住宅営業がAIに置き換わる日

SFのようなこんな日は来るのでしょうか。
現状のようなともするとワンパターン化した住宅営業手法を続けるのであれば、答えは「YES」です。
それほど住宅営業は雑になっています。
これなら住宅営業という職種は、人間よりもAIに置き換えてしまった方が良いのかもしれません。
でもそれが正解なのでしょうか。

AIは過去のデータに基づくことは得意

和洋折衷への取り組みが始まって100年、2DKが発明されて70年。
2DKから出発した現在の戸建住宅プランは、4LDKを主体に3LDK~5LDKが大半を占めています。
面積と部屋数、敷地与条件と法規制、多少の要望を与えてやれば、いかにも住宅設計分野はAIが得意そうな分野だと言えます。
お客様に言われてプランというアウトプットを望むのが住宅営業であれば、「忙しいから今は無理」とか設計に文句も言われずに直ぐにプランも手に入りそうです。
住宅営業の前にまず設計をAIに置き換えますか。

お客様の暮しがワンパターンの時代は終焉

AIが苦手とする分野は、創造的なことだそうです。
暮らしの多様化が進み、個人個人の価値観に揺らぎが生じている昨今の状況では、過去のデータが役立たなくなってきています。
和洋折衷住宅の考え方も、〇LDKプランも揺らぎ始めてきています。
こうなると、そう簡単にAIに置き換えにくいのかなとも思います。
ところがどっこい「超低金利ローコスト若年層住宅」の市場で考えれば、「まだ暮らしが始まっていないお客様」相手も一つの市場ですから、まだワンパターン住宅は価格さえ安ければまだ通用しそうです。
多少なりとも多様な暮らしに気づかれているお客様でも、価格の魅力で我慢してもらえますから、ワンパターンでもまだ売れるでしょう。

●建築資材の高騰下では住宅営業をAIへ置き換える?

ここへ来て建築資材が高騰して、「ローコスト住宅も安くはないのね」と「中古住宅」購入、「増改築」やリノベーションへローコスト住宅客層が流出しています。
空家率は13.6%ですから。
そうなると、ここしばらくは建築資材の高騰も避けられそうにないと思いますから、中古住宅や増改築などとも価格競争になると思います。
それなら1棟当たりの人件費削減がターゲットです。
経費削減として住宅営業をAIに置き換えましょうか。
中高級住宅も状況はある意味同じですから。

●ワンパターン住宅営業ならAIで十分

初回面談でモデル住宅をざっと見せて、土地なしなら土地紹介、予算がないならFPの次アポ。
土地があるならプラン提示の次アポ。
受注活動が進んでいるようで全く進んでいない「作業」をしているだけで、営業をしている気分になっている住宅営業がもしあなたの会社にいたなら、AIにさっさと置き換えましょう。
人件費削減だけでなく、ワンパターン住宅営業の効率化につながります。
問題は昨今の来場者減の中にあって、このワンパターンAI営業は効率よく「作業」を終えてしまうので、受注は上がらない割には直ぐに「作業対象になる客不足」に陥ってしまうということでしょうか。

お客様と向き合い考える住宅営業ならAIよりずっと良い

住宅性能は良くなり、機能性でも世界一になった日本の住宅も、100年、70年と作り手側が暮らし視点で見ればワンパターン化してしまい、それに伴って住宅営業も住宅設計も考え方がワンパターン化しています。
こういう事態に不審を抱かないというのは、目の前のお客様を見ているようで観ていないということ。
個々のお客様の多様な暮らしに、住宅営業も住宅設計も、さらにはお客様ご自身すら気づいていないということです。
もっと目を見開いて目の前のお客様の暮らしを見つめてみましょう。
本来AIから最も遠いところにあるべきなのが注文住宅営業という職種です。
お客様と向き合い考える住宅営業は遥かにAIよりも優れています。

●個々のお客様のことを考える

資生堂が創業150年を記念して、8名の有名女優を起用して制作したCMの中で、「資生堂が150年間見つめてきたもの それはあなたです」と訴求しています。
マスの平均値や中央値では考えないという個々の多様性を認め、対応してきたし、今後もそうするという宣言でもあります。
「せっかく新しい住いになるのだから、これだけは実現したいコト」はありますか、という最低限の質問を投げかけてみるところから初めるなど、「お客様のことを考える住宅営業」が求められています。

