住宅会社の未来を切り拓く「集客と受注」戦略——市場変化に適応するために

近年、住宅業界はかつてないほどの変革期を迎えています。従来の集客戦略や営業手法では通用しなくなり、住宅会社や工務店は、新たな時代に適応するための「集客と受注」の再構築が求められています。

人口減少や少子高齢化、ライフスタイルの変化、さらにはデジタル技術の進展により、住宅を購入するお客様のニーズや行動パターンは大きく変化しました。これに対応できない住宅会社・工務店は、市場競争から取り残されるリスクが高まっています。

本コラムでは、現在の住宅市場の現状を分析し、これからの時代に適した「集客と受注」の具体的な戦略を考察します。市場の変化を的確に捉え、新たなターゲット層を見極めることで、住宅会社・工務店が持続的な成長を遂げるための道筋を明らかにします。

住宅業界の現状と変化する市場環境

住宅業界はこれまで、右肩上がりの市場成長を前提としてビジネスモデルを構築してきました。特に高度経済成長期以降、日本では「マイホームを持つこと」が一つのステータスとして定着し、住宅需要は安定して拡大を続けてきました。

しかし、近年では住宅市場を取り巻く環境が大きく変化しています。日本の総人口は減少傾向にあり、それに伴って住宅需要も縮小しています。加えて、家族構成の変化や価値観の多様化により、従来の「ファミリー層向け住宅」だけを対象としていては、住宅事業の持続的な成長は難しい時代になっています。

さらに、テクノロジーの進化も消費者行動に影響を与えています。インターネットやSNSを活用して情報収集する消費者が増え、住宅展示場やモデルハウスを訪れる前にオンラインで十分な情報を得るケースが一般的になっています。こうした変化に対応するためには、集客手法の見直しが不可欠です。

このような市場の変化に適応し、持続的な成長を遂げるためには、従来の集客方法や受注戦略を見直し、新たなターゲット層に向けたマーケティング施策を展開することが重要です。

次章では、住宅市場の変化と、なぜ新たなターゲット層を見極めることが必要なのかを考察します。

住宅市場の変化と新たなターゲットの必要性

前述したとおり、住宅業界を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。かつては「住宅を建てれば売れる」時代が続いていましたが、現在はそうした常識が通用しなくなっています。人口減少、少子高齢化、ライフスタイルの多様化などの要因により、住宅のニーズが従来とは大きく変わっているのです。

また、テクノロジーの進化によってお客様の情報収集方法も変化しています。これまでのようなチラシや住宅展示場を中心とした集客戦略では、ターゲットに対して適切なアプローチができなくなってきています。さらに、SNSの普及やオンライン上での口コミの影響力が強まり、住宅購入を検討する際の意思決定プロセスも変わりつつあります。

こうした状況の中で、住宅会社や工務店が生き残るためには、住宅市場の変化を正しく理解し、新たなターゲット層を見極め、それに応じたマーケティング戦略を展開することが不可欠です。過去に成功した従来の集客策に固執したり、惰性で継続するのではなく、時代に即した戦略を柔軟に、かつ、スピード感を持って取り入れることが、今後の受注増加につながると考えます。

次に、住宅市場がどのように変化しているのかを具体的に見ていきます。

住宅市場の縮小と人口動態の変化

日本の人口は減少傾向にあり、特に住宅需要を牽引してきた「ファミリー層」の縮小が顕著になっています。かつて昭和50年には全世帯の53%が「子供あり」の家庭でしたが、令和2年にはその割合が18%まで低下しました。この変化は、住宅市場のターゲット構造そのものが変わりつつあることを意味します。

参考:国立社会保障・人口問題研究所

従来、住宅会社や工務店の主なお客様は、新婚夫婦や子育て世帯でした。しかし、こうした層が減少する中で、これまでのマーケティング手法では十分な受注を獲得することが難しくなっています。その一方で、別の市場が成長していることに注目すべきです。

新たなターゲット層の台頭

今、注目する新たなターゲット層は、大きく分けて以下の3つです。

1. シングルライフ層(未婚・非婚層)
・結婚せず、一人暮らしを続ける若年層が増加。このシングルライフ層は、従来の住宅市場ではあまり意識されてこなかったが、実は大きな市場規模を持つ。
・都市部を中心にコンパクトで高品質な住宅需要が高まっている。

2. ゴールデンエイジ層(60歳以上のシニア層)
・60歳以上の世帯が、日本の個人金融資産の65%を保有し、高い購買力を持つ。
・健康寿命を意識し、バリアフリーや高断熱・高気密住宅への関心が高い。
・「子供のための家」ではなく、「自分のための家」を求める傾向が強い。

3. サイレント層(45-55歳のミドル世代)
・子供の受験期などのライフイベントが落ち着くと、新たな住環境を求める。
・リフォームやセカンドハウス市場とも親和性が高い。

住宅会社が適応すべき戦略とは?

