生活体験の無い若いお客様の住まいづくりのポイント

住まいづくりの若年化が進んでいます。
長期に亘る超低金利政策も手伝って賃貸アパート/マンションの家賃がもったいないと結婚を契機に持ち家をと考える若いカップルが増えています。
ご両親様もそういう若いお二人を応援する場合も多く見受けられ増加中です。
そうなると結婚前に住まいづくりをご検討されることになります。
問題になるのはお二人に生活体験がないという「判断材料をお持ちでないお二人の住まいづくり」です。

何もわからないお二人に対して多くの業者は「賃貸並みの月々の支払いで持家が建つ」という「金額」のみで話をして契約を獲ることができ受注すること自体はいともたやすい話になっています。
「『本人も喜んでいる』のだからそれで良いでしょ。何か問題ありますか?」というのは、住まいづくりのプロとしてあまりにも次元が低いと言わざるを得ません。

賃貸共同住宅と注文住宅の違いが見えていない状態のままアパート感覚で住まいづくりを進められることの危険性です。
「仮住いの賃貸共同住宅の選択」と「生涯心豊かに暮らす持家の住まいづくり」の違いを認識しないまま建ててしまっては良くないというプロの住まいづくりの「良心」の問題です。
お客様側の暮らしに寄り添った住まいづくりを進めるべきです。

60年間の心豊かな暮らしの実現

人生100年時代に30才で家を建てると70年間。
さすがに100才というのはピンと来なくても90才はもはや現実の健康寿命の想定になりつつあります。
この60年間という時間を「住まいを楽しみ人生を楽しむ」心豊かな暮らしの時間として実現する責務が住まいづくりのプロ側にはあります。

「必ずこのお客様を幸せにする」「若い二人に良い人生を送っていただく住まいづくりをする」というプロ意識が必要です。

話がかみ合うようにするために

単身者としての自立した生活体験がおありになれば暮らしのシーンがまだ想像がつく面もありますが「双方とも実家暮らしで『家事一切は親任せ』」というカップルにご結婚後の暮らし、お子様が生まれた後の暮らしを正しく想像していただきご理解いただくのはほぼ不可能です。
話がかみ合わずが空回りしてしまします。

住まいづくりは「説明」よりは「体感体験」です。

OB施主の中でご結婚前に住宅を建てられてその後お子様が生まれたという方を探します。
出来れば職種や年齢がそこそこ近いという「ちょっと先輩レベル」のOB施主のお宅にお邪魔して「実際の暮らし」を見せていただき「新婚時代の楽しい生活」からお子様が生まれてからの「大変だったこと」と「こんなに楽しい日常の暮らしができていること」というようなお話を聴きながら観て、体感体験をして、質問もしていただくという機会を設けます。

新婚時代も子供が生まれてからも楽しめるように庭とのつながりを工夫して良かったとか、子供のおもちゃ収納をリビングに設けることを営業にアドバイスしてもらって本当に良かったとか住まいづくりの実際面についてOB様から直接聴くことができる機会を設けることが必要です。

●これから先の未来の暮らしをお客様と一緒に考える

OB宅訪問で触発を受けた直後からお客様は住まいづくりにたいしてリアリティーが出てきます。
注文住宅は現在と未来の暮らしにフィットした建物づくりですから、新婚時代にはこんなことをしたい、子供が生まれたらこんな風に過ごしたいとか先ず実現したコトを具体的に考えていただき暮らしのイメージを膨らませます。
その際にはモデル住宅をベースに「ここに暮らすとしたらという視点で「ここはこう変更したいとか」「これは不要」とか「具体的に自分たちが暮らす」ことをイメージして具体化しながら進めます。
この「自分たちが暮らすとして」という実生活を下敷きにしたリアリティー感覚を持ったモデル住宅での体感体験としていただくことが重要です。
そういうレベルのリアリティーがないと「あれもこれも全部採用したい」という根拠なき採用要求に陥ってしまします。
十分注意しましょう。

●リアルサイズのOB宅訪問

お客様ごとのリアルサイズのOB宅訪問、そういうリアルサイズモデル住宅があれば十分に活用して具体的な「お客様の住まいとして検討していただく段階」へ進みます。

暮らしの重心を何処に置くのかはご主人様、奥様それぞれが、そしてお二人が「これだけは実現したい」という部分を中心に検討を進めます。

営業と場合によっては設計も加わってお客様と一緒に住まいづくりを楽しみながら考えをまとめます。

●建築与条件の確認

建築予定地のサイズ、方位を考慮して住まいづくりを進めます。
土地が未決定の場合は資金計画から購入可能な敷地と最大実現可能な建物建築費から建物面積などを共有して現実的な枠組みに落とし込みます。
実現可能な範囲を確認しながら「夢を形」にしていきます。
現実的な建築計画の与条件内で楽しい住まいづくりを進めることが大切です。

