注文住宅のネット販売は可能か
2022/02/06
電気自動車BEVでテスラがネット販売に転じてから、自動車業界ではネット販売を徐々に具現化しています。
住宅業界では、住宅というモノ販売のローコスト住宅においてはある程度可能だということは見通せるでしょう。
モノからコトへというものは、時代の流れでは「こういうコトがしたいからこう住宅というモノを創ってほしい」というのが本来の注文住宅事業だと思います。
「だから無理?」いいえ、そんなことはありません。
「モノからコトへ」を大切にする注文住宅だからこそ、オンライン活用によって1カ所で自社テリトリー内へ、あるいはやり方によっては全国へ向けたネット販売対応は可能です。
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「モノからコトへ」はネットだからこそ実現可能
住宅営業の仕事は何か、と考えると、住宅というモノを販売することです。
これに対して、注文住宅はモノからコトへという発想で「お客様の実現したい暮らしというコトを理解」して「モノへ変換する作業」が住宅営業の「前工程として必要」になるということです。
この前工程は、一般的な住宅営業の教育の中には含まれていません。
「暮らしコーディネート」とでも名付けましょうか、そういう「お客様の価値観を理解して、実現したい暮らしというコトを共有化できる」前工程をオンラインで行います。
1時間×3回のオンラインでコトを共有化
欧米ではインテリアデザイナーの上位者などが、この種の職種に相当します。
この下に建築家、狭い意味でのICなどがついて「注文住宅」を実現していくわけです。
かなり高級層になりますが、そういう体制が存在しています。
日本では、注文住宅の大衆化が浸透していますが、そのような贅沢な体制は存在していません。
だからこそ、「有能な人材を1カ所から効率良くオンラインで使う」という発想が最適ということになってきます。
既に実験的に進めていますが、「暮らしコーディネーター」が1時間×3回(1週間間隔)の対応で、事実上「実現したいコトから住宅というモノへ」と契約意思決定いただくことが可能になっています。
●暮らしコーディネーターの育成
「暮らしコーディネーター」の仕事を一言でいえば、「お客様の価値観の理解者」であり「暮らしへと落とし込んで住宅のカタチをお客様と共有化」する仕事です。
本来の初期コンタクトの注文住宅営業から基本設計までを概ねまとめ上げるという能力が求められます。
「精神科医のように聴いて(価値観理解)、歌って(暮らし視点の営業)踊れる(住宅設計)、お客様への包容力のあるオールラウンドプレーヤー」です。
1名で年間3ケタの受注棟数を稼げるという信じがたい仕組みができます。
暮らしコーディネーターの育成には、「資質と暮らし視点の保有、1級建築士という肩書、本人の意欲」という4拍子揃っていることが必要です。
ほんの数名の育成で良いのですが。
●分業化がポイント
「暮らしコーディネーター」機能を最大3つに分けることは可能です。
1)精神科医のように聴いてお客様の価値観理解する。
2)暮らし視点の住宅営業で、モデル住宅で気づき共感営業で住宅の方向性を共有化。
3)住宅の基本設計へ落とし込んで「実現したい暮らしのコトからモノへ」を実現する。
3つに分けるか、この内2つができる人がいれば、2つに分けることで組織対応可能です。
●オンラインで表情は読み取れる
コロナ禍の様な事態が起こっても、Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールを使えば、マスクなしでお客様の表情はアップで読み取れます。
コミュニケーションの80~90%は目からの情報ですから、1人1画面のオンラインは有効です。
お客様の価値観を理解するためには、特にこちらかの暮らし触発の提示などの瞬間の微表情の変化がお客様の無意識の本音です。
こうしたことは、案外オンラインの方が有利な場合が多くあります。
もちろん住空間や収納の使い勝手、動線の楽さ加減などは「体感体験」しないと伝わらないことが多くあります。
「暮らしコーディネーター」は、「お客様の価値観掌握と暮らしインタビューでのお客様の暮らし視点の実現したいコトをお客様に自らに気づいてもらうこと」、そして、「その暮らし視点の実現したいコトという視点でモデル住宅を観るポイントを絞って体感体験していただきます」、「お客様がモデル住宅での体感体験を通じて改めて気づき、共感したことを整理して住宅のプランへ落とし込みます」、「お客様の実現したかった暮らしが実現できましたという暮らし視点のプレゼンテーション」で事実上この会社でこの家を建てようという決心に到達できます。
こうしたことを実現するための暮らしコーディネーターの重要なスキルは、「表情を読み取るコミュニケーション力」と「お客様に体感体験していただくポイントを納得していただいて絞り込むコントロール力」です。
●「営業職を進化させるという選択肢」もある
「暮らしコーディネーター」を分業化できるとするなら、1/3~2/3の仕事を現状の注文住宅営業へその機能を付加するという選択肢もあります。
何もオンラインという手段を使わなくても、現状のインフラの強化という視点も有効でしょう。
「暮らしコーディネーター」のレベルを上げて行くと、「魅力ある付加価値」をお客様が「魅力と感じて対価を払う」という着工棟数が漸減する住宅市場の中にあって有効な手段ともいえます。
現有の住宅営業というインフラを機能強化して活かすか、暮らしコーディネーターという人材を鍛えて少数の高度なスキルをオンラインで活かすのか検討する必要があります。
まとめ
「注文住宅」のオンライン販売は可能です。
「初期接触から基本設計の合意」までという受注に重要なポイントはオンライン化可能です。
官公庁、金融機関の手続きや建設というリアルなことは現地での対応です。
冒頭で触れた1か所で全国へネット販売可能な注文住宅事業を展開する場合は、ネットで「見込客開発/受注活動/基本設計(役立ち高に応じてフィーを分配)」までを1カ所で対応し、あとは、各地域の優良住宅会社とネットワークを組んで対応するということで全国でも理屈上は実現できます。
そういうエリアを超えた住宅会社同士の協働を模索する時代でもあります。
《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士