逆効果にもつながりかねません。

「パッと見て分かる楽しい暮らし」を、「ビジュアルでお見せする」という「触発」が必要です。

お客様は「老後」という概念に縛られていて、現役を退いてから「自由な時間を十分に持てる」のだという発想と、これからの暮らしを、もっと楽しもうという切り替えができません。むしろ自身が衰えていく時間を過ごすのが残りの人生だという、「老後の概念的な負のイメージ」に引きずられています。従って「バリアフリー」「手摺」「寝たきりになったら困るからと平屋」という減築要求や、「寝室だけ一階にあれば、なんとかなる」から、小さくても良いから出来だけ、住宅には「費用を掛けたくない」という「マイナス発想」の要求しか出て来ません。

その発想に従ってしまうと、小規模リフォームか、小さな建替住宅というように、ビジネス的にも、マイナス方向に動いてしまうことはもちろん、お客様の人生で、最高に楽しめる時間を、無駄にしてしまいかねません。
65才からの住いづくりを「消費」として捉えて、これを抑える視点で進めるのか、自身の健康とこころ豊かな人生への「投資」という視点に気づいて、明るい未来の住いづくりへ進むという「発想の切換」ができるかが、大きな分かれ道です。

日本の個人金融資産の総額は約2200兆円で、その6割は60才以上が保有しています。ご自身の暮らしへの投資に気づいていただくことが二つ目のポイントです。

こころ豊かな暮らしの「魅える化」》

【ポイント3~5】「人生100年時代」は現実の話

50才台から上の年齢層のお客様と、お話をする場合に注意したいのは、「そうは言っても、若い時代の住いづくりに比べて先行きは短い」という発想が邪魔をします。確かに30才で家を建てて、65才を迎えるまでには35年間という時間が経過しています。平均余命では「あと20年位」と、お客様は頭で計算してしまいます。

毎年健康診断をちゃんと受けて、病気が見つかっても、健康保険適用内でも適切な治療を受け、肺炎ブドウ球菌他の高齢者が接種すべき予防接種もし、当たり前のことですが、生活習慣病にならないように、運動と食事に、ある程度以上の注意を払えば、普通に100才くらいまで寿命を延ばせる時代になってきたということです。

【ポイント3】

「人生100年」が現実味を増してきている中、30才で家を建ててから、65才までの「35年間」と同じ、これから先、100才までの「35年間」という時間を、65才からの住まいづくりでは考える必要があります。もし、「100才まで生きてしまったとしたら」という現実的な時間軸で考える65才からの住まいづくりの触発で、この先、最大35年間という時間に気づいていただくことが、3つ目のポイントです。

【ポイント4】

この35年間という十分にある持ち時間を、ただ生きているだけの「生命の寿命」とするのではなく、自分の思うことを実現できる「健康寿命」とすることができる住宅は、十分な安全性(耐震/制震性能)と快適性(健康維持のための温熱環境性能)を「高レベルで実現」し、この2つの高性能を35年間に亘って劣化を最小限に抑える(耐久性能)の3つの「高性能化」は、必須です。
南海トラフなどの巨大地震が予測されている昨今、高い耐震/制震性能は、地震発生時の安全を確保するだけではなく、長期に亘って、性能劣化の少ない住まいを造ることは、必須条件です。繰り返す強い地震にも強く、避難所での生活を回避して、感染症などの災害関連の疾病を避けるためにも必須です。高い温熱環境性能は、僅かな自然エネルギーで快適温度環境も維持できるという高齢者の災害サバイバル時の日常生活の質の維持には必要不可欠な性能です。
「人生100年」が仮に不慮事故や、思いがけない疾病で実現できなかったとしても、仮にご主人が平均余命の85才で寿命が尽きたとしても、奥様は、ご主人様より、5年平均余命は長いですし、住宅の性能寿命は、それよりさらに長く、リノベーション時から十分な期間、性能維持はできるでしょう。奥様にとって、安心快適に、人生を楽しむことができます。
ちょうどそうした時期は、子世代から孫世代の現役時代の交代期でもあり、子世代、孫世代の何れかが、リノベーションした住まいに、住み続けることも可能ですし、例え、その住宅を売却する事態になったとしても有利に働くことでしょう。多世代に亘って受け継ぐことができる住まいは、SDGsの視点で見ても、高齢世代だけにとどまらず「受け継ぐことができる住まい」として、世代を越えて価値を持つ住まいづくりでもあります。これが4つ目のポイントです。

【ポイント5】

暮らしを楽しむということを前提に考えれば、「生命としての寿命100才」≒「健康寿命100才」としなければ、人生を最後まで全うし、楽しめたとは言えません。65歳以上の高齢者の過ごす時間の、約9割は住居内です。
30才で住宅を新築して以降、現役時代、リノベーション後、人生を終えるまで(平均余命85才であっても)の生涯総時間の約7割を住宅内で人は過ごしています。

