住宅営業に役立つ持ち物とは

住宅営業の持ち物についてですが、モデル住宅内、あるいは内見会(完成住まいの現場見学会)などの住宅内で営業活動を進めるために、有効に使う持ち物について考えてみたいと思います。

モデル住宅を有効に使おうとすると、本来、初回面談から始まって様々な受注までの段階で効果的にモデル住宅を活用する場面が様々想定されますが、実態として「モデル住宅を案内する」のは初回面談の1度だけということが圧倒的に多くなっています。
本来これではあまりにもモデル住宅の使い方がもったいないのですが。

モデル住宅を有効に使って、お客様の住まいづくりを前進させるためにとても大切で絶対必要なツールがあります。

それは5m以上のメジャー(巻き尺)です。

メジャーはお客様を引き寄せるツール

「LDKはとにかく広く、特にリビングは広ければ広いほどよい」とおっしゃるお客様はたくさんいらっしゃいます。
確かに良いリビングを作るためには開放感も必要ですが、住宅内で家族が最も多くの時間を過ごすリビングには、「会話が聴き取れて相手の表情を読み取れる距離の限界」もあります。
普通の声の大きさで話をして、充分細かなことまで聴きとれる距離は4m以内程度です。
また、親しい人が4~5名で落ち着ける空間も4m四方程度です。
8畳間くらいがちょうど良いサイズということになりますが、このサイズは図面上でお客様が見ると、「小さい」と却下されてしまうサイズです。

ところが、モデル住宅内でご主人様にソファーに腰掛けていただいて、メジャーの片方をお持ちいただき、4m以内程度(2間)離れた距離で奥様と普通の声で話をしていただいた後、5m程度離れてみると会話にならないということが体感体験できて、「なあるほど」というリビングのサイズ感を共有化できます。

会話が良く聞こえたかどうかというお客様のアナログ感覚を、メジャーで「4m以内が最適」というデジタルに置き換えてコンセンサスを得ることができます。
もちろん、家族全員が8畳間にずっといるとそれなりにストレスを感じてきますので、「開放感」としてDK空間への広がりや外部空間への拡がりも重要です。
その開放的な空間を、図面上で「あそこの壁まで7m、庭の外の植栽まで10m」という説明も、4m感覚をアナログとデジタルで理解されたお客様は、開放感という体感体験をデジタル数値だけで理解できるようになっています。

測ることでアナログ感覚をデジタル化

ご夫婦が揃ってキッチンに立たれる場合も、キッチンと食器棚の間の間隔をご夫婦が交差しても、「この間隔なら問題ない」とご判断された距離をすぐにメジャーで測って、「1.1mですね」と合意します。

書斎のカウンターの奥行も、「デスクトップの画面があって、その前にキーボード、さらにその手前に資料をこんな感じで広げたいから」と実際に書斎で体感体験をしていただき、これで良いというサイズ感の了解をいただいた「感覚距離」をメジャーで測ってデジタル化して合意します。

モデル住宅の案内は、曖昧な「いい感じ」を得る場だと考えている住宅会社、住宅営業マンが多いようですが、ここに住宅営業担当者の持ち物としてメジャーを有効に活用すると、例えば「初回面談時からリビングのプラン決定」、「キッチンのプラン決定」、「書斎のプラン決定」と大きく受注に向けて前進します。

●モデル住宅で体感体験してメジャーで測る

1/100の図面をああだ、こうだといじくっていても、何度も変更になってプランは決まりません。
住宅という商品は、「3Dの空間の中にお客様が入って動き回る」という世の中で唯一の商品ですから、モデル住宅を「いい雰囲気」という曖昧なまま終わらせずに、せっかくその3D空間で体感体験した「いい感じ」というアナログ感覚をメジャーで測ってデジタルに置き換えることで「プラン決定」へと昇華していきます。

住宅内部のどこでも必要な部分はWDHの3サイズをどんどん測ってお客様と住宅づくりを楽しんで進めて行きましょう。
そういうことができるツールがメジャーです。

●使い勝手も測って納得

お客様の身長などによっては手の届く高さの範囲が異なります。
上部収納の扉に手が届いても、モノの出し入れができないとか、レンジフードに頭をぶつけるとか、実際の使い勝手もモデル住宅でしか中々体感体験はできません。
すかさず測って、「この高さまでの収納が有効ですね」とか「5センチほどレンジフード上げましょうか」などと、お客様の暮らしに則したモデル住宅の案内はお客様を引き付けます。