●人間の感性や価値観を理解できるのはAIではなく人間の領域

本来、お客様の暮らしを考えて、その器を作る注文住宅事業は、個々への対応をその中核にしていましたが、雑で平均値化してしまい、○LDKのワンパターンに疑問を持たなくなってしまいました。
個々の人間の感性や価値観という個性を理解して対応できるのは人間しか存在しません。
注文住宅営業はそうした存在です。
その後に控えている住宅設計もそいう存在です。
変革の時です。

まとめ

AIに置き換えられそうな住宅事業の営業はAIでもよいでしょう。
しかし注文住宅事業という事業特性を考えれば、本質的には最も高度な人間対人間が理解しあって進める事業のはずです。
DX化で合理化すべきところと人材を育てて投入する分野を見極めて住宅事業を推進する変革する時期です。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

関連記事

住宅の価格アップ時代には「気づき共感営業」が強力な武器になる

住宅業界は30年振りの価格アップ時代に突入しました。「超低金利デフレ時代」が続きましたが、外的要因によって資源/資材のインフレへと急速に転じています。住宅価格アップ時代に適応させ、住宅事業を発展させる方策がこの春からは必 […]

住宅事業に携わる者のプライドを持つ

建築資材が高騰したからと言って値上を嫌がる住宅営業、「お客様が言ったから」こういうプランにしましたと言って「どう考えても住みづらいプラン」をそのまま工事へ回す住宅設計、何も疑問を持たずにイージーな住宅事業運営をしているの […]

住宅営業が、お客様への興味関心を強く持たなければならない理由と対応方法

初回来場時のお客様は、「話を聴いて欲しい」「私の考えていることを相談したい」という思いでご来場されています。積極的に意思表示されるか、あまり表面に出されないかは別にして。もちろん、とりあえずモデル住宅を観てみようという方 […]

新着記事

【住宅営業が持つべき視点】変化し続けるお客様の暮らしを見つめる視点

住宅営業やお客様ご自身も気づかないうちに、家族関係・夫婦関係・親子関係などの家族とのつながり方やリビングダイニング・それぞれの部屋での過ごし方が従来とは変化ししています。こうした変化に対応してこそ、お客様中心の住宅営業と […]

「何でもできます」「自由設計ですから」では「何も売れない」

「注文住宅」という言葉は、ある意味で誤解されたまま世に広まっています。お客様は、「自分が思うとおりに家を建てられる」と思われている部分があり、住宅会社・工務店も「自由設計ですから」と、お客様のご要望のままに設計・施工され […]

中高級住宅は、お客様中心の「時間の質」向上ビジネスへ

お客様にとっては、数ある住宅会社の住宅展示場や完成住まいの見学会に参加しても、従来通りの営業対応ではローコスト系の住宅と「価格の割には大差がない」ように伝わってしまっています。価格の割には大差がなく伝わってしまう原因と中 […]

「不満の解消」と「満足の向上」は似て非なるもの

日本は少子高齢化が進み、人口は急激に減少しています。つまり、住宅建築適齢期の人口も減少しているということです。さらに、空き家率の過去最高の更新や持ち家・賃貸住宅(ともに戸建て住宅・マンション)、リノベーション・リフォーム […]

住宅営業のご夫婦への対応のポイント

ご主人様が主導し、奥様は夫の意思に沿う夫婦関係は、現在は減少傾向にあります。家族や夫婦関係の在り方や家事・育児などの行動も変化しており、ご夫婦関係を見極めずに、従来の「ご主人様が家庭内権力者」として対応していると、ご夫婦 […]

受注のコツはスピード感

住宅営業が受注を獲得するためにはスピード感が大変重要です。住宅営業活動上のスピード感とはどういうことを指すのでしょうか。自社住宅の特長をお客様にご理解いただいて受注に向かう上で必要な、住宅営業の「スピード感」について考え […]