【競合対策の基本①】他社の悪口はタブー

住宅営業を進める上で必ずと言っていいほど存在する競合他社への対策は、受注を獲得するためには重要な対策のひとつです。しかしながら、間違った対策を打つと自分(自社)の信頼を失ってしまう危険があります。お客様は、その話をどのように聴いておられるのかをお客様の視点で考えてみると、「お客様がネットで調べて気に入ったから見に行ってみた会社」のことを「けなす」発言は、「お客様ご自身をけなす」ことだと受け取られても致し方ありません。
競合他社をけなすことは「営業のストレス解消」にはなるかもしれませんが、営業的には逆効果です。今回は、競合他社を賞賛しつつ差別化を図り、自社の信頼を得て受注を獲得するための競合対策について考えてみます。

悪口と捉えられる競合対策は自社の評価が下がる

従来、お客様の動向の主流は、総合住宅展示場に、まず行ってみて、「気になったモデルハウスに入ってみる」、「全てのモデルハウスを見て回る」など、現地で外観やパンプレットを見てから実際に見学するモデルハウスを決めるというパターンでした。しかしながら、現在は、総合住宅展示場や完成住まいの見学会の見学に行こうと考えているお客様は、ご自身が見学する(したい)工務店/住宅会社の候補を事前にホームページやInstagramなどのSNSで情報収集し、「これが見たい」というある程度の好みに合った工務店/住宅会社のモデルハウスを見学するという動向に変化しています。
お客様が「気になった」「好みの住宅」だから見学した他社住宅のことを、マイナス面を強調して「他社住宅は良くない」ことを伝えるやり取りは、お客様の感性や思考を否定していると同じことです。人は、自分の好きなモノやコトを悪く言われると「面白くない」ものです。気分を害することを伝えてくる住宅営業には、「この住宅営業は自分のことをわかってくれないから話すのをやめようかな」と良い感情を抱かないばかりか、敬遠する傾向にあります。

信頼を失くす他社批判

「A社は金もうけしか考えていない」、「B社の住宅は大したことがない」など、本当に根拠があるのか怪しい、敵意に満ちた批判や攻撃は誹謗中傷と捉えられ、自社のブランドを傷つけ、営業の人間性も疑われてしまいます。

けなすつもりは無くても誹謗中傷

「C社は安いが安いなりでモノが良くないですよ」「D社の断熱性能はウチより低いからおすすめしません」など、自社住宅への誇りがある故に「自社住宅が1番良い住宅」「他社住宅は良くない」ニュアンスが表出したやりとりは、「他社住宅に対する誹謗中傷」と捉えられますので、避けるべき発言です。

競合他社の悪口を言わない応対のポイント

競合対策のポイントは、「他社をけなさない」ことが大原則です。

同業他社を認め尊重する

競合他社へのリスペクトは住宅業界に限らず営業の常識です。

2020年、F-1から撤退を表明したンダが、最終戦で逆転勝ちを収めてF-1ドライバーズワールドチャンピオンシップを獲得しましたが、その最終戦で1964年のF-1初参戦から2021年までの競合メーカー各社に対して「ありがとうフェラーリ」「ありがとうロータス」・・・・・最後に「ありがとうトヨタ」と感謝の言葉を東京青山の本社に掲示していました。強い競合各社がそこにいてくれたから「良い車を創れた」というプロフェッショナルとしての感謝の言葉です。
それに対して「おめでとうホンダ」とトヨタなど多くのメーカーがホンダへエールを送り返していました。
互いにしのぎを削って切磋琢磨しているうちに「相手を認め尊敬する」プロ同士のリスペクトがあったようです。

これに比べて住宅業界では他社のある一面を捉えて攻撃するようなことをしているようではその会社と営業は信用される存在になどなり得ません。
意識しているのか無意識なのかに関わらず、つい、自社より劣っている部分を捉え叩き潰そうとする攻撃をしてしまいがちですが、他社への攻撃は百害あって一利なしです。むしろ、競合他社を褒めて共感の意を伝えることで、「褒めている部分が自分が思っていた部分と同じ」「他社を褒めるのは自社住宅に自信と誇りがあるから」などの自社への評価が上がります。褒めることでお客様は安心して競合他社のどこが良いのか、気に入ったのかを教えてくださり具体的にその内容がよくわかります。原因さえつかめれば対策を打つことは可能です。

