5~7万円/坪価格アップ下の住宅営業と商品運用
2022/04/10

春は値上げのシーズンですが、住宅建築原価も自助努力の限界を超えて5~7万円/坪の価格アップは避けられないという住宅会社/工務店が多くなっています。
「価格が上がったから売れません」ということは口が裂けても言えないのが営業です。原油価格の高騰などで不透明感はありますが、景気は回復基調です。やりようによっては大いに増販余地があります。
Contents
「上位客層へシフト」と「従来客層への対応」

価格が上がれば、より上位客層の価格帯へ対象客層が動いてしまいますから、坪単価が上がった価格帯の新たな客層への対応が必要です。
この上位客層の中でも、従来その客層に対応していたブランドの住宅会社/工務店がいるはずです。その客層への否応なしの参入ですから対策が必要です。まず冷静に考えれば、従来からその上位の客層に対応していた住宅会社/工務店は、同じ価格なら小さな家しか建てられないはずです。同じ価格なら広い家の方が良いというアドバンテージがあります。一方で、「やっぱりちょっと安っぽい」と思われがちですので、別のアドバンテージを持つようにします。
その具体策は、先ずお客様のお話をよくお聴きして、お客様を徹底的に受容れる姿勢を実行します。
全てを受容れるが言いなりにならず、お客様の実現したいコトを理解し、お考え(価値観)に沿った対応をします。すべての住宅会社/工務店は、お客様の「いいなり」かお客様の話をあまり聴かずに「自社の特長を話したがる」傾向がありますので、住宅営業の対応として「まず、お客様のお話をよくお聴きすること」で相当なアドバンテージを獲ることができます。
問題は「従来客層に対しての対応」です。
住宅価格が上がってもお客様の支払い能力は変わらない状態

従来客層は3000万円で40坪くらいの住宅を建てていたのが、同じ支払い金額なら35坪程度にしかならないというのでは、下の客層を相手にしていた住宅会社/工務店が上の客層に上がってくることになるので苦戦しそうです。仕様を下げたりしたところで、それならより安い方へということになりそうです。別の付加価値を生み出すことが求められます。つまり商品開発と住宅営業がリンクしないと苦戦を強いられます。
従来客層を下位の客層を相手にしていた住宅会社/工務店に奪われないようにするという「守りの営業」には、防衛用の武器が必要です。ヒントとして、「コンパクトな家に広く住む」という商品開発の視点があります。コンパクトでも広く感じていただくための様々な工夫と併せて、コンパクトだから動線も短く暮らしやすいを兼ね備えた住宅の商品企画です。
このような商品の開発に効く要素/コンテンツは、「具体的ノウハウ」に当たるため、ここでは開示できませんが、こうした考え方の商品企画は営業対策として非常に有効です。
●攻めと守りで販売価格上昇を好機に転換

より上位の客層に対しては価格優位さを上手に使いますが、これが通用するのは半年です。従来その客層に対応していた各社も様々な手を打ってくると思います。好機到来時の「攻められるときに攻めておく」というのが営業の基本です。
新しい市場というワンランク上の客層を掴みます。また、従来客層を手放さないというためにも、商品企画で「提供する付加価値の魅力」を再構築することと、その「魅力を伝える力=触発力」が必要です。
「魅力を伝える」のは売り込みではなく「触発」することですから、「お客様に気づいていただく」という「お客様に気づいていただきそれに共感する」素直な営業方式の「気づき共感営業手法」が適しています。
こうした好機が続くのもこの春の需要期から半年です。そのくらいの期間で決着がつき、市場で「あの会社はこの程度の会社」とレッテルを貼られてしまうか「最近評判がいいね」というブランドを高めるのか評価が決まります。こうした変化は案外気づかぬうちに静かに市場での評価が浸透し、気がつけばジワジワと後退してしまった会社といつの間にか伸びてしまった会社に分かれます。
現在のような価格上昇場面で住宅会社/工務店の新陳代謝が良く起っています。30年振りの価格上昇場面です。結果としての勝ち組と負け組に分かれるのには原因があります。適切な対策を打ったか打たなかったか、さらに好機を逃さす対応したかかしなかったのかというタイミングということも関係してきます。注意してください。
記事「住宅の価格アップ時代には「気づき共感営業」が強力な武器になる」
●特に初回面談に集中力が必要

自社の坪単価が上昇したとしても他社も同じように上昇しています。しかも、今回のような資材高という状況はすべての客層で同じで価格上昇局面です。ただし、客層が変われば住宅会社/工務店のそれまで対応していた客層と新たな客層で「ズレ」が生じます。ここがチャンスです。特に重要なのは、改めて「初回面談」です。最も明るく、最も溌溂としてお客様と相対してください。先ずは目の前の新規客に全力を尽くすことです。
まとめ
春の需要期を迎えて確実にお客様は動きます。不透明感があるとはいえ景気は上昇局面です。
この春の需要期を捉え損なうと他社に後れを取ることになります。価格上昇面を冷静に、そして機敏に対処すれば、上昇気流を掴むことができます。昨年と同じことをしていては沈みます。具体策が必要です。
《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
代表取締役社長 松尾俊朗
一級建築士