高齢者が、心臓疾患や脳血管系の疾患を患わないためには、「高いレベルの温熱環境」はもちろん必須です。この高いレベルの温熱環境性能は幼い子どもたちにも、働き盛りの年代にも必要ですが、高齢になって夏涼しく、冬暖かい暮らしは、体だけではなく、気持ちも前向きになり、こころ豊かな暮らしを満喫できることにもつながります。
現実的には最大「100年の有限時間」が、人生ですから、この人生をこころ豊かに過ごすことこそ、人生の満足度と価値を高めます。人生という時間の大半を過ごす「器としての住まい」への投資が、最も効果的で「価値ある投資」という考え方に気づいていただくことが五つ目のポイントです。

集客(マーケティング)と営業のアップデートが不可欠 【ポイント6~7】

【ポイント6】

65才からの住まいづくりだからこそ、「人生を楽しむための住まいづくり」に気づいていただく集客(マーケティング)手法へ、まず、我々が視点を切り替える必要があり、これが6つ目のポイントです(フルリフォーム受注を成功させる前提条件)。

【ポイント7】

次に営業手法についても「お客様の要求に従う」という、従来の考え方を切り替えて、如何に個々のお客様の、これからの楽しい暮らしを触発しイメージしていただいて、ご自身が実現したい暮らしに気づき共感を得られるかという営業手法へ切り替える必要があります。これが7つ目のポイントです。

「住まいへの投資」という視点を個々のお客様に持っていただくことが、フルリフォーム営業手法の重要な考え方ですが、最初から「住まいへの投資」を考えておられる方は皆無と言ってよいでしょう。むしろ真逆で、費用を掛けずに、簡単に済ませたいというのが、お客様の本音だと思います。フルリフォームという新築に匹敵、あるいは、それを超えるような内容のフルリフォームを「買いに来るお客様」は皆無です。

そこで従来とは異なる適切な「顧客心理」に基づくマーケティング手法を用いて、新たな視点のフルリフォームに関心を持っていただき「行ってみたいという」触発力を持った集客手法を用います。それと対となって、必要になってくるのが、個々のお客様が「自ら実現したい暮らしに気づく」営業手法です。来場時に「こんな暮らしがしたい」という考え方を述べられる方も、皆無です。「暮らし視点」の新たな営業手法の導入も不可欠です。

「顧客心理」に基づくマーケティング集客手法と「暮らし視点」の気づき共感営業という2本柱で、フルリフォームの受注を成功させましょう。
詳しくは、次回のコラム「新築同等以上のフルリフォーム事業成功のポイント-①」で、説明します。

まとめ

30才で新築住宅を建てられてから、生涯に亘って最長70年間を過ごす住宅です。しかも、新築されてから生涯時間の7割、60歳以上の期間に限れば、9割の時間を過ごす住宅です。そこで暮らす方々の「暮らしの器としての住宅」は、家族の成長と変化にリンクし、住まわれる方々の価値観に基づいた進化を必要としています。

木造住宅の場合、新築時から折り返し点の、築35年前後で、建物というハード面も、新築当時の建築技術を考えると大幅に手を入れないと、その先の人生に求められる高いレベルの耐震/制震性能、温熱環境性能、さらに、その性能が落ちにくくするなど建替に匹敵するか、それ以上のハード面のアップデートのためにも、フルリフォームイが必要になります。また、そこから先のライフステージを楽しみ、こころ豊か暮らすためには、間取りや採光、収納の工夫などのソフト面も、年に数度しかないかもしれませんが、子や孫たちが集まるシーンなども想定して、進化させる必要があります。もちろん、愛着のある既存住宅の利用可能な部分は、十分に活用してコストも抑えるようにすることも大切です。

今後発展が期待できるが、従来発想や手法では、成功し難い「フルリフォーム需要」を確実に受注するための最新ノウハウをハウジングラボは、このコラムの7つのポイントの具体策も含めて、ご提供しています。

結果として、今後とも継続的に発展できる企業体質への転換を図っていただけるよう、新築住宅需要が、長期減少に向かう時代の流れの中で、戸建住宅の「フルリフォーム(新築と同等かそれ以上の価値を持つリフォーム)市場」の開拓と合わせて、住宅系とは全く異なる新たな「非住宅木造建築市場」の開拓という未開拓市場も魅力的です。一方でこの2つの新しい市場は、「既存技術で簡単に参入できた気分になれる」ことから、「何となく始めたが上手くいかない」と気づかれている会社が多いのも、2つの市場の特徴です。

これからは、戸建注文住宅市場をベースに、下記の3つの異なる市場で成功することが、求められる時代へ急速に向かっていくと思います。

企業規模によっては、一挙に3市場を攻略するという会社、先ずは「戸建注文住宅市場」(別項参照)を新たな手法で再構築するという会社、或いは、今後新築住宅より成長が見込める「既存住宅のフルリフォーム市場」(別項参照)への参入を目指す会社、1件当たりの金額が大きな「非住宅木造建築市場」への参入など、各社の戦略、企業体制、体質によってお考え下さい。

1、戸建注文住宅市場
2、新築同等以上の大型リフォーム市場
3、非住宅木造建築市場

この3つの市場で、各社様に適したサポートをハウジングラボでは、実行しています。

結果として、今後とも継続的に発展していく企業体への転換を図っていただけるよう、住宅事業を新築とフルリフォーム、さらに非住宅木造建築の3分野でサポートしています。
先ずは、お気軽に、お問い合わせ、ご相談ください。

株式会社ハウジングラボ
代表取締役 一級建築士 松尾俊朗

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