注文住宅のネット販売は可能か

電気自動車BEVでテスラがネット販売に転じてから、自動車業界ではネット販売を徐々に具現化しています。
住宅業界では、住宅というモノ販売のローコスト住宅においてはある程度可能だということは見通せるでしょう。

モノからコトへというものは、時代の流れでは「こういうコトがしたいからこう住宅というモノを創ってほしい」というのが本来の注文住宅事業だと思います。
「だから無理?」いいえ、そんなことはありません。

「モノからコトへ」を大切にする注文住宅だからこそ、オンライン活用によって1カ所で自社テリトリー内へ、あるいはやり方によっては全国へ向けたネット販売対応は可能です。

「モノからコトへ」はネットだからこそ実現可能

住宅営業の仕事は何か、と考えると、住宅というモノを販売することです。
これに対して、注文住宅はモノからコトへという発想で「お客様の実現したい暮らしというコトを理解」して「モノへ変換する作業」が住宅営業の「前工程として必要」になるということです。

この前工程は、一般的な住宅営業の教育の中には含まれていません。
「暮らしコーディネート」とでも名付けましょうか、そういう「お客様の価値観を理解して、実現したい暮らしというコトを共有化できる」前工程をオンラインで行います。

1時間×3回のオンラインでコトを共有化

欧米ではインテリアデザイナーの上位者などが、この種の職種に相当します。
この下に建築家、狭い意味でのICなどがついて「注文住宅」を実現していくわけです。
かなり高級層になりますが、そういう体制が存在しています。

日本では、注文住宅の大衆化が浸透していますが、そのような贅沢な体制は存在していません。
だからこそ、「有能な人材を1カ所から効率良くオンラインで使う」という発想が最適ということになってきます。

既に実験的に進めていますが、「暮らしコーディネーター」が1時間×3回(1週間間隔)の対応で、事実上「実現したいコトから住宅というモノへ」と契約意思決定いただくことが可能になっています。

●暮らしコーディネーターの育成

「暮らしコーディネーター」の仕事を一言でいえば、「お客様の価値観の理解者」であり「暮らしへと落とし込んで住宅のカタチをお客様と共有化」する仕事です。

本来の初期コンタクトの注文住宅営業から基本設計までを概ねまとめ上げるという能力が求められます。
「精神科医のように聴いて(価値観理解)、歌って(暮らし視点の営業)踊れる(住宅設計)、お客様への包容力のあるオールラウンドプレーヤー」です。

1名で年間3ケタの受注棟数を稼げるという信じがたい仕組みができます。

暮らしコーディネーターの育成には、「資質と暮らし視点の保有、1級建築士という肩書、本人の意欲」という4拍子揃っていることが必要です。
ほんの数名の育成で良いのですが。

●分業化がポイント

「暮らしコーディネーター」機能を最大3つに分けることは可能です。

1)精神科医のように聴いてお客様の価値観理解する。
2)暮らし視点の住宅営業で、モデル住宅で気づき共感営業で住宅の方向性を共有化。
3)住宅の基本設計へ落とし込んで「実現したい暮らしのコトからモノへ」を実現する。

3つに分けるか、この内2つができる人がいれば、2つに分けることで組織対応可能です。

●オンラインで表情は読み取れる

コロナ禍の様な事態が起こっても、Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールを使えば、マスクなしでお客様の表情はアップで読み取れます。

コミュニケーションの80~90%は目からの情報ですから、1人1画面のオンラインは有効です。

お客様の価値観を理解するためには、特にこちらかの暮らし触発の提示などの瞬間の微表情の変化がお客様の無意識の本音です。
こうしたことは、案外オンラインの方が有利な場合が多くあります。
もちろん住空間や収納の使い勝手、動線の楽さ加減などは「体感体験」しないと伝わらないことが多くあります。

「暮らしコーディネーター」は、「お客様の価値観掌握と暮らしインタビューでのお客様の暮らし視点の実現したいコトをお客様に自らに気づいてもらうこと」、そして、「その暮らし視点の実現したいコトという視点でモデル住宅を観るポイントを絞って体感体験していただきます」、「お客様がモデル住宅での体感体験を通じて改めて気づき、共感したことを整理して住宅のプランへ落とし込みます」、「お客様の実現したかった暮らしが実現できましたという暮らし視点のプレゼンテーション」で事実上この会社でこの家を建てようという決心に到達できます。

