住宅営業研修は「スキル研修」から実戦で役立つ「考える研修」へ

従来のように「大量に見込客を集めてその中から受注する」時代は、コロナ禍の2年間で終焉を迎えました。お客様の行動様式が変わり、事前にネットで「行ってみたい会社」「観てみたいモデル住宅」をある程度絞って、「ネット予約」したうえでご来場されるようになってきました。ということは初回面談を失敗するとお客様は、再度他の住宅会社/工務店を検索し直して、他社へ向かわれてしまいますから、このお客様の復活はありません。ということは初回面談で納得をいただき受注へ向かって、大きく前進することができる住宅営業手法が必要です。

従来の経験則から派生した営業手法ではとても対応できないというのが実状です。先ず、最新の住宅営業手法の内容は「お客様の暮らしを中心に考える」こと、という原則にのっとっていることが必要条件です。この最新の住宅営業の導入する場合は、単なる「スキル研修」ではなく実戦で役立つ「考える研修」として構成されていることが必須条件であり十分条件です。

「お客様の暮らしを中心に考える」住宅営業手法

言葉としては、ほぼすべての住宅会社/工務店は「顧客中心主義」という意味合いのことを謳っていることと思います。これを実際の住宅営業の現場で活かせているのかというと、多くの場合で疑わしいと言わざるを得ません。
お客様がSNSの画像という視覚的でわかりやすい情報をお持ちになられて「こんな感じの家にしたい」とおっしゃられた場合の住宅営業の反応などを観ていますと、「この予算でこんなの無理」「できっこないのに無茶言うなよ」という反発、拒否的な引きつった反応が住宅営業の目元、口元をはじめ全表情に出ています。その後、上手く取り繕って話をずらして、自社特長の話へ持って行ったつもりということになることが多いのですが、お客様には簡単に見破られてしまっています。「私の話を軽視した」となりこの時点で失格です。

本来はSNSの画像を拝見させていただき、住宅営業が感じたその画像の住宅の良さを具体的に開示します。「このキッチンの壁にかけている鍋などの各種の銅製調理器具がインテリアの中心でおしゃれですね。如何にも料理好きのご家族ということが見えるインテリアですね」「お客様の気に入られたポイントはどこですか」と気に入られているポイントを理解するようにします。
どのような趣向で、どこが気に入っておられるのかとお客様のSNS画像を受容れてお客様のお考えを理解することに全力を傾けます。「お客様の暮らしを中心に考える」ということの入口を住宅営業が自ら潰してしまっています。お客様の要求を受容れて、お客様の意図主旨を理解することが注文住宅の原点のはずですがなぜそうならないのでしょうか。

従来の住宅営業は実は「自社中心主義」の営業手法

「自社特長の提案」という行動に出たがるのが一般的な従来の住宅営業の習性です。住宅会社/工務店がお客様より住宅に関しての情報を持っていた時代の成功体験がこういう行動原理を作ってしまっています。そこへ他社との差別化をしなければという考えなども混ざってしまい「こちらの言うことを分かってほしい」という「提案」という名の「押し付け」や「売込み」が前面に出てしまいます。「顧客中心主義」だからこそ「是非提案したい」となって、話がかみ合わず「自社中心主義」になっていることに気づきません。
お客様のことをもっと理解しようとする姿勢がいつの間にか消えてしまっています。お客様もどのような暮らしがしたいなどと言う視点でこれまで考えたこともありませんから、ご自身が「実現したいコト」について不明瞭で即答されることは極めて稀です。様々な触発や気づきの体感体験をしていただくなどして徐々に実現したいお客様の暮らしのチャネルを拓いて行きます。
こういう面倒なことをするのが「顧客中心主義」であり「お客様の暮らしを中心に考える」ということです。面倒ですからついつい無意識の内に金科玉条の「顧客第一主義」を放り投げて「押しつけ」「売込み」に走ってしまいます。お客様の行動様式が変わった現在、このような営業スタイルの過去の成功体験は通用しなくなってきています。

