「非住宅木造建築」分野で成功するポイント


木造で住宅建築に取り組んでこられた住宅会社/工務店/建設会社にとって、非住宅木造建築分野は「未開拓分野」でありますが、保有建築技術の応用で自ら積極的に切り拓くことができる分野です。

戸建住宅市場が、人口減少と出生率の低下で長期に亘って縮小していくことは明白です。
一方、未開拓市場である「非住宅木造建築」分野を積極的に開発/受注できれば、住宅需要の減少分を補い、更に積み上げることもできるための成長戦略の有力な手段になります。
木造住宅に取り組まれてきた経験を活かし、「非住宅木造建築」分野で成功するためのポイントについて考えてみましょう。

住宅木造建築分野での経験を活かす

住宅系の木造建築に取り組んでこられた住宅会社/工務店/建設会社にとって、その経験の強みを活かして取り組むために、「非木造建築」市場の中でも「狙いとする対象市場」を絞ります。

住宅市場で取り組んできた、自社の「強み」とは何かを明確にし、それを武器に新市場を開拓することで、「非住宅木造建築」分野での成功を確実なものにするベースとなる考え方です。

【ポイント1】中小規模の非住宅木造建築に的を絞る

建築基準法が改正され、最近では地上11階(高さ44m)という大型建築物も木造建築で実現できています。しかし、このような大型建築物は、スーパーゼネコンやその規模に準ずる大手建設会社にお任せして、足元の身近な中小規模の建築物で、自社対応可能な市場にターゲットを絞りましょう。
先ず、規模と用途で対象市場を絞ります。

1、規模 1000㎡前後までの建物に絞る。
2、用途 倉庫/工場/事務所/施設(簡易な介護施設等)/店舗。

というように、建物面積と用途の範囲を絞ります。
何でも出来てしまう能力をお持ち場合、全方位対応の方が有利なように感じるかもしれませんが、対象市場を絞り込む方が成功につながります。ここが、一つ目のポイントです。

【ポイント2】住宅系の経験を活かし差別化を図る

「非住宅木造建築」の一般的な強みは、

1、価格優位性   他工法(S造/SRC造/RC造)に比べて価格が安い。
2、総重量が軽い   地盤改良のコスト軽減。
3、短工期     他工法に比べて工期が短い。

等があげられますが、こうした木造建築の持つ特徴は、非住宅建築に取り組む全ての木造建築を取り扱う建築会社の共通の特徴です。
そこで、これから参入しようとしている対象市場、つまり、「倉庫/工場/事務所/施設(簡易な介護施設等)/店舗」市場と住宅市場を見比べて、特徴として自社が打ち出せる共通点を見いだします。そこに差別化可能な部分があるはずです。

非住宅建築物は、「箱もの」と以前から言われているように、建物を大きな「容器」のように考えて、何かを入れる「箱」を作ることが主目的でした。特に、非住宅木造建築では「木造で箱さえ作れる能力があれば、どの会社でも参入」できてしまい、残るのは価格だけという事態に陥りかねません。価格競争しか残っていない、という薄利ビジネスなら参入する価値はありません。

そこで、他社に比べて住宅系、特に、注文住宅系の元請会社ならではの特徴を鮮明化します。

「倉庫/工場/事務所/施設(簡易な介護施設等)/店舗」に共通している要素は「人」です。
倉庫、工場でも、そこで働く人、従業員がいます。事務所でも、施設、店舗でもそこで働く人が居て、その従業員のためのスペースがあります。

住宅建築は「人」の容れモノ、つまり、そこでの暮らしを、安全、快適、便利にすることが求められてきました。
特に、注文住宅は、「発注者と利用者(居住者)が同一」という、最も厳しい条件下でのビジネスで、コストを抑えながら要求に応えてきたはずです(アパートのように「発注者」と「入居者」は別人という条件よりはるかに厳しい)。

従来の「箱モノ」は、「建物コストを抑えてビジネス利益」を優先することに目が向けられており、そこで働く、従業員の快適、利便性に関しては優先度が低いままでした。実際に仕事/業務を進めているのは従業員です。倉庫、工場の「モノのスペースの効率性」に目を向けているだけでは、これからは、従業員の確保も難しく、離職率も高いままではビジネスの継続も難しくなってきます。今後、さらに労働人口が減少し、外国人労働者も、働く場所の選別をするという時代の流れを軽視した状態では、建主様のビジネスの継続性、将来の見通しが立たなくなってしまします。

ここに、住宅事業で培った「設計力」と「営業力」を活かし、独自の特徴を持つことができる余地があります。
これが、二つ目のポイントです。

【ポイント3】従業員を大切にするという建物(商品力)

