住宅の価格アップに対応したプランを考える

住宅の価格が上がっても、従来客層のお客様では予算がこれ以上伸びないという場合が多発します。
これに対応しようとすると「小さなプラン」になってしまい、坪単価はさらに上がったように見えて受注が遠ざかります。
また、価格を意識しすぎると、これといった特徴もつけられない平凡な小さなプランになりがちです。
住宅の価格アップに対応した新たな価値を持った魅力的なプランが必要です。

暮らしやすい住宅は「コンパクトに広く住める家」

暮らしやすい家というのは、動線が短く生活ストレスが無いということに加えて、家族間のコミュニケーションが上手くとれることです。
室内で普通の声で会話の詳細が聴きとれる距離は3.6m以内です。
つまり、暮らしやすい住宅の素養の第一は、「コンパクト」であるということです。
それに対して、一般的には「お客様の要求はより広く、もっと広く」です。
暮らし視点で考えて実際に食事の支度をしながら調理器具や食器の出し入れを体感体験していただくと、案外「広いことは良いことだ」ではないことに気づいていただくことができます。
ただ、広さ感は必要です。

狭いか広いかではなく、「狭く感じる」か「広く感じる」かの違いです。
従って「コンパクトに広く住める家」がテーマになります。

「コンパクトに広く住める家」は無駄スペースを削減する設計が基本

廊下面積は「ゼロチャレンジ」します。
さすがにゼロは苦しいというのは分かりますが、1・2階合わせて1畳以内は十分に可能です。
平面図を見たときに「廊下」と認識させない工夫も必要です。


図面の表現もそうですが、実際に有効なスペースとして使っていながら、時として廊下の機能も果たしているような住宅設計の工夫です。
ユーティリティーや洗面脱衣のスペースの組み立て方と見せ方がこれに当たります。
敷地形状から細かく何回も出隅と入隅を繰り返して、凸凹凸凹のプランを見かけますが、コストアップの要因であるだけでなく、使い勝手が本当に良いのか疑問があるプランになっていると思います。
矩形ですっきりとまとめるか、曲げるにしてもシンプルなL型などでまとめます。
無駄スペース削減設計が基本です。

●キッチンとダイニングは機能的に、リビングスペースは大きく

キッチンは、機能的で調理をされる方ご自身の「調理の流儀」に則った合理性で設計します。
一般的な合理性ではなく、固有名詞の合理性です。
ダイニングはソファーダイニングという手もあります。
ダイニングとリビングのソファーを兼ねてコンパクト化すると、大きなスペースを残すことが可能になります。

LDKを律儀に取るのではなく、新しい暮らし方を触発してみます。
むしろ、リビング3~5点セットを置く暮らし方より、「ゴロゴロ」して過ごす方が良いという方が多く、従来のリビングの感覚で無理やりリビングセットを配置するよりは、「フリースペース」を大きくとるといった触発が有効です。

●鏡の壁と透明な間仕切りは、明るく拡がりのある空間を生み出す

鏡は倍の空間と光をもたらします。
仮に8畳のリビングであっても、壁の一面の何割かが鏡だと広々と感じます。
脱衣と風呂の間の間仕切り壁とドアを透明にしてしまうと、この2つの空間は一体化し、本来コンパクトな空間も狭いと感じることなく広いと感じていただけます。
壁付収納の折れ戸を透明の引き戸に変えるだけで、収納スペースを室内に取り込むことが可能です。
寝室などで良く採用する手法です。

●地窓を使って外部空間への抜け感を作って広さを感じさせる演出

床面からの地窓は、隣地までのわずかなスペースでも室内側に取り込んでくれるため、思った以上に広さ感を生み出すとても有効な手法です。
しかも、隣地からの視線も避けるため、地窓を設置する高さを外部からの視線を想定して調整すればプライバシーも保てます。
取り入れた外部のスペースはわずかですが、人間の眼には地窓の左右の視線の抜けも含めて空間を認識していますから、結構広く感じるという心理効果は大きいと思います。

●リビングとテラス/ウッドデッキは一体空間化で伸びやかに

室内側と屋外側で床面の高さを合わせれば、視線はフラットアウトして伸びやかで広く感じる空間を生み出せます。
伸びやかに空間をつなぐ手法は、室内の床壁天井がそれぞれ屋外と連続して段差を無くすという、可能な範囲でフラットアウトさせることです。

「コンパクトに広く住める家」は、こうした設計の工夫で対応可能です。

まとめ

住宅の価格アップが続く環境では、お客様の「予算枠」を営業努力で拡大できないケースも出てきます。
こうしたお客様は、住宅が多少小さくなることはご理解されていると思われますが、思いの外小さくなってしまったという心象を持たれると受注が難しくなります。

全ての客層の住宅会社で住宅の価格は上昇していますので、住宅価格が低い住宅会社と競合に陥りがちです。
同じ値段なら少しでも大きい家の方が良いという不毛な結論をお客様が出されないように、「コンパクトに広く住める家」で触発しましょう。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

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