集客が少ない中での接客のポイント

集客が少ない中での接客では、住宅営業に「焦るな」と言っても「焦ります」。

どうしても自社の、特に住宅の耐震性能、温熱環境や換気システムという自社特長の話をして、他社より優位な状況を作ろうと「誘導する傾向」があります。
この住宅営業の誘導について、住宅営業本人はうまく話を持って行ったという認識ですが、お客様からは「我田引水が見え見え」です。


少ない見込客から受注につながるようにするためにはどのような接客をすればよいのでしょうか。

Contents

お客様の関心のある分野での対応

当たり前と言えば当たり前のことですが、誰でも関心のない分野の話は聴きたくありません。
それでも住宅営業は、なぜ「自社の特長」という「住宅営業が言いたいこと」を話したがるのでしょうか。
「受注できた」「失注した」ということは、住宅営業の最大の関心事です。
自社が受注したか他社に受注を持って行かれたということに対しては、特に集客が少ない時期だからこそ関心が集中しがちです。
そうなると、「他社よりも優位」な「モノとしての住宅の優位さ」を示そうとしてしまいがちです。
いつの間にか住宅営業の眼は、お客様ではなく競合他社を向いてしまっています。

あるいは、「素人のお客様に教えてあげたい」という親切心と隠れた優越感から「自分の知識をしゃべりたがる」住宅営業は多く存在します。
「上から目線の教え魔」になってしまい、「お客様の印象を悪くする」ということはよくある接客風景です。

お客様は誰なのかという問いにまっすぐに向き合いましょう。
お客様の関心のある分野で対応するようにするのが基本です。

お客様の関心分野での住宅営業の対応は難しい?

お客様の関心のある分野がキッチンなら、半分逃げ腰になってしまうキッチンは苦手という住宅営業は多いと思います。
キッチンというモノの説明に走ってその場を乗り切ろうとしたり、早いとこ話を切り換えて別の得意な場所へと誘導したりします。
それ以前に、そもそもお客様はご自身が住宅や暮らしのどこに関心があるのか見えておられるのでしょうか。
このように言うと「だから自社の特長から」という住宅営業の反論が聞こえてきそうです。
だからこそ、まず住宅営業が真っ先に取り組むことは、「お客様自身に新しいお住まいで実現したい楽しいコトに気づいていただくこと」です。
どのようにして気付いていただくのか。

これに気づいていただくためには、モデル住宅の見方を変えていただくことです。
「モデル住宅という一般的な住宅」という見方ではなく、「ここに住むとして」という視点をお客様に持っていただくことです。
自身の日常の暮らしの中でキッチンを如何に楽しんでいただくのか一緒に考えるという姿勢で接すると、お客様の関心分野の対応はそう難しくはありません。

●住宅案内の基礎知識は必要

そうは言っても、モデル住宅案内、完成住まいの現場見学会での案内には住宅案内の基礎知識は必要です。

例えば、先ほどのキッチンなら「お客様に適したキッチンを作るには大きく4つの分野」がありますが、それを知っていないとお客様対応はできません。

1、調理(一人で~複数で)
2、収納(食器・調理器具・家電・食材)
3、動線(調理時と配膳/片づけ)
4、コミュニケーション(一緒に作りながら・手伝いながら・他の場所と)


実際にご夫婦がよく作る料理をこのキッチンで調理するとして、この4項目の視点に分解して、お客様に合ったキッチンをご一緒にまとめて行くことです。

自然な流れで難しいことは無いと思います。

●各部屋ごとの良い部屋を作るポイント

キッチンを例に上げましたが、リビング、ダイニング、洗面・脱衣・物干し、バス、トイレ、書斎、寝室、子供部屋、玄関、和室等主な居室と部位ごとも「良い部屋を作るポイント」は押さえておきましょう。
その際の視点は、「暮らし視点」です。
「便利にストレスフリーな暮らし」というのは当たり前ですが、そのポイントを押さえた上で「楽しい暮らし」「こんなコトがしたい」を生み出すポイントを共有化すれば、お客様は住まいづくりに前のめりになられます。
それを支える耐震技術、快適温熱環境を生み出す技術、換気空調システムなど住宅営業が得意なモノの説明もなるほどと聴いてくれます。
カードを切る順番が逆なだけです。

「モノからコトへ」の実践が受注確度を上げる

お客様の関心事を中心に置いた接客は、受注確度を上げます。
この考え方は長らく叫ばれていながら全く住宅業界では実現できていなかった「モノからコトへ」の発想の転換です。
「夫婦で料理を楽しみながら作って食べるというコト」の具体的な動きが分かれば、「コトからモノへ」と落とし込むことはたやすく、お客様に喜ばれて受注に直結します。

●他社差別化の決め手

もちろん「モノからコトへ」の営業レベルでの実践には、知識教育とロープレ訓練、実戦でのフォローアップが必要です。
どの住宅会社も導入できておらず、導入し実戦できれば圧倒的な受注結果の差を生み出します。


来場者数の減少という現状を成長のばねに使うチャンスでもあります。
接客の視点を変えるだけで結果が大きく違ってきます。
他社差別化の決め手になります。

●住まいづくりをお客様と共に楽しむ

「モノからコトへ」という視点から始める住宅営業は、「モノの特長を訴求して売る」手法では無く、お客様と同じ方向を向く営業手法です。
住まいづくりをお客様と楽しみながら実現したいコトが共有化出来たら、それを作るためのモノづくりへ移行していくので、お客様にとってもわかりやすくストレスがない営業です。

まとめ

来場者数が減少すると住宅営業は焦りますが、ほとんどの場合がその焦りは負のスパイラルを招きます。
注文住宅事業の本来のあり方に立ち返って「お客様の暮らしを中心」に置いた接客手法に切り替え、「モノからコトへ」の視点で接客に入っていくことです。
「形にないモノを売っている注文住宅事業」では、まず「実現したいコト」をお客様と共有化し、その「コト」を具現化する「モノ」を造るという正しいプロセスで厳しい環境にあっても成長して行きましょう。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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