住宅事業で培った「人を中心に置いた」建物づくりは、非住宅木造建築物において、新鮮な切り口を与えます。「人を中心に置いた」建物づくりの中でも、「従業員」を第一に考えた「倉庫/工場/事務所/施設(簡易な介護施設等)/店舗」づくりに、新たな視点と魅力を生み出します。
ビジネスのための建物である以上、どの種類の建物でも、従業員の居場所は必要です。従来は、ともすると付属の部屋や、空間、建物であった従業員を「収容」する建築部分に着目し、この部分を充実させることで建主のビジネス成功の基盤を提供します。

事務所空間は、できるだけ人を効率的に詰め込むという機械的な視点での考え方から、従業員相互のコミュニケーションの円滑化を図り、より生産性の高い仕事ができるように事務所環境の工夫(インテリアのカラーコーディネート、デスク配置の新概念の導入、新たなデザイン感覚のデスク、チェアの採用など)をします。
コーヒーブレークなどのちょっとした休憩時こそ、担当業務を超えた従業員間のコミュニケーションがポイントで、ビジネスを強化します。「従業員第一主義」こそ、すべての業種で求められるビジネス関連の建物の新たな機能です。

小規模な空間であれば、従業員のためのスペースは、温熱環境を大きく向上させて、省エネであることはもちろん、快適性を大幅に向上させます。

継続的な事業発展ということを前提にされている建主様にとって、新たな建物への投資は、事業の将来性という視点も含んだ「人を中心」に置いた考え方は最も重要です。
新規採用/中途採用という人材確保にも有効で、その後の離職率も下げて、教育投資が無駄にならず、会社の方針を理解し、高いスキルを持った従業員を定着させるためにも必要不可欠な考え方です。

このような分野が非住宅木造建築の市場のこれからの姿ですから、住宅事業で培った「設計力」と「営業力」を活かし、他社差別化を図ることが必要です。特に地元中小企業にとって、人材確保は最重要で解決したい課題です。
これに着目して商品力としてまとめて、分かりやすく提供するのが、三つ目のポイントです。

【ポイント4】建主様の「顧客心理」に基づく営業へ

「非住宅木造建築市場」へは、新たな視点で参入することが、前述の通り、独自戦略として有効だと思いますが、その「人を中心」に置いた建築や従業員を大切にする建物は、本当に建主様に響くのでしょうか。

新たな建物を必要とされている建主様は、それが「倉庫/工場/事務所/施設(簡易な介護施設等)/店舗」のいずれの建物であっても、「目の前の切迫した要求(手狭、老朽化等)」という視点で、建物の新築計画が否応なしに持ち上がっている状況でしょう。まず、その対処を何とかしなければ、ということに視点が向いています。数億円という建築資金も、大いに気になるところでしょう。

このような建主様に、いきなり「人を中心に置いた建築」や、従業員を大切にする建物などという話は全く通用せず、むしろ、金額を上げようとしている商談相手であり、鬱陶しいヤツという認識になってしまいます。
見込客としての初期段階の建主様は、出来るだけ建築資金を抑えて建てたい。だからこそ、「木造建築」も検討してみようという程度の発想で、声を掛けていただいたというような状態だと思います。

そこで、建主様の要求を先ず「受容れる」ところから、営業はスタートします。従来も、お客様の要求を受けて対応、つまり、「建主の要求に従って建築していた」のがこれまでの建築だと思います。この進め方では、入札的に「安いところ」が落札し、無理をして落札しても利益を残せない状況に陥ります。建主様も目の前の「事情」で判断してしまい、半世紀近く活用できる経営資源である建物については、将来の事業展開を考えて建築しなければならないという視点を見失いがちです。

建主様の要求を先ず「受容れる」ところから営業はスタートします。しかし、話をよくお聴きして、ご意見、要求は「受容れる」が、言いなり対応をするのではなく、「建主様のビジネスの現在と将来の成功のために」という視点で、徐々に「ビジネス内容と現状のお考えの理解」を深め、考え方を共有化します。その上で、将来に向けた投資としての建物という視点を持っていただき、「人を中心に置いた建築」や従業員を大切にする建物の重要さに「気づいていただく」ための新たな営業手法を導入する必要があります。
これが、四つ目のポイントです。

【ポイント5】営業開発(探客マーケティング)

