「住宅営業研修を受けただけ」では終わらせないために

社員の育成のために様々な住宅営業研修を用意している住宅会社、もしくは社員の方から「この住宅営業研修を受講したい」などの要望が挙がる住宅会社も多いと思います。過去に、【住宅営業研修の効果を定着させるために】という記事でも書いていますが、どのようなポリシーの会社が提供している住宅営業研修なのか、また、受講する社員だけでなく会社として住宅営業研修に対する考え方を社内で共有して、受講する住宅営業研修を選択し実践すると研修効果が高まります。

今回は、住宅営業研修受講後に、学んだことを実務に活かすための上司の在り方について考えてみます。

Contents

実務で実践するためには

住宅営業研修受講者が学んだことをを理解し、実務で実践しなければ、時間やコストをかけて受講した意味がなくなってしまいます。しかしながら、受講した部下に「実践しろ」と指示を出したところですぐに実践できるものでもありません。ここには、学んだことを実践してみた際の課題への対策のしかたや受講者(部下)の性格やモチベーションなどに左右されてしまうという課題があります。

営業研修受講者は上司と部下の両方

研修内容を実務で実践するためには、担当者だけでなく上司も研修を受講することが重要です。その理由は、部下が研修内容を実践してみて、部下一人で対応策を考えることが難しい事が起きた時に、上司が研修内容に沿った適切な指示やアドバイスを出せず、従来通りの手法での指示やアドバイスになってしまうことにあります。「もっと良い方法」を求めて住宅営業研修を受講するわけですから、従来通りの手法に戻ってしまっては研修受講が無駄になってしまいます。上司が研修を受講せずに部下からの研修内容の報告を聴くだけでは細部まで共有することが難しいため、上司も部下と同じ研修を受講し、部下よりも内容を修得しておく必要があります。
さらに、クセや身についたやり方を軌道修正するのは中々に困難なものですので、実戦に落とし込む上でも、上司が継続的に部下を追いまわして「もっと良い方法」に移行する効果を上げるためにも重要です。

頭と体で覚える

例えば、「受注の8割を握る」と言われている、初回面談時の営業研修に関する部分については、実際にお客様と接客する場面での実戦を想定した訓練が必要です。研修で学んだことを頭で理解することはもちろんですが、こうした場合には、体で覚えるためにロープレ訓練(研修内)をすることも重要です。例えば、「お客様の暮らしの関心事を把握する」ことが住まいづくりの営業推進に役立てることを頭で理解したとしても、どのような会話でお聴きするのかなど、具体的なことがわからずに戸惑ってしまう場合もあります。
ロールプレ研修では、お客様のことを様々な視点から知るためのコミュニケーションの取り方などを具体的に実践することがポイントです。そして、研修以外の時間を使ってロープレ訓練をすることも重要です。

例えば初回面談時のロープレ訓練の事前準備

① 住宅営業担当者
ロープレ訓練時にゆるんだ姿勢、恥ずかしいという思い、緊張するという状態では、実戦でも上手くいきません。最初期の段階から完璧を目指すのは難しいものですので、ロープレ訓練を重ね、徐々に克服していきます。そして、使用する資料の内容と活用の仕方は頭に叩き込んでおくことがロープレ訓練に臨む営業担当者の必要条件です。

② お客様役(2名)
住宅営業担当者の上司や先輩が住宅営業担当者の成長に有効なお客様像の設定をしてお客様役に臨みます。お客様になりきります。意図的に優しくしたり、逆にかたくなに反応しないなど、不自然な反応は住宅営業担当者のためになりませんので、お客様役を本気でやりきります。

③ 動画撮影者
住宅営業担当者の表情とお客様役の反応の表情が読み取れる撮影ポジショニングと距離をとります。撮影者は住宅営業担当者の問題点/課題が出たポイントをカメラのカウンター/経過時間でチェックしメモしておき、フィードバック時の効率化を計ります。

④ ロープレ訓練指導者(上司/先輩)
良い点、問題/課題点のポイントを、研修内容を基準に評価します。個人的な主観、自身の過去の手法などではなく、あくまでも研修内容を基準にします。自分はわかっていないから部下に指導させるのは信頼を失うことになりますので、この役を部下にやらせてはいけません。

フィードバック

ロープレ訓練終了後、直ちに動画を受講者と上司が一緒に観ながら、課題/問題点で動画を停めて確認し、改善策を協議の上、フィードバックします。受講者と上司が問題点とその原因、対策を共有化しないまま研修を終了してしまうと研修効果は上がりません。この「フィードバック」がポイントです。また、研修終了後出来るだけ早急に実戦投入し、結果を出させることで実力がアップします。研修はここまでの会社としてのアフターフォローがあって、はじめて活きた有効な研修となります。

まとめ

住宅営業研修で学んだことは、研修以外の時間に実案件を使った実戦的な復習、初回面談などではロープレ訓練を重ね、実戦で対応できるように、実戦感覚で考え方を定着せせます。また、初回面談等の訓練は体でも覚えることが大切です。ロールプレ訓練で失敗をたくさん経験し、改良をしながら成功する経験を積むことも、住宅営業担当者の自信に繋がります。そして、上司も住宅営業担当者と同じ研修を受講し、研修内容を基準にした指示やアドバイスを出すことで、身になる研修にすることが可能になります。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
営業企画課長 眞田 智子

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