こうしたことを実現するための暮らしコーディネーターの重要なスキルは、「表情を読み取るコミュニケーション力」と「お客様に体感体験していただくポイントを納得していただいて絞り込むコントロール力」です。

●「営業職を進化させるという選択肢」もある

「暮らしコーディネーター」を分業化できるとするなら、1/3~2/3の仕事を現状の注文住宅営業へその機能を付加するという選択肢もあります。
何もオンラインという手段を使わなくても、現状のインフラの強化という視点も有効でしょう。

「暮らしコーディネーター」のレベルを上げて行くと、「魅力ある付加価値」をお客様が「魅力と感じて対価を払う」という着工棟数が漸減する住宅市場の中にあって有効な手段ともいえます。

現有の住宅営業というインフラを機能強化して活かすか、暮らしコーディネーターという人材を鍛えて少数の高度なスキルをオンラインで活かすのか検討する必要があります。

まとめ

「注文住宅」のオンライン販売は可能です。
「初期接触から基本設計の合意」までという受注に重要なポイントはオンライン化可能です。
官公庁、金融機関の手続きや建設というリアルなことは現地での対応です。

冒頭で触れた1か所で全国へネット販売可能な注文住宅事業を展開する場合は、ネットで「見込客開発/受注活動/基本設計(役立ち高に応じてフィーを分配)」までを1カ所で対応し、あとは、各地域の優良住宅会社とネットワークを組んで対応するということで全国でも理屈上は実現できます。
そういうエリアを超えた住宅会社同士の協働を模索する時代でもあります。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

関連記事

ネットがあれば、全国どこでも住宅を受注できる

全国には良い住宅を建築できる優良な住宅会社/ビルダーは多くあります。一方そうした住宅会社/ビルダーの多くは「お客様を中心に考える暮らし視点の住いづくり」という最新の住まいづくりを苦手とされており、優れた住宅ハードを建築で […]

新着記事

【住宅営業が持つべき視点】変化し続けるお客様の暮らしを見つめる視点

住宅営業やお客様ご自身も気づかないうちに、家族関係・夫婦関係・親子関係などの家族とのつながり方やリビングダイニング・それぞれの部屋での過ごし方が従来とは変化ししています。こうした変化に対応してこそ、お客様中心の住宅営業と […]

「何でもできます」「自由設計ですから」では「何も売れない」

「注文住宅」という言葉は、ある意味で誤解されたまま世に広まっています。お客様は、「自分が思うとおりに家を建てられる」と思われている部分があり、住宅会社・工務店も「自由設計ですから」と、お客様のご要望のままに設計・施工され […]

中高級住宅は、お客様中心の「時間の質」向上ビジネスへ

お客様にとっては、数ある住宅会社の住宅展示場や完成住まいの見学会に参加しても、従来通りの営業対応ではローコスト系の住宅と「価格の割には大差がない」ように伝わってしまっています。価格の割には大差がなく伝わってしまう原因と中 […]

「不満の解消」と「満足の向上」は似て非なるもの

日本は少子高齢化が進み、人口は急激に減少しています。つまり、住宅建築適齢期の人口も減少しているということです。さらに、空き家率の過去最高の更新や持ち家・賃貸住宅(ともに戸建て住宅・マンション)、リノベーション・リフォーム […]

住宅営業のご夫婦への対応のポイント

ご主人様が主導し、奥様は夫の意思に沿う夫婦関係は、現在は減少傾向にあります。家族や夫婦関係の在り方や家事・育児などの行動も変化しており、ご夫婦関係を見極めずに、従来の「ご主人様が家庭内権力者」として対応していると、ご夫婦 […]

受注のコツはスピード感

住宅営業が受注を獲得するためにはスピード感が大変重要です。住宅営業活動上のスピード感とはどういうことを指すのでしょうか。自社住宅の特長をお客様にご理解いただいて受注に向かう上で必要な、住宅営業の「スピード感」について考え […]