これらの新たなターゲット層を取り込むために、住宅会社が取り組むべき戦略は以下の3つに集約されます。

1. ターゲットごとのマーケティング戦略の最適化
・ファミリー層だけでなく、シングルライフ層(未婚・非婚層)やゴールデンエイジ層(60歳以上のシニア層)に向けた訴求ポイントを明確にする。

2. 商品の多様化とパーソナライズ化
・画一的な住宅提案ではなく、個々のお客様の暮らしに合わせた柔軟なプランニングが求められる。

3. 「暮らしの魅力」を伝えるマーケティング手法の導入
・住宅のスペックや価格だけではなく、「その家での暮らしがいかに心豊かになるか」をビジュアルで伝えることが重要。
・SNSや動画マーケティングを活用し、ターゲット層が共感できるストーリーを発信する。

ここからは、具体的にどのように集客し、受注につなげるのかについて考えてみます。

変化する市場環境に適応するための集客戦略

住宅業界はこれまでの常識が通用しない時代に突入しています。現在はファミリー層を中心にした住宅販売戦略が主流です。しかし、社会の変化に伴い、住宅購入の主なターゲット層も多様化しています。そのため、新しいターゲット層への対応が必要不可欠となっており、住宅会社・工務店は時代に合ったマーケティング戦略を取り入れ、持続的な成長を目指すことが求められています。

市場環境の変化に対応するためには、従来の広告手法や営業スタイルを見直し、新しいターゲット層の特性を理解した上で、より効果的なアプローチを構築する必要があります。住宅購入に対する考え方や価値観は世代ごとに異なり、画一的なプロモーションでは十分に訴求することができません。ターゲットごとのライフスタイルやニーズに沿った集客戦略を展開することで、住宅会社・工務店は新たな需要を取り込み、競争の激しい市場で優位に立つことが可能になります。

住宅購入層の変化と新たなターゲットへのアプローチ

近年、日本の住宅市場は従来のファミリー層を中心とした構造から大きく変化しています。人口減少やライフスタイルの多様化により、新たなターゲット層への対応が求められています。特に、シングルライフ層やゴールデンエイジ層(シニア層)、そしてサイレント層の需要を理解し、それに適した住宅プランやマーケティング戦略を立てることが不可欠です。

1. シングルライフ層の増加

近年、結婚しない・子供を持たないというライフスタイルを選択する人が増えており、単身世帯の割合が急増しています。この層は都市部を中心に増加しており、利便性の高い立地や、コンパクトで機能的な住まいを求める傾向にあります。特に、ワークライフバランスを重視し、リモートワークの場合の、自宅での快適な仕事環境も重要視されています。

シングルライフ層に共感いただき、行動していただくためには、SNSやデジタル広告を活用したマーケティングが重要になってきます。視覚的に魅力を伝えられる媒体でのプロモーションが効果的でしょう。

2. ゴールデンエイジ層(シニア層)の需要

高齢化が進む日本において、60代以上のシニア層の住宅ニーズも高まっています。ゴールデンエイジ層(シニア層)では、「子供が独立した後の住み替え」や「終の住処」の検討が多数を占めていますが、従来のシニア向け住宅と異なるのは、現在のゴールデンエイジ層(シニア層)は「アクティブシニア」として、趣味や交流の場を重視する傾向があるところです。こうした、趣味や交流が叶う住まいの実現ができるのかが、重要なポイントになります。

3. サイレント層(40代後半〜50代半ば)の動向

サイレント層とは、子供が思春期・受験期を迎え、家庭内での支出や生活スタイルが固定化している層を指します。この世代は住宅購入や住み替えに対する積極的な行動を控えがちですが、「子供の受験期をストレスなく快適に乗り切る住まい」など、子供の環境を整える視点での住まいづくり訴求で動き出す層でもあります。