競合他社へのリスペクトはプロの住宅営業の常識です。
競合他社を褒める際のポイントは、やみくもに褒めるのではなく、他社の長所をベースにして分析しておくことが必須です。

客観的に分析する

競合他社商品を理解して研究するのは住宅営業の基本です。住宅会社によっては他社との比較検討を会社として行っているところもありますが、多くは商品開発部門が用意した資料ですから「我田引水」「自己満足型」「相手を矮小評価」する傾向が多くの場合で見受けられます。競合他社の住宅が、お客様にとってどこが魅力的なのかを研究します。この時のポイントは、「良い点、長所を探す視点」で調べることです。自社とは異なる「良い点・長所」が見えてきます。この競合他社の「良い点・長所」への対策こそが、お客様に自社商品を選んでいただくポイントを見つけ出すことに繋がります。
この分析は、自社住宅の良さを客観的に把握し、お客様に訴求する際に大変有効です。

他社の長所を気を入っているお客様への対応

お客様が「競合他社の住宅を気に入っている」という情報を掴むと、急に「競合他社対策」という「お客様への視線を競合他社へ切り替え」てしまう営業が多く、社内の営業会議で「競合対策」という言葉は出ても「お客様の関心事はそこにあったのか」という「お客様を中心に置く視点」が完全に吹き飛んでしまうという、「自社を中心に置いて競合他社をたたく」考え方に移行してしまいがちですが、競合他社を褒めることをおすすめします。

お客様を知る

競合は、お客様の関心分野を把握する絶好のチャンスです。お客様が競合他社の住宅の「気になっている」部分は、どの工務店/住宅会社で建てるのかに関係なく、住宅に対して関心をお持ちの部分です。他社研究での他社の利点と自社の長所を冷静に勘案して、「こういう組み立ててはどうだろうか」というお客様視点で、お客様のためになる具体策を提示し、モデル住宅等で体感体験していただきます。競合他社と自社との違いをお客様にとっての良い点・長所で訴求するポイントを検討すると大きく受注へ前進します。

競合他社を褒めるとお客様は安心していろいろ話をされる

競合他社を褒めるための前提条件は、前述の通り「他社住宅の研究は相手の長所視点」でよく理解していることです。この視点があれば、余裕をもってお客様へ競合他社を褒めることができます。それを見ているお客様は「褒めるポイントも私が良いと思った点と一致しているし、よほどこの営業は自社の商品に自信があるのだろう」と営業の話をよく聴いてくださるようになります。競合他社の長所でお客様がご自身のお住まいで何を実現したいのかが見えた部分も共有化し、そこを別角度で満足していただく方策を考えることも可能になります。

受注に大きく近づくのが正しい競合対策です。

「他社をけなさず」「自社商品の自慢話」「営業の自慢話」をしない

「他社をけなさない」のはプロの営業の基本的マナーでもあります。
それと同じレベルで、「どうだ、凄いだろう」的な自社の自慢話や「俺はこういうことも知っている」的な営業自身の自慢話は一切ご法度です。
ベテランほど陥りやすい自己陶酔型営業です。本人の自覚なく、こうした「けなし話と自慢話」に陥ってしまうパターンがありますので、周囲の同僚が注意してあげてください。

これも自身を中心に置いて競合他社攻撃という「おーい、お客様は何処に置いてきたの?」という負けパターン営業です。

完全無欠の住宅商品は存在しない

自社商品についても、研究をすればするほど良い面と問題個所、不十分カ所が見えてきます。だからと言って、競合他社に負けるというものでもありません。完全無欠な住宅商品はありません。自社商品の良い面を活かして「お客様の暮らしを中心に考える」という視点が相対的に勝って受注できるというのが現実です。

まとめ

競合時に他社を攻撃するのは、受注にはつながらず、逆に営業活動を進めていく上で悪影響を及ぼします。
競合他社の長所を理解し、共感して、リスペクトする。そして、自社のことも客観的に把握して、お客様にとっての良い点・長所で対策することで、信頼を得て受注につなげる営業活動を進めることができます。

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《執筆者》
株式会社ハウジングラボ
営業企画課長 眞田 智子

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