●「これが実現できた」が大切

若いお二人には資金的な面も含めて様々な制約がある中での住まいづくりだと思います。
だからこそ「これを実現しよう」というモチベーションアップ、そして「これが実現できました」というクロージング、プレゼンテーションは重要ポイントです。

明るい未来の生活が見えるプレゼンを心がけます。

まとめ

お客様の若年化傾向の市場を上手に取り込むと同時に「お客様の暮らしを中心に考える暮らし視点の住いづくり」を実践して大きな差別化を図ります。
「生活経験が少ないかほとんどない」という若いお二人と住まいづくりの話ができる前提条件としてどうやって話がかみ合うようにしていくのか。そこが若年層の需要の取り込みのポイントです。OB宅を十分に活用しましょう。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

関連記事

住宅営業のツボは、お客様の暮らしの関心事を掴むこと

住宅設計者がお客様と面談する際は、常にお客様の暮らしの関心事を掴むように心がけます。住宅設計者がプラン作成に必要な情報を見いだそうとされるのは心情的によくわかりますが、プラン作成の基になる情報はお客様の暮らしに関する情報 […]

お客様が「迷わない」「選んでくれる」住宅営業活動のポイント

お客様が建築計画を延期、もしくは中止をしてしまう理由の中で『資金不足』は営業が解決できませんが、『土地を決めきれない』、『業者を選べない』、『住まいづくりに疲れてしまった』という原因は住宅営業のしかた次第で解決できます。 […]

「暮らし視点の住宅営業」は、大きな他社差別化になる!

今後の住宅市場は外形として捉えれば建築適齢期の人口減が進み、一方で空き家率は13.6%もあるという市場です。需要漸減化の「モノ」が余っている市場で「対価」を支払うだけの「魅力ある住宅」をお届けできるのかという課題が、住宅 […]

新着記事

新しい住宅事業のカタチ

縮小する注文住宅市場で選ばれる会社の共通点

Contents1 「家づくり」から「暮らしづくり」への発想転換2 1.日本の注文住宅市場で起きている構造変化3 2.多くの会社が陥る“従来型の対処”4 3.「自由設計」の本当の意味5 4.未来の暮らしを可視化するプロの […]

注文住宅のビジネスモデル転換

Contents1 縮小した市場で、何を変えるべきか1.1 1.多くの住宅会社が陥っている発想1.2 2.自由設計という言葉の誤解1.3 3.顧客と一緒に考え「プロが暮らしを設計する」視点1.4 4.顧客は自身の「未来の […]

画像・動画がメインの住宅営業ツールは営業の代わりに働いてくれる

実物が目に見えない「住宅」という商品を売る注文住宅営業は、お客様にお見せできる「モノ」が限られているため、「会話力」での営業力を重要視してきました。現在もこの傾向が根強く残っていますが、お客様にとって住宅に関する「言葉」 […]

工務店・住宅会社向け 展示場/見学会で少数でも本気度の高い集客方法

工務店/住宅会社のみなさんが、お客様と出会うまでという意味でのマーケティングは大きく分けると2段階あります。 ①地元への認知段階②行動喚起段階(集客、資料請求) 地元への認知段階は、オンラインでの情報発信や看板などのオフ […]

住宅展示場・見学会でのお客様を惹きつける資料の見せ方・伝え方

同じ資料を使ったとしても、住宅営業がお客様への資料の見せ方・伝え方の違いで、理解度や共感度、さらには自社への関心度に大きく差が出ます。今回は、住宅営業が住宅展示場や完成住まいの見学会でお客様を惹きつけて関心を高める資料の […]

今の時代住宅事業で『安ければ売れる』『付加価値があれば高くても売れる』という考えは、どちらも間違い

住宅営業にとって自社住宅の価格や付加価値は確かに受注状況に大きく影響します。従来の「他社より価格が『安ければ売れる』」や「他社より価格は少し高いけれど自社住宅は差別化できる『付加価値を持っているので売れる』」という考えだ […]