新築の価格が上がっても受注をアップする住宅営業方法とは

威勢の良いタイトルですが、住宅営業としては少しでも価格は抑えてもらいたいと思うのも心情的には分かります。
全ての価格帯の住宅の価格が上がるのですから、同じ土俵と考えればさほど心配することはないとも言えます。
価格転嫁を何処まで抑えられるのか、という意味では企業力の差は多少なりとも出ると思います。
色々あっても、いちいち気にしていては住宅を売り切る力はいつまで経っても身につきません。

Contents

Max資金計画と予算

どこまで住宅にお金を掛けるかは別として、先ずは「お客様が最大限どこまで資金が用意できるのか」というMax資金計画をお客様と共有化することです。

お客様の「このくらいで建てられたらなあ」という予算は根拠のない予算の場合がほとんどであり、また、新築後60年以上もそこに住まう(つまり、人生の70%の時間を過ごすことになる最も大切な場が住宅)という自覚が無いため、「この金額は絶対だから」というような「予算」ではありません。

お客様に「Max資金計画」の話をしていただけるだけの「内容のある初回面談ができたのか」ということがポイントです。

住まいづくりは「人生への投資」ということへの気づき

初回面談は、ご自身の暮らしについて自覚されておられないお客様に対して、気づきを触発できるかがポイントです。
「モノからコトへ」という営業の進化が叫ばれて久しいですが、その具体策が「気づき共感営業」と「暮らし触発営業」です。
この「気づきと触発の営業姿勢」に徹して「住まいを楽しみ人生を楽しむ暮らしの実現」という、住いづくりの目的に改めて気づいていただけるかがポイントです。

住まいづくりは人生への投資ということへの気づきです。
これが出来れば新築の価格が上がっても、さほど大きな問題にはなりません。


【参考】
気づき共感営業
暮らし触発営業

●資金計画内で「実現したいコト」を最大限に

初回面談では、モデル住宅の案内はお客様の関心事に絞ってご案内します。
3次元空間で五感を使って体感体験し、説明を聴いて、自分たちの実現したコトはこういうことだったのかと気づきながらの時間は1時間程度が限界です。
これ以上でも付き合ってくださいますが、ほとんど記憶に残っていません。
受注したいのなら1時間以内、つまり3カ所程度に案内部位を絞ります。
絞り込む勇気が必要です。

Max資金計画を掴むということは、「こういう暮らしが実現したい」とお客様が気づくことと言い換えることもできます。

●リビングでの気づき共感がポイント

多くの住宅会社では、自社の最大特長はおそらくLDK空間で表現されていると思います。
例えば、構造躯体の性能がもたらすユーザーメリットを、お客様の暮らしを中心に置いて体感体験していただくところから実現したいコトへの気づきが始まります。

起きている時間の中で、住宅内で過ごす時間の9割近くはリビングで過ごすとさえ言われています。
最も確率高くご自身の実現したいコトに気づいていただける可能性があります。
その後、ご主人の関心事、奥様の関心事にフォーカスして共有化し、最も関連する部位で実現したいコトについて触発し気づいていただきます。
3カ所の気づき共感が得られれば、Max資金計画は共有化可能になります。

暮らしの重心の共有化

お客様が気づいた実現したいコトを、お客様と共有しながら優先順位という暮らしの重心を共有化します。

景気が少し良いという実感のない中で、新築価格が上がっている場面の心理としては、「無理はしたくない」というのが普通だと思います。
この心理状態を突破するのが、「これだけは実現しましょう」という「暮らしの重点」です。
家族全員の共通した実現したいコト、夫婦が「これだけは実現したいね」というポイントなどです。

●時間軸という考え方

住まいづくりを「消費」から「生涯に亘る暮らしの場への投資」へ切り替えていただくためには、「時間軸への気づき」がポイントです。

夫婦二人だけの時期、お子様の幼少期、お子様が青年期を迎えご夫婦が壮年期を迎える「家族が完成する」時期、さらにはお子様が独立された後の時期と具体的にタイムシフトしていくと、住宅で過ごす時間の多さとその時間を過ごす住宅という場の充実こそが人生を豊かなものにする最大の投資ということに気づいていただきます。

●資金配分の合意

初回面談でのMax資金計画と「これだけは実現したいコト」の共有化が出来れば、お客様との向き合い方が変わります。
お客様と同じ方向を観ながらご一緒に進める住まいづくりです。

暮らしの重心を軸に、何をどこまで実現するのかという資金配分を、お客様とご一緒に考え合意へ向かいます。

まとめ

新築価格が上がっているからと言って、弱気の心理に支配されることは無いということです。
住宅需要は漸減傾向とは言っても、新たな住宅を必要とされている方は多くいらっしゃいます。
単位人口で考えても、先進国の中にあっても住宅需要は旺盛です。
しかも、耐震性、断熱気密性などハイスペックで、水回りの他に類を見ないほど高装備の住宅がベースになっています。
「実現したいコト」を中心に「予算」ではなく「Max資金計画」で住宅営業を進めれば、新築価格アップなどの市況環境を気にする必要はありません。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役 松尾俊朗
一級建築士

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