暮らし視点の住まいづくりにはメリット満載

各国の付加価値額GDPは下図のグラフのように、世界では2000年を1とした指数表示で順調に伸びています。
伸び率が高い(右上がりが急傾斜)は未だモノが充足していない発展途上国です。
モノが充足している先進国も母数が大きい割には順調に伸びています(右上がりが緩やかな傾斜)が、日本だけが横ばいという残念な結果です。

先進国は本来の自国民だけでは少子高齢化とモノの充足で日本と同じような環境になるはずですが、大きく異なるのは「移民」という「モノが充足していない人たちの流入市場」の存在が日本と異なっています。
人口に占める移民比率は、オーストラリア30%、カナダ21%、スウェーデン20%、ドイツ19%、アメリカ15%、イギリス14%、フランス13%に対して日本は2%です。
これが全てではありませんが、単純に考えるとこの差がGDPの差と言える面もあります。

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モノ充足社会の住宅事業

多くの先進国が15~20%くらい移民人口が占めているということは、それだけでもモノ未充足の市場がそこに存在していますからモノを売ること自体がビジネスの活力になります。
逆に日本ではモノ余り市場です。
住宅業界も例外ではなく2021年の空き家率は13.6%という数字にもモノ余り市場という姿が如実に表れています。
これを前提とした「未来の住宅事業」はどう対処すればよいのかというのが課題です。

異業種の成功要因

モノ充足社会の日本でも成功している企業があります。
iPhoneは携帯電話機の中でも高額ですが世界的に見ても特に日本でよく売れている商品です。
「それはIT業界のGAFAの話でしょ」と多くの日本人、住宅業界人は思い込んでその成功要因を自分事としてとらえていないようです。
iPhoneの成功は技術的な面ももちろんありますが、「自分好みのスマホに設定できる」ことも大きな成功要因です。
各自の好みのアプリケーションをダウンロードしていますからトップ画面は個人ごとに大きく異なるはずです。
ゲーム好きな人はゲームアプリを多く持つなど個人好みの個性的なスマホになっています。
つまりiPhoneは「個への対応」を行って成功しているということです。

Amazonも一度購入すると「この商品を購入する方にはこういう商品がおすすめです」と「個の顧客に対応したおすすめ」というビジネスで成功しています。

●注文住宅は本来究極の個への対応ビジネス

○LDKという日本でしか通用しない一律の考え方で日本の住宅は発展してきました。
もちろん耐震性や断熱気密性も向上し、設備も世界最高クラスの装備です。モノとしては充足極まってきています。
一方で誕生してから70年以上経過した○LDKプランではカバーし切れないほどに自覚症状がないまま暮らし方は変化しています。

●お客様の個の暮らしに基づく住まいづくり

生産現場でも医療現場でも3交代4交代勤務は当たり前の世帯もあれば、在宅勤務も急激に増加しているように、個の暮らし方に対応することが要求されている時代ですが、本当にお客様の個の暮らしに我々は対応できているのでしょうか。
「自由設計」「フリープラン」対応は、ただ「お客様の言いなり」対応をしているに過ぎないのではないか。
「お客様ご自身が自分の暮らしはこうだからこういうプランにしてほしい」と自己分析された内容に基づく情報でしょうか。
そのようなスーパーマンのようなお客様は皆無のはずです。
断片情報や思いつき、Instagramのカッコイー部屋へのあこがれとかが主体の根拠希薄の情報や、逆に住宅会社の押し付けプランになってしまっているのではないかと疑ってみる必要があると思います。
何度プラン変更しても決まらないとか、お客様のあれもこれもと次々に要求がでてきて面積オーバーになって価格が合わないとかは、その結果ではないでしょうか。

●暮らしとはなにか

個の暮らしへの対応と言っても、そもそも暮らしとは具体的な姿かたちが見えず理解しずらいものです。
そこで「暮らしを因数分解」します。

「場」と「コト」と「登場人物」の要素で因数分解すると暮らしの実態が見えてきます。

「リビング(場)」で「夕食後ご主人がソファーに寄りかかりながらスマホを見て、お子様はそのソファーを机にして絵本を読んでいる(コト)」、その時「奥様は(登場人物)」別のソファーで本を読んでいる、というように「場」と「コト」と「登場人物」で因数分解すると暮らしの姿が具体的に見えてきます。

●暮らしの最適解

暮らしを因数分解することで、お客様にとって最適な夕食後の過ごし方(暮らし)をご一緒に考えることが可能になります。
ご主人が寝そべってTVをみるのに現状のソファーが良いのか、それともリクライニングの椅子の方が良いのか。
奥様とお子様は床で良いのかという風にお客様とご一緒に考えて最適解を求めていくことができます。
「暮らし視点の住まいづくり」という個々のお客様へ対応した住宅事業が実現できるようになります。

まとめ

モノ充足社会の注文住宅事業は個々のお客様の「暮らし視点の住いづくり」で対応するというのが今後も成長していくための考え方です。
注文住宅の本質でもある「お客様にフィットした付加価値の提供」は住宅事業のこれから先の未来の姿です。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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