他社にない大きな住宅営業の差別化です。

●小さな工夫もメジャーがあると大きな営業効果に

ニッチ壁の奥行などを測ることで、お客様は具体的に何をここに置こうか、とご自身の暮らしをモデル住宅に持ち込んで考えるというリアル感がでます。
バリアフリーで問題ないが少し段差がある場合でも、段差が1.5cmだとか体感体験とデジタル数値でご納得いただきます。

●常にメジャーをポケットに

モデル住宅内でのメジャーの有効活用について主に述べてきましたが、お客様宅への訪問時、ショールームへの同行時など、あらゆる場面でメジャーは有効な住宅営業のツールです。
住宅営業マンのポケットには、常時5m以上のメジャーを入れておきましょう。

まとめ

「好き嫌い」、「良い悪い」の直観的なお客様の判断はアナログ感覚です。
とても重要な感覚ですが、これに振り回されているのが住宅営業かもしれません。
メジャーで測ることでデジタル化でき、お客様の直観的な感覚と確かな数値でお客様と合意可能な状態が作れます。
小さな合意の積み重ねが住宅受注に直結しています。

《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士

関連記事

間違いだらけの注文住宅事業

過激な表題ですが、正確に表現すれば、注文住宅を発注する側のお客様が軸を持たずに住宅会社へ注文を出しているため、予算は低めで、要求はランダムかつ過大になりがちです。それに振り回されているのが現実だと思います。 注文住宅は、 […]

住宅営業の基礎力を身に付けるために

住宅営業には会話力、プレゼン能力など様々なスキルが求められます。もちろん、自社住宅商品や住宅建築に関する知識は前提として必要ですが、最初に身に付けるべきスキルは「お客様に見られるスキル」「お客様を見るスキル」です。 Co […]

「暮らし視点の住宅営業」は、大きな他社差別化になる!

今後の住宅市場は外形として捉えれば建築適齢期の人口減が進み、一方で空き家率は13.6%もあるという市場です。需要漸減化の「モノ」が余っている市場で「対価」を支払うだけの「魅力ある住宅」をお届けできるのかという課題が、住宅 […]

新着記事

【住宅営業が持つべき視点】変化し続けるお客様の暮らしを見つめる視点

住宅営業やお客様ご自身も気づかないうちに、家族関係・夫婦関係・親子関係などの家族とのつながり方やリビングダイニング・それぞれの部屋での過ごし方が従来とは変化ししています。こうした変化に対応してこそ、お客様中心の住宅営業と […]

「何でもできます」「自由設計ですから」では「何も売れない」

「注文住宅」という言葉は、ある意味で誤解されたまま世に広まっています。お客様は、「自分が思うとおりに家を建てられる」と思われている部分があり、住宅会社・工務店も「自由設計ですから」と、お客様のご要望のままに設計・施工され […]

中高級住宅は、お客様中心の「時間の質」向上ビジネスへ

お客様にとっては、数ある住宅会社の住宅展示場や完成住まいの見学会に参加しても、従来通りの営業対応ではローコスト系の住宅と「価格の割には大差がない」ように伝わってしまっています。価格の割には大差がなく伝わってしまう原因と中 […]

「不満の解消」と「満足の向上」は似て非なるもの

日本は少子高齢化が進み、人口は急激に減少しています。つまり、住宅建築適齢期の人口も減少しているということです。さらに、空き家率の過去最高の更新や持ち家・賃貸住宅(ともに戸建て住宅・マンション)、リノベーション・リフォーム […]

住宅営業のご夫婦への対応のポイント

ご主人様が主導し、奥様は夫の意思に沿う夫婦関係は、現在は減少傾向にあります。家族や夫婦関係の在り方や家事・育児などの行動も変化しており、ご夫婦関係を見極めずに、従来の「ご主人様が家庭内権力者」として対応していると、ご夫婦 […]

受注のコツはスピード感

住宅営業が受注を獲得するためにはスピード感が大変重要です。住宅営業活動上のスピード感とはどういうことを指すのでしょうか。自社住宅の特長をお客様にご理解いただいて受注に向かう上で必要な、住宅営業の「スピード感」について考え […]