【住宅営業のコツ】受注成否は伝え方次第

現在、日本で建築される住宅(低価格帯~高価格帯住宅まで)は、耐震等級・断熱性能等級・耐火等級などに代表されるハード面では高いレベルの基準をクリアしている住宅が多くを占め、お客様にとって住宅のハード面の良さは「当たり前」と捉えられています。「当たり前」のことを「これ、いい!欲しい!」に変える伝え方について考えてみます。

伝える順番を変える

多くの住宅営業担当者は、初期段階に自社住宅商品の特徴として、地震や火事に強い・健康快適を叶える断熱気密、工法・構造、素晴らしい設備・部材や暮らしやすい生活動線など、住宅そのものの説明をを一生懸命説明されています。そして、土地の有無や広さ、何部屋欲しいのか、キッチンはどのタイプにしたいのか、などをお聞きして、プラン提案に持ち込む、という流れをとっています。このような営業方法は、どの工務店・住宅会社でも説明されている内容ですので、お客様側からすると、「変わり映えがしない営業」となっています。したがって、「差がよくわからない」ため、価格、好みの設備などを総合的に判断して工務店・住宅会社を絞り込んでいるのが現状です。

心を掴む内容を最初に説明する

住宅営業担当者は、自社住宅商品の特徴としてハード面を推していますが、お客様は住宅のハードで心を掴まれるとは限りません。多くのお客様の場合、「どの工務店・住宅会社の住宅でも国が定める基準をクリアしている住宅なら問題ない」という認識であり、琴線に触れる特徴ではないということを押さえておかなければなりません。

では、お客様の心を掴む内容は何なのか。
答えは、「お客様の価値観に焦点を当てた」内容を説明することです。

価値観とは、何を重視しているかという評価・判断する時の基準となるものです。何かを購入する際は、「自分がしたいコトを叶えてくれるモノを購入する」ということです。住宅営業に当てはめてみると、住宅での暮らしや楽しい時間(コト)が見えない・わかっていない状態での住宅のハード(モノ)の説明は、お客様の住宅購入の判断材料にはならないということです。初期段階での住宅のハードの話は、お客様にとっては必要な内容かもしれませんが楽しい話・重要な話ではないのです。

つまり、初期段階でお客様に説明すべきは、住宅のハード面ではなく「自社住宅で叶えられる楽しい暮らし」なのです。

心を掴んだ後のハード訴求は効く

新しい住まいでの楽しい暮らしという他の工務店・住宅会社ではほとんどされていないことを聞いたお客様は、その時点で自社に他社よりも関心を寄せてくださいます。この時が自社住宅のハードの特徴を伝えるタイミングです。

“「この楽しい暮らし」を実現しているのがワイドスパンの大空間を作りながらも耐震等級3という自社工法であり、G3の温熱性能が提供する「真冬でも素足で過ごせるこの環境」”

などの「楽しい暮らし」を支えるのが自社住宅のハード、という説明の順番です。その先には設計という「住宅というモノのカタチ」を決めるプロセスがあり、設備部材という「モノ」を選定する際にはインテリアコーディネーターががサポートし、その先には最高の品質管理を行っているモノづくりのプロ集団である工事部門が控えているとご説明します。

そうすることによって、楽しい暮らしが実現できるこのハードは良い!という認識になります。
「コトからモノへ」の順番が大切なポイントです。

楽しい暮らし(コト)を伝えるのは難しい?

お客様が楽しいと思われる暮らしを伝えるのは難しいのでしょうか。確かに、お客様が「楽しい」と感じられるコトは千差万別です。これを把握して伝えるのは難易度が高いかもしれません。しかしながら、「楽しい暮らしの例」をお伝えして「お客様に考えて」いただいて、「想像していただく」ことは可能です。さらに、想像していただくことは、住まいづくり意欲を刺激し、ワクワク感をアップさせます。

「自分が暮らすとしたら」という視点

お客様に伝わる最も有効な手段は、「体感体験」です。
住宅展示場や完成住まいの見学会などで「自分が暮らすとしたら」という視点で見学していただき、昨日されたことを再現していただきます。「どこ」で「誰」と「何」をしたかです。ご夫婦で料理をされた方には、ご夫婦でキッチンに立っていただきます。料理をする、盛り付ける、食器を洗う/しまう、などです。お二人でキッチンに立ち、ご主人様が調理をして奥様が料理を盛り付ける場合の立ち位置を例に挙げると、お二人が並んだ立ち位置が良いのか、それとも向かい合った方が楽しくキッチンで楽しくコミュニケーションが取れるのか、といったように「キッチンは楽しいコミュニケーション場」を基点に体感体験していただくと、ご自身の楽しい暮らしを想像してくださいます。

バリエーションをお見せする

キッチンでの楽しいコトを体感体験していただく際に、「どのようにお二人でキッチンに立ちたいですか?」とお聞きしても答えられないお客様がほとんどですので、まずは、楽しいキッチンでのシーンを画像でお見せすると、お客様は「自分たちだったら」と考えてくださいます。ご夫婦で楽しく会話しながらキッチンに立っている、お子様も一緒に調理している、ママ友・パパ友たちとのキッチンを囲んでのホームパーティー、お子様が調理をしているのをご主人様がダイニングで楽しそうに見守り、会話しながら待っている、などの画像です。具体的な楽しい暮らしのシーンの画像は、お客様を触発し暮らしの楽しさが伝わります。「言葉で伝える」よりも「わかりやすく見せる」ことが重要です。

まとめ

極初期段階で説明する耐震等級・断熱性能等級・耐火等級などの住宅のハード面については、「多少の差はあれど問題ない」と認識されてしまいますが、「楽しい暮らしができる」と認識した後から聞くハードの説明は「この楽しい暮らしを実現させるのがこのハードなら、これが良い」という認識になります。そして、このような「楽しい暮らし(コト)」→「住宅のハード(モノ)」の住宅営業は、極一部の住宅会社を除いて、ほとんどの工務店・住宅会社は実践していませんので、大きなチャンスです。

ハウジングラボでは、お客様の「納得」と「満足」を高めて受注を獲得する住宅営業手法をご用意しています。新人でも短期間で修得可能な「いい暮らし実現営業」、他社従来営業とは大きく差別化した“この家が欲しい”を引き出すコミュニケーションができる「気づき共感営業」、ハイエンド層のお客様に対応可能な「暮らし触発営業」などす。また、住宅事業を安定継続/発展するための、「商品」「商品開発」「集客・マーケティング」「営業」「設計」「マネージメント」の分野からアプローチする注文住宅事業の「総合ビルドアップサポート」やコンパクトな工務店様・住宅会社様の住宅事業をサポートする「お役立ちLabo」をご用意しています。

是非ご活用ください。

■住宅コンサルティング
https://www.housing-labo.com/consulting
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《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
営業企画課長 眞田 智子

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