【住宅営業の基本 | ポジショニング編】お客様との正しい距離とは

お客様が住宅展示場や完成住まいの見学会にご来場され、初対面でご挨拶する時、ご案内時など、お客様と接する時には、お客様との距離が大きく影響します。お客様との距離には、「物理的距離」と「精神的距離」の2種類があります。今回は、お客様にストレスを与えず、親しみを持って自社での住まいづくりに関心を寄せていただく「物理的距離」について考えてみます。

Contents

お客様との物理的距離と人間関係

お客様と住宅営業の関係には、距離が大きく影響します。
物理的距離が近いと精神的距離も近い、物理的距離が遠いと精神的距離は遠いと言えます。したがって、物理的距離が遠すぎたり、近すぎてもお客様とは良好な関係が築けません。

関係性ごとに異なる物理的距離

あまり近い関係性ではない、例えばショップの店員と接したときに、「この人はちょっと距離が近いな」と少し自分の身を引いたり、自分は親しいと感じていた人と接したときに「何で離れて話すのだろう?」と感じた経験はありませんか?これは、パーソナルスペースという自分の感覚としての他者に侵入されると不快に思う空間が存在するためです。このパーソナルスペースは人によって広さが異なります。住宅営業がお客様と接する時は、お客様のパーソナルスペースに配慮する必要があります。
関係性ごとに適した距離は以下の通りです。

<密接距離>
極親密な関係にあり、身体にふれあうことができる距離。
人間関係 : 親子・夫婦・恋人などの親しい人。
適した距離 : 0~0.45m
親子・夫婦・恋人などの親しい人以外の人が近づくと不快感をあたえてしまいます。

<個体距離>
会話の距離。個人的に親しい関係距離。二人が手を伸ばせば相手に届く距離。
人間関係 : 友人・知人等の親しい間柄
適した距離 : 0.45~1.2m
ややくだけた関係性の距離です。

<社会距離>
会議などのビジネスにおける距離。身体に触れることができない距離。
人間関係 : ビジネスシーン等での間柄
適した距離 : 1.2~3.6m

<公衆距離>
講演・演説など公衆距離。
人間関係 : 他人。基本的には相手と知り合いではない。
適した距離 : 3.6m~

住宅営業がとるべきお客様との物理的距離

いつまでも社会的距離を保っていると心理的距離は縮まらず、お客様に住まいづくりへの想いをお話ししていただけませんし、いきなり個体距離まで近づいてしまっても、お客様は警戒心や不快感を抱いてしまい、この場合もご自身の事をお話しいただけない状況になります。
お客様にとって、どれくらいの物理的距離が警戒心を無くし心地よく思っていただけるのかに気を配りながら徐々に距離を縮めていくことがポイントです。

接客時の距離の基本

心理学では距離感を4つに分類しています。ビジネスシーンにおいては「個体距離」「社会距離」の距離感(接客距離)が大切です。

・初対面
極初期段階にいいては、1.5mほどの距離をとり、お客様に圧迫感や警戒心を与えないようにします。

・接客時(初期段階)
個体距離と社会距離にまたがる1~1.5mの距離を「接客距離」の基本にして、お客様の様子を見ながら距離を調整します。会話の距離、個人的に親しい関係の上限とビジネスシーンでの下限に属する距離であり、お客様と住宅営業双方で会話が聴き取れるが、あまり馴れ馴れしくなり過ぎない距離です。

・接客時(ご案内時)
笑顔での接客などでお客様の緊張感がほぐれた状態になれば、1mに近い下限の距離をとり、コミュニケーションがとりやすい距離を保ちます。

・物理的距離を縮めるキッカケをつくる
お客様との距離を縮めるためには、サンプルや資料をお渡ししたりすると自然と距離を縮めることが出来ます。しかし、こうした場合にも、個体距離の0.45m~0.6m以内には、極短時間を除いて入らないようにして、お客様にストレスを与えないようにします。

注意点

ご夫婦などの男女のお客様への接客の際は、必ず住宅営業ご自身と同性側につくようにします。
女性の住宅営業、男性の住宅営業が、それぞれ異性側のお客様を中心に接客すると、異性側のお客様は「おもしろくない」という印象を持たれます。広く一般的にこのような傾向が見られますので注意するべきポイントです。適切な接客距離を保ちながらのご案内やご説明は、お客様の信頼を勝ち得るための基本です。

まとめ

お客様の警戒心が融けていない状況で距離を無理やり縮めてしまうと、住宅営業がお客様のメリットになることを伝えても不快感の方が強いため、せっかくご説明した内容はお客様の心に響きません。
人との距離感覚には個人差がありますので、お客様との距離を縮める際には、お客様の反応を読み取りながら警戒心を解き、さりげなく自然に距離を縮めていくことをおすすめします。

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《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
営業企画課長 眞田 智子

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