このように、新たな住宅購入層に対するアプローチを的確に行うことで、変化する市場環境に適応した集客戦略を構築することが可能となります。

競争を勝ち抜くための戦略的アプローチ

住宅市場は日々変化しており、住宅会社・工務店が生き残るためには、従来のやり方に固執するのではなく、柔軟な戦略を打ち出す必要があります。値引き合戦という価格競争ではなく、価値提供の観点からの差別化を図り、お客様にとって選ばれる存在になることが求められています。そのためには、住宅設計、マーケティング、プロモーションの各方面から総合的なアプローチを行い、住宅会社・工務店の強みを最大限に生かすことが重要です。

現在のお客様は、単に住まいを確保するだけでなく、自分のライフスタイルや価値観に合った住宅を求める傾向が強まっています。また、インターネットやSNSから情報収集していますので、お客様は多様な選択肢の中から自分に最適な住宅を見極めようとしています。このような市場環境の中で、住宅会社・工務店が持続的に成長し、受注を増やすためには、競争力のある戦略を構築することが不可欠です。

差別化を図るためのお客様視点の営業対応

市場競争が激化する中で、他社と差別化を図るためには、お客様への営業対応の工夫が求められます。例えば、環境に配慮したエコ住宅や共働き世帯に適した家事動線の良い間取り、デザイン性の高い外観やメンテナンスの手間が少ない素材の活用も、お客様にとっての魅力となるのはもちろんですが、心豊かになる暮らしが実現できる住まいのご要望を共有する営業の対応が重要なポイントになります。

デジタルマーケティングの活用

インターネットやSNSの普及により、住宅業界もデジタルマーケティングを活用した集客が不可欠となっています。例えば、InstagramやYouTubeを活用した施工事例の紹介やバーチャルツアーを通じた見学は、単純に部屋をお見せするだけでは他社との差が見えません。お客様が実現したい暮らしが疑似体験できるような見せ方をすることがポイントです。
また、検索エンジン広告やリターゲティング広告を活用し、潜在するお客様にリーチする手法も積極的に取り入れることもおすすめします。

体感体験型の完成見学会の導入

実際の暮らしをイメージできるような体感体験型の完成見学会を開催することが、お客様の関心を引き付ける上で重要です。例えば、「親子で料理を作る」をテーマにした完成見学会では、親子で一緒にキッチンに立ち、実際に料理を作る体感体験を通じて、家族のコミュニケーションが深まるキッチンの魅力を伝えることができます。広々としたアイランドキッチンの場合だと、親子が並んで調理をすることで、料理の楽しさだけでなく、家族の絆を深めるきっかけとなります。さらに、子どもが安全に料理を楽しめるような配置や効率的な収納スペースの工夫などを直接体験してもらうことで、具体的な暮らしと住宅の魅力を実感していただくことが可能となります。

また、「家事が楽になる住宅」をコンセプトにした見学会では、キッチンやランドリールームの動線を実際に試せるようにし、生活の利便性を実感してもらうことが効果的です。例えば、洗濯機から干し場までの動線や玄関からパントリーまでの動線を短くした完成見学会会場の場合、洗い終わった洗濯物や買い物した食材等を入れたショッピングバッグを実際に運んでいただくことで、日々の家事負担がどれほど軽減されるかを実感していただくことが可能になり、住まいの価値をより明確に伝えられます。

さらに、在宅ワークが増えている現代では、「快適なワークスペースがある家」も魅力の一つと言えます。書斎スペースの使い勝手や静音性能を体験できるようにするのも良いでしょう。具体的には、実際にデスクに座り、オンライン会議をシミュレーションできる環境を提供することで、仕事のしやすさを体感体験していただくことができます。このように、ターゲット層のライフスタイルに合わせた具体的な体感体験型の完成見学会を実施することで、住宅購入への意欲を高めることができます。

まとめ

住宅市場の変化に適応し、持続的に受注を増やしていくためには、ターゲット層の明確化と、それに応じた集客戦略が不可欠です。心豊かになる暮らしが実現できる住まいのご要望を共有する営業の対応、デジタルマーケティングの活用、そして実際の心豊かな暮らしを体感体験できる完成見学会を組み合わせることで、競争の激しい住宅業界での成功が可能となります。

今後は、お客様の価値観やライフスタイルの多様化を見極め、より細やかなマーケティング戦略を展開することが求められます。例えば、住宅購入を検討するお客様が求める「住み心地」や「利便性」だけでなく「心豊かな暮らし」に寄り添った情報提供を行うことで、競争優位性を確立できます。

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