全ての営業活動の「目的」を考えてみる

例えば「アンケート記入の目的」は何かという問いです。「お客様の暮らしを中心に考える」住まいづくりですからお客様の現状の暮らしや関心事項を理解し、住まいづくりのベースとなる情報をお客様と住宅営業が共有化することであり、お客様の住まいづくりのためにアンケートに記入していただくことが「目的」です。そういう視点でアンケート項目を見直すと「自社のエゴ」での「職務質問」が多いことに気づかされます。営業活動内容の各項目の目的を理解し、目的で考えるということの重要さが特に営業の前線で必要なことが分かってきます。

「考えろ」では考えられない

漠として「考えろ」では考えようがありません。具体的な行動レベルの項目に範囲を絞ります。
例えば「職業/職種」を記入してもらう「目的は何か」、と「目的」を軸とすると考えることができます。職種によっては昼間寝なければならない職種があり(ex.3交代勤務)、そういう人には静かで、昼でも遮光できる寝室も必要になりますから、やはり職種をお聴きするのは「お客様のために必要なこと」ということになり、自信を持ってお客様に「職業/職種」をお聴きすることができるようになります。「目的」で考えることで、頭の使い方を修得することが出来るようになります。

実戦で役立つ「考える研修」とは

価格上昇局面の集客減の中で、さらにお客様が事前に来場される会社/モデル住宅を絞り込んで来られる傾向が強い現状では、「来場される全ての新規客」を受注することが求められます。
最新の住宅営業手法の「気づき共感営業手法」は「お客様の暮らしを中心に考える」視点を徹底した営業手法ですが、マニュアルではなくセオリーとして構成されており、個々のお客様の反応からセオリーという軸に沿って「考える」ことが求められる営業手法です。難しく聞こえるかもしれませんが、実は導入した多くの会社の営業社員が「住宅営業が楽しくなった」「お客様のためになることを考えることが受注につながる」「自社商品特長が個々のお客様にとって具体的にどのようなメリットをもたらすのかと考えると、お客様の納得度が上がって受注金額も上がる」など、「楽しくお客様の役に立てて、受注も上がる」というのが結論です。
「気づき共感営業手法」の導入に関しては導入段階と実戦段階の2階建ての研修が必要です。

気づき共感営業手法の「スキル研修」と「考える研修」

気づき共感営業手法の導入段階では「スキル研修」を中心に「暮らし視点の住いづくり」の基本形を修得していただきます。この基礎編を習熟してから「お客様の暮らしを中心に考える」という視点の個々のお客様への対応を確実にこなす「考える研修」の受講という2階建てです。
自社特長を中心に展開する一般の住宅会社/工務店と比較するとお客様を中心に考えた住まいづくりを進める気づき共感営業は大きな差別化になります。ポイントは「考える」営業を実戦化するための「考える研修」です。

動画での座学とロープレ訓練、実案件の受注検討訓練

テキストはポイントの確認に留めて、「見本動画」による「真似る」ことから初めて、体を動かして身に着ける「ロープレ訓練」、そして各営業の実案件の受注するための具体策の検討という受注のための営業活動の実戦を兼ねた訓練で実力をつけることで「考える実戦力」が獲得できます。

まとめ

SNS等の画像をお持ちになって視覚的に「実現したい家」をお見せくださるお客様の増加ということは、情報の発信者は住宅会社/工務店からお客様へ移ってきたということです。しかもお客様は視覚的なコミュニケーションからスタートしています。コミュニケーションの80~90%以上は視覚情報に移行しています。これに対して「人間関係も築くため」と「会話しようとする営業」というような対応に時代からのズレを感じます。
また、個々のお客様への対応こそが注文住宅事業の活路となる時代です。従って住宅営業手法も過去の成功体験ベースの手法から「お客様の暮らしを中心に考える」手法への切り替えが必要です。その営業手法の導入に際しても「スキル研修」から実戦で役立つ「考える研修」へと2段階のステップを踏んで確かな実力を得る必要がある時代です。

おすすめの住宅営業研修:気づき共感営業研修

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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