非住宅木造建築の見込客を開発する探客マーケティング活動「営業開発」を進めますが、対象となる非住宅木造建築の面積帯の建築規模範囲では、建主様の初期段階の行動は、建築業者の紹介を関係先に依頼もする行動です。また、つき合いのある建築業者があれば、そこにも声を掛けるでしょう。建築資金が必要になり、金融機関にも相談をし、ついでに建築業者の相談もするでしょう。
一方で、情報収集のために、自ら建築業者を、ホームページで探すという行動も一般的に採られるはずです。建主様のこうした行動を理解した上で「探客マーケティング」を組み立てます。具体的には2つの方向性があります。

1、 取引のある金融機関、協力業者など、関係先に、動き始めた建主様がいないかなど、見込客情報の収集を依頼します(会社としての正式な依頼)。
2、 非住宅木造建築専用ホームページを立ちあげ、自社商品特徴を明示します(他社差別化の独自の「人を中心」に置いた非住宅木造建築の特徴など)。

金融機関、協力業者からの情報提供、つまり、情報収集についての協力は得られると思いますが、情報を提供してくださった会社も取引関係先は多く、「特命」としての紹介数は限定されると思います。先ずは、関係先からの見込客情報収集という探客マーケティングが必要です。具体的な活動の仕方として「非住宅木造建築営業開発手法」を導入する必要があります。

一方で、非住宅木造建築専用ホームページは、注文住宅事業での実績をバックボーンに、「人を中心(特に従業員と顧客)」を中心において進めるという自社の考え方、非住宅木造建築に取り組む姿勢を魅える化した内容のホームページにして、検索でヒットしてもらえることはもちろん、「この会社も検討してみよう」という内容に組立てる必要があります。

このように、営業開発(探客マーケティング)には、関係先から見込客情報を収集する「非住宅木造建築営業開発手法」導入と、「非住宅木造建築専用ホームページ」制作と運用が必要です。これが五つ目のポイントです。

【ポイント6】受注活動

営業開発(探客マーケティング)で見いだした見込客を、受注に結び付けるのが営業活動です。
住宅営業とは異なり、建主様の個人生活や暮らしの要求に応えるのが営業/設計ではなく、建主様のビジネスを理解し、建主のビジネスに対する姿勢、価値観などを理解した上で、建主様のビジネス成功のベースとなる有効な建築を、将来という時間軸も含めて建主様のビジネスが成功するという視点での営業/設計が受注に繋がります。営業活動の中で、建主様に自社商品特徴もご理解いただき、適切な建築への投資となるように進めるのが、非住宅木造建築営業活動です。

1、 建主様のビジネス、ビジネス姿勢/価値観の多角的な理解
2、 建主様のビジネス成功につながる、建築内容を企画/提示して受注

先ずは、建主様を「受容れる」が、言いなりになるのではなく、建主様のビジネス成功へつながるアウトプットをするのが非住宅木造建築営業活動の根幹です。この分野での新しい営業手法を導入します。
この営業手法の導入が六つ目のポイントです。

まとめ

今後発展が期待できる「非住宅木造建築市場」ですが、従来発想や手法では、成功し難いというのも事実です。この新しい分野の「非住宅木造建築市場」を開拓し、確実に受注するための最新ノウハウを、ハウジングラボはご提供しています。このコラムで記した6つのポイントを具体策でご用意しています。

新築住宅需要が長期減少に向かう時代の流れの中で、戸建住宅の「リノベーション(新築と同等かそれ以上の価値を持つフルリフォーム)市場」の開拓と合わせて、住宅系とは全く異なる新たな「非住宅木造建築市場」の開拓という未開拓市場は魅力的です。一方でこの2つの新しい市場は、「既存技術で簡単に参入できた気分になれる」ことから、「何となく始めたが上手くいかない」と気づかれている会社が多いのも、2つの市場の特徴です。

これからは、戸建注文住宅市場をベースに、下記の3つの異なる市場で成功することが求められる時代へ急速に向かっていくと思います。
企業規模によっては、一挙に3市場を攻略するという会社、先ずは「戸建注文住宅市場」(別項参照)を新たな手法で再構築するという会社、或いは、今後新築住宅より成長が見込める「既存住宅のリノベーション市場」(別項参照)への参入を目指す会社、1件当たりの金額が大きな「非住宅木造建築市場」への参入など、各社の戦略、企業体制、体質によってお考え下さい。

1、戸建注文住宅市場
2、既存戸建住宅のリノベーション市場
3、非住宅木造建築市場

この3つの市場で、各社様に適したサポートを、ハウジングラボでは実行しています。

結果として、今後とも継続的に発展していく企業体質への転換を図っていただけるよう、住宅事業を新築とリノベーション、非住宅木造建築の3分野でサポートしています。
先ずは、お気軽に、お問い合わせご相談ください。

株式会社ハウジングラボ
代表取締役 一級建築士 松尾俊朗

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